ようやく優秀な人材を採用できたと思った矢先、「ミスマッチを理由に早期離職されてしまった」という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
近年、ミスマッチ採用の防止に繋がる「リファレンスチェック」が注目を集めており、実施する企業が増えています。
そこで、この記事では、リファレンスチェックの概要や目的、実施の流れなど、リファレンスチェックについて詳しく解説していきます。
また、リファレンスチェックの注意点やサービスについてもまとめていますので、是非ご覧ください。
リファレンスチェックとは?
リファレンスチェックとは、中途採用選考を行うにあたり、候補者の実績や在籍期間、人柄などを前職または現職の関係者に問い合わせることです。
リファレンス(reference)は照会や参照という意味を持ち、リファレンスチェックは「経歴照会」「推薦」とも呼ばれています。
外資系企業では当たり前に行われていましたが、日本企業でも役員など幹部候補の採用を中心にリファレンスチェックが広まりつつあります。
リファレンスチェックは、前職の関係者(上司・同僚・部下)に、企業または委託先の業者が電話やメールで直接ヒアリングするのが一般的です。
書面や面接でリファレンスチェックを行うこともありますが、いずれの場合も候補者の了承を得ずに実施することはできません。
また、リファレンスチェックを行うタイミングは企業によって異なりますが、内定出しの前後に最終チェックとして行われることが多いです。
リファレンスチェックの目的は?
では、なぜわざわざリファレンスチェックを行う必要があるのでしょう。
ここでは、リファレンスチェックの目的についてご紹介していきます。
ミスマッチ採用を防止するため
「中途採用では3年以内に3割以上が離職する」という調査結果からも明らかな通り、今や早期離職は企業にとって大きな課題になっています。
※参考:中小企業庁「2 人材の定着」
早期離職の主な要因である入社後のミスマッチを軽減するには、候補者の本質や能力の正確な把握が欠かせません。
しかし、書類や面接の情報だけで候補者の能力・人柄を見極めるのは困難です。
リファレンスチェックは、候補者の仕事ぶりを見てきた関係者から直接話を聞けるため、
- 仕事の質やスピード
- 職場の人間関係
- 勤務態度
- 人柄
といった、リアルな情報を得ることができます。
正確かつ客観的な情報をもとに採用の可否を判断するため、ミスマッチ採用を防ぐ目的で行われているのです。
通常の選考フローでは分からない部分を確認するため
通常の採用選考では、履歴書・職務経歴書などの書類や面接で得た情報をもとに、合否を判断します。
しかし、合格したいあまりに職歴や経歴、スキルを誇張して伝えてしまったり、ネガティブな情報を伝えなかったりする候補者も存在します。
悪気があってもなくても、正確な情報が得られなければ、入社後にお願いしようとしていた仕事が任せられず、業務に支障をきたすこともあるでしょう。
リファレンスチェックで前職や現職の関係者に真偽を確認すれば、情報の裏付けが取れます。
そのため、職歴・経歴詐称の事前確認や、健康面・素行面など通常の選考フローでは分からない部分を確認する目的で行われています。
求職者に対する客観的な意見を取り入れるため
候補者にとって面接は、企業に自分を売り込む場です。
候補者が自分自身について話すため、どうしても主観的な内容になりますし、良く見せようという心理も働きます。
そのため、面接時と入社後で、その人に抱く印象が変わることも珍しくありません。
リファレンスチェックは、前職や現職での上司・同僚・後輩といった候補者をよく知る人物の意見を取り入れ、採用の精度を向上させるために行われているのです。
リファレンスチェックと前職調査の違い
リファレンスチェックについてご紹介してきましたが、以前から金融業界などでよく行われている「前職調査」とは何が違うのか、疑問に思われた方も多いと思います。
リファレンスチェックと前職調査の大きな違いは、
- 目的
- ヒアリング先の選定方法
です。
それぞれどのような違いがあるのか、見ていきましょう。
目的の違い
リファレンスチェックの目的は、人間関係やコミュニケーション力、職務遂行力といった、仕事面や人柄に関する情報を採用の判断材料として活用することです。
一方、前職調査は、候補者の経歴や申告内容に虚偽がないかを確認するために行われます。
また、前職調査では経歴の確認以外にも、金銭トラブルや反社会的勢力との交友関係の有無など、素行面に関する調査が行われることも多いです。
しかし、個人情報保護法が成立したことで、従来よりも個人情報の入手が難しくなったため、前職調査を行う企業は減少しています。
ヒアリング先の選定方法
2つ目の違いは、ヒアリング先の選定方法です。
リファレンスチェックは、候補者がヒアリングすべき人物を指定するのに対し、前職調査の場合、企業側がヒアリングする人物を選びます。
リファレンスチェックの流れ
リファレンスチェックの方法は、
- 候補者がリファレンス先を紹介
- 企業がリファレンス先を探す
の2通りがあります。
ここでは、パターンごとのリファレンスチェックの流れをご紹介していきます。
候補者がリファレンス先を紹介するケース
ではまず、候補者がリファレンス先を紹介するケースから見ていきましょう。
STEP1.リファレンスチェックについて説明
リファレンスチェックを実施する場合、必ず候補者から承諾を得なくてはなりません。
そのため、企業は候補者に対して、
- リファレンスチェックの実施目的
- 前職または現職の関係者(依頼者)から候補者情報を取得する
- 候補者から依頼先にリファレンスチェックでの情報提供について説明し、許可を得る
の3点を伝え、承諾を得る必要があります。
なお、候補者が依頼者へ同意を得る際は、「リファレンスチェック実施企業の採用担当者に連絡先(電話番号・メールアドレスなど)を共有する」ことを説明してもらいましょう。
STEP2.依頼先に連絡し、実施日を決める
候補者と依頼者からリファレンスチェックについて同意を得たら、依頼者の連絡先を共有してもらいます。
依頼者へ連絡を取り、リファレンスチェックの実施日程を決めましょう。
STEP3.質問内容を決める
リファレンスチェック実施日までに、経歴や人柄などチェックしたい項目の質問内容をリスト化していきます。
また、リファレンスチェックを外部へ委託する場合、既に質問リストが用意されていることが多いです。
そのため、質問リストの他に「これだけは聞いておきたい」というものがあれば、業者へ追加質問をリクエストしましょう。
STEP4.リファレンスチェックの実施
リファレンスチェック実施当日になったら依頼者へ連絡をし、リスト化した質問内容を聞いていきます。
STEP5.まとめる
実施後は、
- 候補者と依頼者の情報
- 質問内容
- 回答結果
- 総評
をレポートにまとめましょう。
作成したレポートや委託業者から提出されたレポートは、配属予定部署の上司や最終決裁者など、当該候補者の面接関係者に共有し、合否判断を行います。
企業がリファレンス先を探すケース
つづいて、企業がリファレンス先を探す場合の流れをご紹介していきます。
STEP1.リファレンスチェックについて説明
リファレンスチェックを実施する際は、候補者からの承諾が必要となります。
企業は候補者へ、
- リファレンスチェックの実施目的
- 前職または現職の関係者(依頼者)から候補者情報を取得する
の2点を伝えた上で、承諾を得てください。
STEP2.依頼者を探し、実施日を決める
依頼者を探す場合、候補者の前職または現職の企業に「直接電話」「SNSなどWebを利用する」といった方法があります。
依頼者へリファレンスチェックの説明をして同意を得たら、実施日を決めます。
STEP3.(質問内容を決める)以降は、「候補者がリファレンス先を紹介するケース」と同様の流れです。
企業がリファレンス先を探す場合、依頼者を探す手間が掛かりますし、個人情報の開示に抵抗を感じる人も多いです。
リファレンスチェックを実施する際は、候補者から紹介してもらうとスムーズに進みます。
リファレンスチェックで聞くべき質問
リファレンスチェックではどのような質問をしたら良いのでしょうか。
ここでは、リファレンスチェックで聞くべき質問についてご紹介いたします。
勤務状況に関する質問例
- ○○さんの在籍期間は△年△月~△年△月までと伺っておりますが、間違いはないでしょうか?
- 遅刻や欠勤は多くなかったですか?
提出書類や面接時で得た情報に虚偽がないかを確認することができます。
コミュニケーションに関する質問例
- 事を進めるにあたって、個人とチームどちらが合っていましたか?
- コミュニケーションを取ることはできていましたか?
マネージメントの仕方やコミュニケーションスキルの程度について、把握することができます。
人間関係に関する質問例
- ○○さんは、上司や同僚、部下と良好な関係を築けていましたか?
- また一緒に働きたいと思いますか?また、その理由についても教えてください。
候補者がどのように周囲の人間と接するかが分かるため、自社との相性をチェックすることができます。
仕事内容に関する質問例
- 問題解決能力や決断力、決定力はありましたか?
- どのような仕事をしていましたか?また、どのような実績を残したか教えてください。
スキルレベルや職務遂行能力といった、候補者のパフォーマンスを把握することができます。
人物像に関する質問例
- ○○さんはどのような人物ですか?
- 長所や短所を教えてください。
面接では把握しきれない候補者の人柄について、客観的な意見を聞き出すことができるため、自社との相性を測ることができます。
また、リファレンスチェックを行う際は、当たり障りのない軽めの質問から始め、少しずつ深堀していくとスムーズです。
リファレンスチェックの注意点
リファレンスチェックを実施する際は、
- 個人情報の取り扱い
- 内定取り消しの判断
- 質問内容の統一
に注意しましょう。
個人情報の取り扱い
2015年に改正された個人情報保護法により、『要配慮個人情報』を第三者へ提供する場合、事前に本人の同意が必要です。
<要配慮個人情報>
-
人種
-
信条
-
社会的身分
-
病歴
-
犯罪歴
-
犯罪被害情報
「要配慮個人情報」に該当しない場合でも、個人情報保護法に抵触する可能性があるため、質問内容にかかわらず、必ず本人の同意を得てから実施しましょう。
また、外部業者へ委託する場合、委託業者に候補者情報を提供することを説明し、同意を得る必要があります。
内定取り消しの判断
内定者の提供した情報に虚偽があった場合、内定取り消しを検討することもあるでしょう。
しかし、内定通知の時点で「雇用契約が成立した」とみなされるため、内定を取り消すには「重大な経歴や学歴詐称があった」などの合理的な理由が必要です。
重大な詐称や合理的理由の明確な定義はないため、内定取り消しを検討される場合は、顧問弁護士などの専門家に相談してから対応するのが安心です。
質問内容の統一
リファレンスチェックを行う際は、候補者同士で比較することができるよう、必ず質問内容を統一させましょう。
質問内容が統一されていれば、採用者を決める際にどちらがより適しているのか、判断しやすくなります。
リファレンスチェックで活用するべき5つのサービス
リファレンスチェックは個人情報を取得するため、専門知識のない企業が独自で実施すると、個人情報保護法に抵触してしまうこともあります。
リファレンスチェックに特化したサービスを利用すれば、法違反のリスクを回避することができるため、安心です。
ここでは、リファレンスチェックに特化したサービスをご紹介していきます。
back check
back checkは、オンライン完結型のリファレンスチェックサービスです。
【特徴】
- 候補者への依頼からレポート作成まで、オンライン上で簡単に実施できる
- 短期間(平均3日)で90%以上の回答率
- 個人情報保護法に抵触しないよう設計されているため、安心して利用できる
MiKiWaMe
MiKiWaMeは、採用リスクの高い人物を事前に検知するWeb・SNSチェックサービスです。
【特徴】
- Web風評被害対策の専門チームが候補者のSNSをチェックするため、自社では調べられなかった領域までチェックできる
- 初期費用が掛からない
- ネット監視システムを用いた業界トップクラスの技術力を活用するため、効率性や発見率が高い
TASKEL
TASKELは、リファレンスチェックを第三者機関(セカンドオピニオン)に依頼できるサービスです。
【特徴】
- 候補者の評価や魅力、退職理由を関係者に確認し、推薦状として得るため、候補者の資質を知ることができる
- 1名から利用可能で、採用人数に応じて柔軟にプラン変更できる
- SNSを中心としたwebに関する風評のみを調査するプランあり
oxalis
国内初のオンラインリファレンスチェックサービスです。
【特徴】
- リファレンス提出依頼や依頼者へのリクエスト・お礼、フォローアップが全てオンライン上で完結する
- 日本語・英語・中国語であれば、世界中で利用可能
- 3万円から利用できる
リファレンスチェックサービス(ジーニアス株式会社)
ヘッドハンティングやアウトソーシングなど、人材サービスを行う企業がリファレンスチェックを実施しています。
【特徴】
- ヘッドハンティング・エグゼクティブサービスの一環として提供
- 採用のプロフェッショナルが企業に代わってインタビューし、レビューを書くため、プロの意見も取り入れられる
- 調査項目の打ち合わせを行うため、必要な項目を無駄なく聞ける
リファレンスチェックを効果的に取り入れてミスマッチ採用を防止!
提出書類や面接で得られる情報には限界があるため、候補者の職務遂行能力や人柄を見極めることが困難です。
リファレンスチェックは、候補者の前職または現職の関係者にヒアリングするため、より多くの情報を得ることができます。
仕事ぶりをよく知る第三者の客観的な意見を参考にできるため、ミスマッチ採用の防止に繋がります。
ただし、リファレンスチェックは個人情報を取り扱うため、実施方法を誤ると個人情報保護法に抵触する恐れがあるため注意が必要です。
リファレンスチェックサービスもあるため、「ミスマッチ採用が多い」「定着率が低い」といったお悩みを持つ企業は、是非試してみてはいかがでしょうか。