クライシスマネジメント(危機管理)とは?

クライシスマネジメント(危機管理)とは、組織の事業継続や存続を脅かすような非常事態と直面した時の対応手段と仕組みです。

 

日本語に訳すと、クライシス(crisis)は「危機」、マネジメント(management)は「管理」となるため、日本ではそのまま危機管理と呼ばれることもあります。

 

この場合の危機とは、地震や台風などの大規模な自然災害や、サイバーテロによる自社への影響といった、予期せぬ出来事を指します。

 

非常事態が訪れた時にはどのような施策が必要か、二次被害の回避策はどうすればよいか、を具体的に計画することがクライシスマネジメントです。

 

なぜクライシスマネジメントが注目されたか

クライシスマネジメントが注目されたきっかけは、アメリカで起きた「同時多発テロ事件」です。

 

世界貿易センターへ飛行機が激突する映像は、アメリカのみならず世界中に衝撃と絶望を与えました。

 

このテロ事件をきっかけに、アメリカの経済・金融・産業面には「911ショック(同時株安)」が起こり、多くの国に対して経済的な悪影響を及ぼしたほか、アメリカを中心とした航空会社は、赤字転落や経営破綻を余儀なくされました。

 

日本では、2011年3月11日に発生した「東日本大震災」でクライシスマネジメントが注目されました。

 

福島第一原発事故によって多くの企業が風評被害を受け、経営破綻するなど、深刻な被害が起きましたよね。

 

事前に用意していた事故防止策はほとんど機能せず、※メルトダウン(炉心溶融)という最悪の事態へ発展してしまった出来事は未だ記憶に新しいです。

 

この時をきっかけに、事故の防止策を講じるというよりは、事故が起こってしまったときに組織としてどう行動するのか、という点が着目されるようになりました。

 

クライシスマネジメントとリスクマネジメントの違い

リスクマネジメントとは、そもそも「危機をどう予防するか」という施策です。よって、危機の発生に関わらず、平常時でも常に機能しているものです。

 

一方のクライシスマネジメントは、危機に遭遇した場合、どのように組織運営をするかということを主眼に置いており、危機が発生すると同時に機能し始めます。

 

「予防」か「危機発生後の対策」か、という部分で両者に違いがあるということです。

 

リスクマネジメント・・危機が発生しないように管理する(平常時に機能)

クライシスマネジメント・・危機が発生した場合にどう管理するか(危機発生と同時に機能)

 

企業が定めるBCP(事業継続計画)は、多くの場合リスクマネジメントの考え方に基づいて策定されています。

 

「大規模な地震によりオフィスに1週間入れなくなった」、「稼働人数が全体の50%という状態が1週間続いた」などの被害シナリオに沿って対策が立てられます。

 

一方で、クライシスマネジメントの考え方に基づいて策定されるCMP(クライシスマネジメントプラン)というものがあります。

 

緊急事態の発生直後から自体が収束するまでの対応の在り方を定めるものです。

 

CMPは、地震など特定の事象に特化するわけではなく、ありとあらゆる危機を想定し、広い時間軸を見据えた行動計画となるように定めます。

 

BMPは、事前に想定していたものに近い事態となった場合は有効に機能するかもしれませんが、そうでない場合に活用が難しくなるため、危機に備えるには、CMPを策定するほうが有効であるといえるでしょう。

 

実際にクライシスマネジメントが必要になった事例

具体例として、実際にクライシスマネジメントが必要になった事例を2つ紹介します。

 

チロルチョコ事件(2013年6月11日)

チロルチョコとは、チロルチョコレート株式会社が販売する、一口サイズのチョコレートです。

 

1962年に販売開始となってから50年以上経った現在でも、根強いファンをたくさん抱えるチョコレートブランドです。

 

そんな人気のチロルチョコですが、2013年6月11日にブランドイメージを失墜させかねない事件が起こりました。

 

騒動の発端は、一般女性がTwitterにて「チロルチョコの中に虫が混入していた」というツイートを写真付きで投稿したことです。

 

そこには、生後30~40日ほどの芋虫がチロルチョコの内部から姿を見せている様子が写っていました。

 

このツイートはあっという間に12,000回以上リツイートされ、ネガティブなコメントと共に拡散されてしまいました。

 

その時にチロルチョコレート株式会社が取った行動がまさにクライシスマネジメントの模範例です。

 

以下は、チロルチョコレート株式会社のソーシャル運用責任者のwebメディア向けインタビューを参考に再現した時系列です。

 

【12:57】

一般女性がツイート

【13:30】

1.ソーシャル運営者のもとに苦情が数件寄せられたことが伝えられる

2.ソーシャル運営者と営業統括常務で画像をチェック

3.商品の特徴から最終出荷日が2012年12月25日であることを確認

4.写真から芋虫が生後30~40日ほどと推測(専門家の見立てとも一致)

5.最終出荷日と芋虫の生まれたタイミングから工場で混入したものではないと確信

【14:30】

1.公式Twitterで発信するための文章作成を開始

2.営業統括常務の承認を得る

【15:57】

公式Twitterで見解を発信

 

一般女性がツイートしてから、わずか3時間という早さの公式回答でした。

 

このチロルチョコ事件において、クライシスマネジメントが発揮されている点は以下の通りです。

 

専属の担当者がリアルタイムでモニタリングしていた

「専属の担当者が」という部分がポイントです。

 

このように予期せぬ事態が起こった際、誰が対応するのかということは、明確に決めておく必要があります。

 

仮に担当者を決めていなかった場合、連携が取れずに複数の社員が同時に動くということも考えらえますが、微妙に見解が違うなどした場合、かえって信頼を損なってしまうリスクがあります。

 

状況が深刻であるほど、専属の担当者が代表して対応することが望ましいでしょう。

 

速やかな対応により公式見解の信ぴょう性が増した

一般女性がツイートしてから、わずか3時間で公式見解を発表したことにより、情報の信ぴょう性が増しました。

 

こういうケースでは、時間が経過すればするほど、事実か否かに関わらず曖昧な情報が拡散してしまい、後に真実を述べても伝わりづらくなってしまうことがあります。

 

的確な情報発信と明確な裏付けで管理体制に非がないことを証明した

商品の最終出荷日を割り出し、芋虫の生後予測を素早く専門家へヒアリングするなど、不意の事態への対応策がしっかり練られていたことがわかります。

 

また、情報発信時に添えた「よくある質問」(ツイート画像下)の中で、過去にお菓子へ虫が混入したその他のケース(他社含む)でも、工場内での混入だけではなく、家庭内で混入するケースがあったことを伝えています。

 

迅速で的確な対応、整備された調査体制、そして明確な裏付けのもとに公式見解の発表という一連の流れは、まさに「危機が発生した場合にどう管理するか(収束まで)」というクライシスマネジメントの定義通りの対応です。

 

参考:looops「危機管理(クライシスマネジメント)にソーシャルメディアを活用する

 

カトリーナ災害(アメリカ)

2005年にアメリカのルイジアナ州で発生した、巨大ハリケーン「カトリーナ」を覚えていますか。

 

メキシコ湾で、一時カテゴリー5となるほどに勢力を強めたカトリーナにより、ニューオーリンズ市では堤防が決壊し、中心市街地の8割が水没しました。

 

しかも、3週間後には新たなハリケーン「リタ」も上陸し、結局ルイジアナ州だけで1,400名を超える死者を出すなど、未曾有の災害となりました。

 

アメリカでは、ハリケーンによる災害は決して珍しくありません。

 

よって、被災時の具体的な行動計画は策定されています。

 

しかし、この時までの行動計画は、あくまで「州政府機能が生きている」という前提で策定されたものでした。

 

カトリーナ災害では、州政府関係施設及び、関係者も大きな被害を受けたため、行動計画は機能しない事態となったのです。

 

結論、カトリーナ災害における連邦政府や州など公的機関の対応は、クライシスマネジメントとしては不十分だったということになります。ポイントは以下の通りです。

 

州政府機能が生きているという前提で被災時の行動計画を策定したこと

すでに述べた通り、クライシスマネジメントは、特定の事象や時間軸に特化したものではなく、ありとあらゆる事象を想定し、広い時間軸を見据えた行動計画となるように定めなくてはなりません。

 

その点で、「州政府機能が生きている」前提というのはCMPの策定方法として間違いです。

 

あくまで州政府が機能しなくなったことを前提に行動計画を考えるべきでしょう。

 

結果、自治体に対する支援や被災者に対する生活支援を行ったものの、十分とはいえないものになりました。

 

想定よりもはるかに災害規模が大きく、避難生活を余儀なくされた住民が多かったため、長期にわたる避難生活へのサポートが必要など、多くの課題が残りました。

 

災害規模を連邦政府が見誤ったこと

カトリーナによる災害は、アメリカ国内でも第二次世界大戦後、最大規模の自然災害でした。

 

連邦政府も、この規模の災害に対応するのが初めてという人間がほとんどの状況下で、想定をはるかに超えていたことがうかがえます。

 

都度、危機管理体制を改正するなどハリケーンに関する準備・想定は事前にされていたものの、堤防決壊などの状況を楽観視していたという指摘もありました。

 

それにより街が浸水し、公的機関の機能は完全に麻痺してしまいました。

 

組織間の連絡も滞り、より被害が拡大してしまったのです。

 

危機の予防だけではなく、起きた後の対策もしっかりと行いましょう!

クライシスマネジメントは、「非常事態と直面した時の対応手段や仕組み」であることをご理解いただけましたか。

 

リスクマネジメントの定義は「危機をどう予防するか」というものですが、これだと想定以上の危機に見舞われた際に、対応しきれない部分が出る可能性について説明しました。

 

危機管理対策は十分すぎるほど行ったほうがよいため、リスクマネジメントだけではなくクライシスマネジメントの観点まで考える必要があるといえるでしょう。

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