雇用形態にはどんな種類があるのでしょうか。
今あなたが採用するべき雇用形態について解説します。
雇用形態にはさまざまな種類があり、正社員、アルバイト・パート、派遣社員、契約社員など、すぐに思いつくものだけでも多岐にわたります。
現代では、ライフスタイルの多様化、働き方改革の促進により、さまざまな雇用形態で採用が行われるようになりました。
今回は、多様化する雇用形態について掘り下げていきます。
ぜひ採用活動を行う際の参考にしてみてください。
雇用形態とは?3つの契約形態
雇用形態について詳しくお話しする前に、労働契約には「3つの契約形態」が存在するので、そちらから説明していきます。
直接契約
まずは直接契約です。
直接契約とは、正社員、契約社員、アルバイト・パートなど、企業と従業員が直接雇用契約を結ぶ形態を指します。
直接雇用は「正規雇用」と「非正規雇用」に分けられ、正社員は正規雇用、契約社員とアルバイト・パートは非正規雇用となります。
労働者派遣
労働者派遣とは、派遣会社と雇用契約を交わした後、派遣先の企業に勤務するという働き方です。
労働者派遣は、「派遣労働者」「派遣元(派遣会社)」「派遣先(勤務する企業)」の3者関係となり、労働条件の明示や就業規則など、労働基準法等の適用は雇用している派遣元の管轄となります。
ただし、実際に勤務するのは派遣先企業なので、業務遂行上の指示や労働時間の指示は、派遣先企業が直接労働者に行うことができます。
委任・請負
委任・請負とは、いわゆる「業務委託」という契約形態です。雇用契約は結びますが、直接雇用とは違い、企業は労働法などの適用を受けません。
労働者は業務を遂行するにあたって企業に管理されることはなく、自身の裁量で進めていくことになります。
委任契約は、業務そのものが対価となる形態で、請負契約は仕事の成果物に対して報酬が支払われるというものです。
具体例を挙げると、委任は「医師による医療行為の契約(行為の実施)」、請負は「建築業者が家を建てる契約(成果物の提出)」という違いがあります。
雇用形態の種類
それでは、雇用形態の種類について具体的に説明していきます。
先述した通り、雇用形態にはさまざまな種類がありますので、しっかり区別しておきましょう。
正社員
正社員は、正規雇用として週5日間フルタイムで働く人のことを指します。
雇用期間の定めがなく、基本的に長期雇用として採用するのが一般的です。
原則として36協定(※)の範囲で残業も義務付けられています。
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※36協定・・労働基準法第36条により、会社は法的労働時間を超える時間外労働及び
休日勤務などを命じる場合、労働組合などと書面による協定を結び、労働基準監督
署へ届け出ることが義務付けられています。これを一般的に36協定と呼びます。
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実は、正社員という言葉は法律用語ではありません。あくまで、アルバイト・パートや契約社員と区分するために便宜上使用されている表現です。
統計上は、職場での身分や処遇、呼称が正社員として扱われているかどうかで判断されています。
アルバイト・パート
アルバイト・パートは、パートタイム労働法という法律に即して言うと「パートタイム労働者」という呼称になります。
パートタイム労働者の定義は「同じ事業所に雇用されている正社員と比較し、1週間の所定労働時間が短い労働者」です。
職務内容や責任の程度も、正社員とは差別化されていなくてはなりません。
与えられている権限の範囲や業務成果について求められている役割などは、当然正社員よりも小さくなります。
派遣社員
派遣社員とは、上述のとおり派遣会社と雇用契約を交わして派遣先企業に勤務する人を指します。
派遣社員の種類は全部で3つ。
「一般派遣」「紹介予定派遣」「特定派遣」です。
一般派遣とは、派遣元と労働者が雇用関係を結び、実際の業務指示は派遣先が行うという雇用形態です。
派遣期間が満了し、継続にならなければそこで終了となります。
紹介予定派遣とは、派遣先企業の正社員となる前提で派遣元から労働者を派遣してもらう雇用形態です。
派遣期間が満了した時点で、正社員へ切り替えを進める形になります。
特定派遣とは、一般派遣や紹介予定派遣と違い労働者が常に派遣元で常勤し、派遣されていない時でも給与がもらえるという雇用形態です。
雇用契約上は派遣元企業の正社員であり、昇給やボーナス、厚生年金など基本的な福利厚生があります。
契約社員
正社員が雇用契約期間の定めがないのに対し、契約社員には雇用期間が定められています。
労働法上は「有期労働契約」となり、半年や1年間など契約期間ごとに更新しなければいけません。
実務面では、正社員の補佐的な立場の社員というのが一般的ですが、企業によっては契約社員であっても正社員と同様の仕事をするケースがあります。
業務委託
業務委託は、先にも述べた通り委任契約もしくは請負契約によって企業に雇用される形態を指します。
委任は業務を遂行すること(業務そのものが対価となる形態)で報酬を受ける働き方ですが、請負は業務に対する成果物を提出することで報酬を受ける雇用形態です。
業務委託は、自社で対応できない業務を企業や個人に依頼する方法ですが、上述した通り企業は労働法の適用を受けないため、仕事の進め方は労働者の裁量となります。
双方が納得できる形で業務が遂行されるよう、予め労働契約書を交わしておきましょう。
在宅ワーカー
在宅ワーカーとは、文字通り在宅で就業する人を雇用する形態です。
契約形態としては「委任・請負」に分類され、労働者は個人事業主として扱われます。
現状、在宅ワーカーとして働いているのは、主婦や特定の技術職(例:webデザイナーなど)の方に多い傾向があります。
短時間正社員
短時間正社員とは、フルタイム雇用の正社員に比べ、1週間の所定労働時間が短い雇用形態を指します。
アルバイト・パートとは違い、正規雇用であることが特徴です。
短時間正社員は、多様化している働き方の中で新しく生まれた雇用形態で、能力は高いが何らかの事情(育児や介護等)によりフルタイムで働くことができないという場合に選択されます。
条件が折り合えば、企業と労働者双方のメリットとなるケースも多く、今注目の雇用形態です。
嘱託社員
嘱託社員とは、一般的には契約社員のような非正規雇用を指す雇用形態ですが、企業によってその扱いは異なり、正社員に近い準社員のことを指す場合もあれば、定年退職後に再雇用された人のことを指す場合もあります。
基本的に嘱託社員は有期雇用の契約です。
業務上、「期間を限定した採用をしたい」「短時間勤務の人を採用したい」という場合に選択される雇用形態です。
ただし、一般的には定年後の再雇用を指すケースが多く、それ以外は契約社員として表現されるのが通例です。
各雇用形態のメリット・デメリット
それぞれの雇用形態がどのようなものかわかったところで、それぞれの雇用形態で採用するメリット・デメリットを挙げてみました。
正社員
正社員は、その他の雇用形態と比較し、福利厚生や社会保険等の条件がよいため、多くの応募者が見込めるというのが特徴です。
正社員雇用を促進することで、企業としてのイメージアップにもつながります。
正社員採用をするメリットは、会社への定着率が高くなる、人材育成が行いやすくなるという点です。
長期雇用が前提であるため、中長期的な人材育成のプランが立てられますし、自ずと会社の核となる人材が残りやすくなります。
反面、社内研修など人材育成にかかるコストが高くなることは避けられません。
また、労働者は労働基準法の下に守られる存在であるため一度採用すると相当な理由がない限りは解雇が難しくなります。
パート・アルバイト
パートタイム労働者は、補佐的な仕事をするケースが多く、人材育成のための費用があまりかかりません。
「コアタイムのみサポートしてくれる人が欲しい」という場合には、時間単価が安く、必要に応じた採用がしやすいパートタイム労働者が適しているでしょう。
一方で、定着率は正社員に比べて低くなること、そして能力が高いからといって正社員と同程度の仕事を求めることはできないということは念頭に置いておかなくてはいけません。
万が一、正社員と同じ仕事を求めるのであれば、同条件の待遇を提示しなくてはならないことを覚えておきましょう。
派遣社員
派遣社員を採用するメリットには、「短期的な業務への対応が可能」「採用コストの削減」などが挙げられるでしょう。
有期雇用である一般派遣社員は、決算や年末調整時など業務の波に合わせて採用することができます。
例えば、会社の業績が思わしくなく、人材が不要となった場合には契約を延長しなければいいのです。
雇用契約が派遣元と結ばれているというのもポイントです。
正社員を雇用した場合の社会保険料や交通費、賞与や福利厚生費などがかからないため、採用コストの削減ができます。
一方で、人材の選定ができないことはデメリットになります。
派遣元に「このような人材が欲しい」という要望はできますが、企業に選定権はないため、能力面を始め期待通りの人材を採用できるかどうかは完全に派遣元へ委ねる形となってしまいます。
紹介予定派遣は、将来的な雇用を見据えた派遣方法であるため、事前に面接ができたり履歴書を確認できたりします。
これにより、事前に労働者の確認ができ、採用時のミスマッチが防げるというメリットがあります。
一方で紹介予定派遣は一般派遣と違い、「派遣期間中の派遣料金+正社員化時の人材紹介手数料」とコストが多くかかってしまうデメリットがあります。
これに関しては、派遣会社を通さずに正社員を採用することと比較して、どちらが採用にコストがかかるのかをよく考えましょう。
最後に特定派遣(常用型派遣)ですが、紹介予定派遣と同じく採用時のミスマッチが防げることと、さらに3年を超えた長期スパンで企業に貢献してくれるのがメリットです。
長く働くことにより、ほぼ自社の社員と変わらないくらいの帰属意識を持って業務に取り組んでくれることが多いです。
ただし、特定派遣で雇った人材もいつかはやめてしまうというのがデメリットです。長く働き、育成を重ねても会社としての財産にはなりにくい面があります。
契約社員
契約社員も期間を決めて採用する有期契約雇用形態です。
例えば、3年間のプロジェクト完成に向けて人材を増やしたいなど、会社の都合や業績に合わせて社員数を調整できることがメリットになります。
また、賞与の支払いや福利厚生等を制限できるため、正社員で雇用するよりも安い人件費で雇えるということになります。
一方で、有期契約ならではのデメリットも当然あります。
優秀な人材で継続勤務をお願いしたくとも、社員側が契約を終了したいという意向を示せば、会社はそれに従わなくてはなりません。
業務委託
労働人口が減少している中、市場ではグローバル化が進み、ビジネスは拡大傾向にあります。
それに伴って社内の業務量も増加傾向にあるのではないでしょうか。
業務委託のメリットは、限られた社内の人材(正社員)をコア業務に専念させ、それ以外の作業的な内容の業務を委託することで企業の生産性を高められるという点です。
そして、労働法や労働基準法の適用を受けないため、報酬賃金をお互いの合意で決められる、時間管理の義務もないなど、労働者が何時間働いたとしても労働基準法違反になることもなく、残業代を支払う必要もありません。
デメリットとしては、社内で一緒に働いているわけではないため、業務の質を管理できないことです。
「納品物が期待していたものとずれていた」などが懸念点ですね。
また、業務委託も有期契約の雇用(委任期間の終了、納品時など)となるので、社内にノウハウや経験が蓄積していかない点もデメリットといえるでしょう。
在宅ワーカー(在宅勤務制度)
在宅ワーカーは業務委託の一種とはなりますが、働き方改革に伴って増加傾向にあるため、取り上げました。
在宅ワーカーを雇用するメリットは業務委託とほぼ同じです。
正社員をコア業務に専任できるため、業務効率や生産性が高まる、また常駐社員に比べると比較的安価で仕事を依頼することができます。
加えて、良質な人材を確保しやすいという点もあります。
特に女性に多いかもしれませんが、育児や介護など家庭の問題で退職を余儀なくされるとうのはよく耳にします。
在宅勤務制度があることで、優秀な人材が辞めなくて済むということも多いのです。
例えば、契約社員の採用を考えている場合、在宅ワーカーとしての勤務を希望している現従業員に仕事を任せたほうが、会社としてメリットがあるかもしれません。
一般的な在宅ワーカーのデメリットに関しては、業務の質が管理できない、労働者の都合で継続して仕事を依頼できない可能性があるなど、ほぼ業務委託と一緒になります。
短時間正社員
短時間正社員を雇うメリットとは、時間制限はあるが優秀な人材を確保できるという点です。
短時間正社員制度がある場合には、育児や家庭の事情などの理由で離職を考えている従業員を引き留めることができます。
労働時間が限られていることで、従業員の仕事に対するモチベーションも高い傾向にあり、生産性が向上します。
また、従業員からすれば、プライベートと仕事を両立できる会社に魅力を感じるため、会社への定着率も高くなる傾向にあります。
一方、デメリットは通常の正社員と同じだけの責任を果たすことができないかもしれないという点です。
正社員は残業や休日出勤といった時間外労働をすることで、職務を遂行しているケースも多く、たくさんの労働時間を確保できない短時間正社員が、同じ役割を果たせるかどうかはわかりません。
契約時には、このあたりの取り決めをしっかりと行う必要があります。
嘱託社員
嘱託社員は、一般的に定年後の再雇用として扱われるケースが多いことはすでに書きました。
嘱託社員を採用するメリットは、これまでの経験やノウハウを引き続き活かすことができることです。しかも、賃金などの労働条件は見直すことになるため、人件費も抑えることができます。
新たに新人を採用する時間や費用がかからないというのも大きな魅力ですね。
デメリットとしては、その他の雇用形態と同じく、有期契約雇用となるため社員側の意向でいつ辞めてしまうかわからないということです。
また、以前は管理職など責任のある立場で働いていたが、嘱託社員としての契約はそうではなかった場合に、本人の仕事に対するモチベーションが下がってしまうことなどが懸念されます。
【おまけ】雇用形態の変更を行う場合
企業側もしくは本人の意向により、従業員の雇用形態を変更することもあると思います。その場合は、きちんとした手続きを踏まなくてはなりません。
下記に雇用形態の変更時に必要になるポイントをまとめました。
1.雇用契約書の変更
雇用形態を変更するということは労働条件が変わることになりますので、雇用契約書の変更が必要になります。
新たな労働契約を結び、雇用契約書を従業員に書面にて交付しましょう
一点、就業規則に注意です。
もし、就業規則に労働条件が変更されない旨が記載されていた場合には、雇用契約書を変更しても就業規則の方が適用されます。
予め就業規則を確認し、労働条件が変更されない旨が記載されているのであれば、就業規則の方を先に変更してから、雇用契約書を提示しなくてはなりません。
※就業規則は企業側が勝手に変更できるものではありません。必ず労働者の同意が必要となります
2.不利益変更について(正社員からアルバイト・パートに変更するなど)
正社員からアルバイト・パートへ変更になるなど、現状の待遇よりもダウン提示となる契約に関しては注意しましょう。
ポイントは、「従業員からの申し出」であるかどうかです。
申し出があった場合は、不利益変更とはみなされませんが、業績の悪化など企業側の意向で雇用形態を変更してほしい、というケースは不利益変更となります。
不利益変更になる場合は、下記3点が主な注意点となります。
・不利益変更の程度
・代償措置の検討
・変更後の雇用契約の内容の正当性
まずは、「不利益の程度」について考え、それが大きい場合には代償措置を検討しなくてはなりません。
従業員からの申し出でないケースでは、正社員として厚遇を受けていた従業員がアルバイト・パートになることで労働時間の減少を伴い、所得が大きく減ってしまうなど不利益の程度が大きいと予測されます。
その場合の代償措置は、例えば「転職してもらうことを前提として期間を設け、転職活動を支援する」、「副業を認める」などが考えられます。
いずれにしても、従業員とコミュニケーションを取り、合意を得た上で進める必要があるでしょう。
そして、変更後の雇用契約の内容の正当性とは、「正社員からアルバイト・パートに変更となった正当な理由があるか」ということです。
これは、従業員の勤務態度やスキル、または家庭環境など確かな基準に即して決定されなければいけません。
例えば、経営者が自分の好き嫌いだけで、ある従業員を正社員からアルバイト・パートに変更するという独断は当然できないわけです。
あなたの会社に適した雇用形態で採用しましょう!
ライフスタイルの多様化、働き方改革の促進により、現在ではさまざまな雇用形態が存在しています。
まずは、あなたの会社でどんな人材を求めており、その人にはどんな働きをしてほしいのかを明確にすることが大切です。
会社・従業員双方が納得し、ベストな雇用形態を選択することが、業績アップにつながるといっても過言ではありません。
雇用形態についてしっかりと理解を深めた上で、採用活動を行っていきましょう。