一度は『ワーキングプア』という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

 

現在日本では、フルタイムで働いていても一向に生活が楽にならない、という貧困層が増加しています。

 

この記事では、ワーキングプアの定義や、増加した原因、ワーキングプアの種類などをご紹介しています。

 

ワーキングプアとは?

ワーキングプアとは、『フルタイムで働いていても、最低限の生活を維持することが困難な状況にある人』のことです。

 

一般的に、ワーキングプアは生活保護水準以下の収入(年収200万円以下)の低所得者を指しますが、地域差のある生活費や世帯人数の違いなどは考慮されていないため、この定義では不十分と言えます。

 

例えば、年収200万円以下であっても、きちんとした収入のある家族と同居している場合、ワーキングプアにはあたりません。

 

山梨大学人文学部法経政策学科の戸室教授は、ワーキングプアを“最低生活費以下の収入しか得ていない世帯”と定義し、地域による生活費の違いなどを考慮したワーキングプア率などを都道府県別に算出しています。

 

都道府県別の最低生活費を見てみると、地域や世帯人数によってワーキングプアになる年収が異なることが分かります。

 

<都道府県・世帯人数別の1年間の最低生活費>

都道府県

1人世帯 4人世帯
神奈川県 1,455,507円 3,716,516円
東京都 1,436,799円 3,608,207円
大阪府 1,348,638円 3,623,143円
青森県 1,010,666円 2,958,985円
岩手県 970,734円 2,887,666円
佐賀県 962,632円

2,813,783円

参考:「都道府県別の貧困率、ワーキングプア率、子供の貧困率、捕捉率の検討

 

ワーキングプアが増加した原因

日本の経済は緩やかに回復し、GDPも成長傾向にあると言われているにも関わらず、なぜワーキングプアが増加しているのでしょう。

 

ワーキングプア率の推移から見ていくと、下記の要因が考えられます。

  1. 労働市場の規制緩和や自由化

     

  2. 就職氷河期

     

  3. 非正規雇用者の増加

全国のワーキングプア率は、1997年~2002年間、2007年~2012年間の時期に上昇しています。

 

<全国のワーキングプア率推移>

4.2%(1997年)⇒6.9%(2002年)⇒6.7%(2007年)⇒9.7%(2012年)

参考:「都道府県別の貧困率、ワーキングプア率、子供の貧困率、捕捉率の検討

 

1997年~2002年間は、バブル崩壊による日本経済悪化で、労働市場の規制緩和や自由化が進み、非正規雇用が増加した時期と重なります。

 

また、就職時期がこの期間にあたる“就職氷河期世代”の多くは、厳しい就職事情により、非正規社員が多いです。

 

日本は新卒入社で正社員登用という流れが一般的なため、就職時期を逃した層が、その後も非正規労働者として働いていることも、原因の一つと考えられます。

 

2007年~2012年間は、リーマンショックや東日本大震災の影響で失業した時期に一致するため、非正規雇用者が急増したことでワーキングプア率が上昇しました。

 

ワーキングプアの種類

女性(貧困女子)

男性よりも女性のワーキングプアが多いと言われています。

 

平成29年国税庁民間給与実態統計調査結果によると、日本人の平均給与は432万円ですが、男女別の内訳だと性別で年収に大きな開きがあります。

 

男性:532万円

女性:287万円

 

また、雇用形態を男女別に見てみると、

 

 

男性:正規の職員・従業員が2339万人、非正規の職員・従業員が669万人

女性:正規の職員・従業員が1137万人、非正規の職員・従業員が1451万人

参考:総務省統計局「労働力調査平成30年

 

非正規雇用者は女性が圧倒的に多くなっていることから、男女で年収に大きな差が出ているため、女性にワーキングプアが多いと考えられます。

 

高学歴ワーキングプア

高学歴ワーキングプアとは、修士課程や博士課程を修了しても就職できない、無職または非正規雇用労働者のことです。

 

大学院重点化政策によって増加した修士・博士ですが、修了後のアテがなかったため、ワーキングプアが増加したと言われています。

 

大学教員として正規雇用されるには、ポストが空いているかどうかが重要なので、非常勤講師などが増えていく結果になりました。

 

ワーキングプア対策

最低賃金見直し

最低賃金は地域によって異なりますが、地域ごとの最低生活費に合った額ではないこともあるので、最低生活費を加味した最低賃金にする必要があります。

 

業訓練の拡充

労働力人口が減少している現在、労働市場のニーズに合ったスキルのある人材は、貴重な存在です。

 

人材育成と就職あっせんや職場復帰支援なども併せて行う必要があると考えられます。

 

勤務形態の多様化

働き方改革でテレワークや裁量労働といった、労働者の様々なニーズに対応できる勤務形態を導入する制度がスタートしました。

 

子育て世代や要介護者のいる方も活躍できる、労働環境の整備が求められています。

 

正規雇用の拡大

正規雇用と非正規雇用の収入差が大きいため、正規雇用への転換を打ち出しました。

 

5年超の有期契約労働者は、希望を出せば無期契約へ転換できる制度が始まっており、大手気企業を中心に正規雇用者数も増えています。

 

まとめ

ワーキングプアは、個人だけの問題ではありません。

 

私たちの支払う国税は、収入によって変わるものが多いため、ワーキングプア世帯が増加すると国の収入が減り、社会保障制度が維持できなくなる可能性もあります。

 

働き方改革でも、労働者の多様な働き方を認めるような施策が打ち出されていることから、企業において労働環境の整備は急務と言えるのではないでしょうか。

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