労働人口の減少している近年、人材の流出防止は企業にとって重要な課題です。
「せっかく採用したのにすぐに辞めてしまう」「どうしたら長く続けてもらえるのだろう」「定着させるためにはどうすれば良いの?」など、従業員の定着についてお悩みではありませんか。
今回は、定着率向上のために企業ができる施策について詳しくご紹介していきます。
平均的な離職率や離職原因についても解説していますので、ぜひご覧ください。
世間一般の離職率はどのくらい?
離職率とは、一定期間経過後に退職した人の割合です。
数値が高いほど離職者が多いことを表しますが、算出期間は規定されていないため、「どのくらいの期間を集計するか」によって大幅に変わります。
例)4月1日入社の社員10名のうち、1年後に3名退職した場合と3年後に6名離職した場合
1年後の離職率…30%
3年後の離職率…60%
このように、算出期間が分からないと正確な離職率が分かりません。
離職率を見る際は、必ず算出期間も確認しましょう。
では、一般的な離職率はどのくらいなのでしょうか。
引用:厚生労働省「新規学卒者の離職状況」
厚生労働省の調査によると、新規大卒者が3年以内に離職する割合は、平成7年以降30%程度で推移し続けています。
また、中途採用においても、3年以内の離職率は30%程度であることが中小企業庁によって明らかとなっています。
引用:中小企業庁「2 人材の定着」
したがって、新卒・中途に限らず3年以内の離職率の平均は30%であり、「就業者のおよそ3人に1人が3年以内に早期離職している」のが実情です。
一方、離職率の対となる定着率は、残っている従業員の割合を表したもので、「定着率=100%-離職率」で算出できます。
定着率は離職率と表裏一体であるため、離職率を下げることが定着率の向上につながるのです。
では、定着率向上によってどのような効果が得られるのか、みていきましょう。
定着率向上によって得られる効果
定着率向上によって得られる主な効果は、
・優秀な人材の流出防止
・採用コスト・教育コスト削減
・生産性向上
・モチベーション低下を防止できる
・顧客満足度向上
です。
優秀な人材の流出防止
定着率向上は、優秀な人材の流出を防ぐことができます。
一般的に、労働環境や待遇、人間関係など、会社に対して何らかの不満を感じている従業員が離職するため、定着率の低さは従業員満足度の低さでもあります。
そのため、離職原因を解消して定着率を向上させることができれば、優秀な人材の流出も防止することができるのです。
また、定着率が向上すれば「働きやすい企業」というイメージを与えられ、優秀な人材が集まりやすくなるかもしれません。
採用コスト・教育コスト削減
マイナビの行った「新卒採用の予算について」の調査によると、新卒一人あたりの採用コストは、平均53.4万円です。
これは、広告掲載費などの外部コストのみのため、採用担当者の人件費といった内部コストを入れると、さらにコストは高くなります。
早期離職されると、これらの費用が無駄になるばかりか、再度採用活動を行う必要も出てくるため、余計にコストがかかるのです。
また、一人前の社員として活躍できるようになるには、教育や研修が欠かせません。
研修を外部委託しない場合でも、教育する社員の人件費がかかるため、早期離職は採用コストだけでなく、教育コストの増加につながります。
したがって、定着率を向上させれば、採用コストや教育コストを大幅に削減できるのです。
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採用にかかる費用・コストはどのくらい?採用単価の平均から削減方法まで解説
生産性向上
定着率の向上は生産性の向上につながります。
人の入れ替わりが激しいと、通常業務に加えて新人教育も行わなくてはならないため、生産性が低下してしまいます。
定着率を向上させれば、教育に割く時間を削減できるだけでなく、社員一人ひとりの業務理解が深まり、効率も良くなるため、必然的に生産性が向上するのです。
モチベーション低下を防止できる
人の入れ替わりが激しい職場では、仕事の引き継ぎや新人教育など、既存社員に大きな負担が掛かり、不満を感じやすくなります。
そのため、「どうせすぐに辞めるのだろう…」と考え、コミュニケーションや教育への積極性が失われ、モチベーション低下を招くのです。
せっかく入社した社員もギャップを感じ、すぐに辞めてしまうため、悪循環に陥りやすくなります。
定着率を向上できれば、円滑に仕事ができる環境になるため、従業員のモチベーション低下を防止できるのです。
顧客満足度向上
定着率が向上すると業務への理解が深まるため、社員一人ひとりの質が向上します。
商品やサービスの豊富な知識によって円滑な対応を行えるようになるため、顧客は安心して利用することができるのです。
また、コンサルティングのように長期間一つのクライアントと関わるケースでは、担当者が変わると引き継ぎ時の不手際によって迷惑を掛ける可能性があります。
さらに、相手企業からすると「きちんと引き継ぎしてくれたのかな」「この会社頻繁に担当者が変わるけど大丈夫かな」と不安・不信を感じさせてしまうため、定着率向上は顧客満足度の向上につながるのです。
定着率が下がってしまう原因は?
定着率と離職率は表裏一体です。
まずは、退職理由を把握しましょう。
参考:厚生労働省「平成 30 年雇用動向調査結果の概況」
上記のグラフは、厚生労働省が発表した前職を退職した理由です。
これによると、「定年・契約期間の満了(男16.9%・女14.8%)」が男女ともに最も多い退職理由となっています。
上記以外では、
「労働時間、休日等の労働条件が悪かった(男10.0%・女13.4%)」
「給料等収入が少なかった(男10.2%・女8.8%)」
「職場の人間関係が好ましくなかった(男7.7%・女11.8%)」
が退職理由の上位を占めました。
このことから、定着率が下がってしまう主な原因は、「労働条件」「給料」「人間関係」と言えるでしょう。
ただし、企業によって従業員が不満を感じるポイントは異なります。
自社の課題を正確に把握するために、退職理由の分析をしっかり行いましょう。
定着率を向上させる施策例
「労働条件」「給料」「人間関係」を理由に退職する人が多いことが分かりました。
ここでは、定着率向上のための施策をご紹介していきます。
施策例1.労働時間の管理・有給休暇の取得推進
長時間労働や休日出勤が常態化している場合、ただちに労働時間の適正な管理と有給休暇の取得推進を行いましょう。
長時間労働を防ぐため、企業は従業員の労働時間を適正に把握することを義務付けられています。
また、2019年4月に施行された働き方改革法案では、年5日の有給休暇取得が義務化されました。
「勤怠管理システム」は、従業員ごとの勤怠状況や、有給休暇の取得状況をリアルタイムに把握できます。
長時間労働にも一早く気づくことができるため、過重労働を防げます。
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施策例2.柔軟な働き方ができる環境を整える
労働条件に不満を感じて退職している従業員が多い場合、
・時短勤務
・フレックスタイム制
・テレワーク
といった、柔軟な働き方ができる環境を整えましょう。
多様な家庭環境にも対応できるため、小さな子どもや介護が必要な家族を持つ従業員も働きやすくなります。
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施策例3.評価制度を見直す
給料に不満を感じている社員が多い場合は、評価制度を見直しましょう。
昇格や昇給の待遇を用意することは、従業員のモチベーションアップにつながりますが、その条件が不明瞭だと、どのように努力をしたら良いのか分かりません。
昇格・昇給の条件が明確化されているか見直し、企業の方針と合わせて共有しましょう。
この他にも、
・「360度評価」を取り入れ、評価の公平性を保つ
・従業員同士が感謝を伝え合う「ピアボーナス」を導入して、成果を可視化する
のような評価制度の導入もおすすめです。
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施策例4.社内コミュニケーションの活性化
社内コミュニケーションに課題を感じている場合、「上司が積極的に部下と交流し、意見を吸い上げる」、「部署間の壁をなくす」といった風通しの良い風土を作りましょう。
例えば、
・定期的に1on1ミーティングを実施する
・メンター制度を導入して若手社員をサポートする
・従業員の席を固定しないフリーアドレス制度導入する
・Slackなどのビジネスチャットで情報共有を活性化させる
を行うことで、上司や同僚、部署の壁を超えたコミュニケーションの活性化が期待できます。
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施策例5.福利厚生を充実させる
従業員エンゲージメント(愛着・結びつき)に課題がある場合、福利厚生を見直しましょう。
会社には多様な背景を持った人が働いているため、画一的な福利厚生では、不公平感が生まれることも少なくありません。
カフェテリアプラン型の福利厚生制度を導入することで、様々なメニューの中から個々が必要なものを選べます。
従業員へのサポートである福利厚生を充実させることで、思いやりが伝わるため、エンゲージメントの強化につながります。
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課題に応じた施策で定着率を向上させよう
退職理由が分かれば、「柔軟な働き方を取り入れて労働環境を整える」「評価制度を見直す」のように、様々な改善策を講じることができます。
そのため、定着率を向上させるには、自社の従業員がどういったところに不満を感じているのか、正確に把握することが重要です。
自社の課題を把握した上で、ご紹介した施策を講じてみてくださいね。