よく耳にする「マネジメント」。
その中でも昨今、米国の大手グローバル企業や日本のベンチャー企業を中心に注目を集めている「パフォーマンスマネジメント」。
なぜ今このマネジメントが注目されているのか、メリットや企業にとってどんな効果をもたらすのか見ていきましょう。
パフォーマンスマネジメントとは
社員の能力とモチベーションを引き出す目標の設定と、行動結果を受けた定期的なフィードバックを行うことで、個人の能力の発揮に繋げていくための人事戦略です。
会社側が社員の目標や行動に積極的に関わる手法としては、目標管理制度(MBO、Management by Objectives)を用いることが多々あります。
どちらも管理職と社員が面談し、「目標、結果、評価」を行うという点では同じですが、MBOは行動計画通りに行動できているか、また1年を通して目標を達成できたかを評価します。
パフォーマンスマネジメントも「目標、結果、評価」を行いますが、従業員のモチベーションを上げることと、結果に至るまでのプロセスに注目します。
そのため、面談は1年1回に限定せず、社員が一定の結果を出したらすぐに評価・フィードバックすることもあります。
従来のMBOが、?社員の強制的なランク付けによる「モチベーション低下」?や?「目標達成までのプロセス軽視」?と言った点を改善し、目標達成と学びの「プロセス」、個々の社員の能力開発やパフォーマンスを発揮しやすい環境の構築を重視した総合的マネジメント手法です。
導入するメリット
実は50年前から存在していたパフォーマンスマネジメントが、なぜ今、注目されているのでしょうか?
その背景には、少子高齢化に起因する人材不足が大きく影響しています。
既存人材の生産性の向上は大きな課題の一つと言えるでしょう。
この問題に対して、一人ひとりの従業員のパフォーマンスを最大限に引き出すことに主眼をおいたパフォーマンスマネジメントはまさに現代の企業に必要なマネジメント手法なのです。
実際にパフォーマンスマネジメントがもたらす効果として、下記のような点があげられます。
スピード感
社員が結果を出したらすぐに管理職による評価が行われ、従業員にフィードバックを行うので、世間・企業の変化に柔軟に対応できます。
モチベーションの向上
社員にとって行動や結果の記憶が鮮明なうちに管理職から評価されることで、成長意欲の高まりに繋がります。
上司との信頼関係の構築
パフォーマンスマネジメントでは、まず評価制度を公にしたうえで目標設定を行います。
さらに結果だけではなく、その結果に至ったプロセスを尊重することで、評価内容が透明化、不信感を払拭することができるので、信頼関係を築くことができます。
上記以外にも、メンバーひとり一人の多様性や豊かな発想を尊重するマネジメントとして、企業にとっても社員にとっても大きなメリットや、可能性を引き出す手法の一つと言えるでしょう。
導入する際のポイント
パフォーマンスマネジメントで重要となるのは、組織としての適切な目標設定の共有。
組織の目標を達成するための各個人の目標設定が重要となります。
そのためには管理職や人事部員の「傾聴スキル」や「質問スキル」「フィードバックスキル」と言ったコーチングスキルを身に付ける必要があります。
その中でも最も必要となるものが「傾聴スキル」です。
目標設定において、管理職は「やらせたいこと」を社員に押し付けるのではなく、社員のモチベーションや能力を高める方法を一緒に考えていくことが重要になります。
しっかり聞き役に徹しながらも相手の能力を引き出すためには、社員のこれまでの能力やパフォーマンスを把握しておくことも必要となります。
目標を設定し実行に移った際は、実際のパフォーマンスを評価し、どの点が良く、どこを改善すると次に繋げることができるのか、分かりやすく説明するコーチングのスキルも重要となります。
こうしたサイクルを1年や半年という期間を固定するのではなく、環境の変化に合わせて臨機応変に行っていきます。
必要に応じて随時実施していくパフォーマンスマネジメントでは管理職や人事のコーチングスキルと合わせて、状況やモチベーションを一人ひとり把握しておくために、より密なコミュニケーションが必要となります。
成果を上げる方法
パフォーマンスマネジメントの大きなポイントは従来の目標管理制度のようにメンバーのランク付け、ふるい分けに重点を置いたものではないということです。
キャリア構築に対する意識や使命感、潜在能力を引き出すことを目標として、トライ・アンド・エラーを繰り返しながら自ら学習する意欲を持てるよう、必要に応じたフィードバックとコーチングを積み重ねることが成果を上げるために重要となります。
上記でも述べたように、このマネジメントを導入するための大きなカギは管理職や人事部員のコーチングスキル、並びにコミュニケーションスキルです。
状況やモチベーションを一人ひとり把握しておくために、より密なコミュニケーションが必要となります。
円滑なコミュニケーションは「心理的安全性」に繋がり、社員が自由に思ったことを発言することができるようになります。
これによって一人ひとりが主体的に目標に向かって行動することができ、成果に繋がっていきます。
まとめ
パフォーマンスマネジメントを企業に導入するためには、組織としての考え方や評価制度の見直し、管理職のコーチングスキル取得などマネジメント運用のための基盤を固める必要があります。
しかしそれ以上に、マネジメントをしっかり行うことで一人ひとりのモチベーション・生産性を向上させるだけではなく、組織内でのコミュニケーションの円滑化にも繋がります。
ぜひパフォーマンスマネジメントの導入を前向きに検討してみてはどうでしょうか?