「オーナーシップ」をご存じですか。
似た言葉として「リーダーシップ」がありますが、リーダーシップは知っていてもオーナーシップは知らないという方が多いと思います。
リーダーシップはチームをまとめ上げる能力を指すのに対し、オーナーシップは「当事者意識を持って取り組む姿勢」という意味します。
グローバル競争が激化している現在、従業員一人ひとりが自分事として課題に取り組むオーナーシップは、従業員のパフォーマンス向上や組織力向上に繋がると注目されています。
今回は、オーナーシップの意味やリーダーシップとの違い、育成方法などについてご紹介していきますので、ぜひご覧ください。
オーナーシップとは
オーナーシップ(ownership)とは、個人と組織、個人と仕事の関係性を示す言葉で、目の前の仕事に対して「自分の課題として当事者意識を持って取り組むこと」です。
簡単に言うと、指示を待つのではなく「自分事」として主体的に取り組む姿勢ですね。
オーナーシップ(ownership)は、当事者意識や責任感、所有者、所有権などの意味を持ちます。
ビジネスシーンで使われることも多いですが、オーナーシップの持つ意味は幅広いため、どういう意図で使っているのかを相手に正しく伝えなくてはなりません。
下記の例を参考に、オーナーシップの意味を正しく認識して使うようにしましょう。
「オーナーシップ(当事者意識)を持って問題解決に当たる」
「オーナーシップ(責任感)を持って業務を遂行する」
「会社のオーナーシップ(所有権)を移譲する」
オーナーシップが必要とされている背景
少子高齢化やグローバル競争の激化など、日本経済は多くの課題によって複雑化しています。
そんな状況において、「リーダー一人が考えて指示を出す」というのは限界がありますし、一人に決断を委ねるのはリスクも高いですよね。
そのため、従業員一人ひとりが自分事として考え、主体的に行動することで多角的に課題の解決ができるようになります。
また、オーナーシップが育っていくことで自分の業務についての知識が深まり、責任感も高まります。
多様性が高まっている現代だからこそ、一人ひとりが当事者意識を持って主体的に取り組むオーナーシップが必要とされているのです。
リーダーシップとの違いについて
オーナーシップと似た言葉にリーダーシップがありますが、この2つを混同している人をよくみかけます。
リーダーシップは部署やチーム、組織など複数のメンバーをまとめ上げ、目標達成に向けた正しい方向へ導く能力を指します。
一方、オーナーシップは当事者意識を持って取り組む姿勢のことです。
リーダーシップは「チームを率いる人に必要なもの」なのに対し、オーナーシップは、「すべての従業員が習得すべきもの」と言えますね。
また、経営者や管理職、チームリーダーがオーナーシップも併せ持てば、「自分の役割」や「リーダーとしてやるべきこと」へ真剣に向き合うため、リーダーシップの効果を最大限引き出すことができるようになります。
従業員一人ひとりがオーナーシップを持つ企業は、チームや組織の課題を皆が自分事と捉えて積極的に取り組むため、より多くの成果を生み出すことができ、組織力向上が期待できます。
リーダーたちは、部下のオーナーシップを育成することが重要と言えますね。
オーナーシップの効果
オーナーシップは自分事として課題に取り組むことで、さまざまな効果を得られます。
ここでは、オーナーシップで得られる効果を見ていきましょう。
従業員のパフォーマンス向上
オーナーシップは、自分のパフォーマンスの把握と、得手・不得手を把握する効果があります。
これらを正確に把握することは、従業員のパフォーマンス向上に繋がります。
自分のパフォーマンスを把握すれば、それに応じて無理のないスケジュールを立てることができますし、不得意な分野は得意な人にサポートを依頼することもできるからです。
互いにサポートし合うことで業務効率が上がり、従業員全体のパフォーマンス向上に繋がりますよ。
効率的に従業員を育成できる
自分の仕事や課題を自分事として捉えることで、「より良い結果を得るにはどうするべきか」を考えるようになるため、効率的に人材育成ができます。
与えられた仕事をこなすのではなく、より良い結果を目指して主体的に取り組むため、従業員の自己成長に繋がるのです。
顧客満足度の向上
従業員一人ひとりがオーナーシップを持てば、お客様の視点に立って仕事をするようになり、よりニーズにマッチした商品開発や顧客対応の品質向上に繋がります。
全従業員がオーナーシップを持って取り組めば、顧客満足度が向上するでしょう。
リスクを抑えることができる
少子高齢化やグローバル化などで複雑になっている日本経済では、オーナーシップはリスクマネジメントとしても有効と考えられています。
例えば、国や文化の違う人々と円滑に仕事をするのは大変ですよね。
オーナーシップを持っていれば、彼らの文化や生活習慣と向き合いながら、プロジェクトを進めることができます。
自分事として主体的に取り組むことで従業員のモラルも向上し、偏見などの多様化リスクを抑えた課題克服に繋がるのです。
オーナーシップを育てる3つのコツ
さまざまな効果があるオーナーシップですが、ここでは、オーナーシップを育てるコツを見ていきましょう。
オーナーシップについて正しく知ってもらう
オーナーシップを持ってもらうには、「オーナーシップとは何か」について知る必要があります。
オーナーシップの責任感や当事者意識を「全て一人で解決すること」と考えている人もいますが、そうではありません。
オーナーシップの責任感や当事者意識とは、必要に応じて周囲のサポートを得ながら課題を解決することです。
この前提を理解していないとオーナーシップは育ちませんし、協働できずに生産性が低下する恐れもあります。
オーナーシップの育成は、正しい理解から始めましょう。
試行錯誤しやすい環境を作る
パフォーマンスの把握や、得手・不得手の分野を把握するには、ある程度経験を積まないと分かりません。
試行錯誤しやすい環境にすることで自主性を育み、トライアンドエラーで自分の能力を正確に把握させましょう。
従業員のミスや判断によってクライアントに迷惑が掛からないよう、サポートできる体制を整えることが重要です。
繰り返し行っていけば、ミスの頻度や判断精度の向上からオーナーシップ向上が実感できるようになります。
情報をオープンにする
役職に関係なく従業員一人ひとりに情報が共有されることで、それぞれがリーダーと同じように当事者意識を感じられます。
また、全員が同じ情報量で課題解決に取り組むことができるため、組織力強化にも繋がります。
オーナーシップ育成は情報をオープンにすることが重要と言えますね。
オーナーシップが発揮できている人の2つの特徴
オーナーシップの育成方法をご紹介しましたが、発揮できている人の特徴を知っておきたいですよね。
ここでは、オーナーシップが発揮できている人の特徴をご紹介します。
仕事の依頼者とコミュニケーションが取れている
オーナーシップを発揮するには、「何をどの程度要求されているのか」自分の役割を正しく認識する必要があります。
これが分からないと、自分の能力に応じてスケジュールを立てたり、周囲にサポートを依頼したりできません。
このことから、オーナーシップが発揮できている人は、仕事の依頼者としっかりコミュニケーションが取れていると言えるでしょう。
適切にサポートを依頼できる
苦手な分野を自分一人で行うよりも、得意な人にお願いした方が効率よく行えます。
オーナーシップを発揮できている人は、自分が苦手とする業務を得意な人に依頼したり、アドバイスを求めたりすることができます。
「一人で仕事を行うのではなく、解決することが大切」ということを理解しているため、適切にサポートを依頼できる人はオーナーシップが発揮できていると言えますね。
オーナーシップを育むことが重要
オーナーシップは従業員のパフォーマンスを向上させ、組織力の向上に繋がります。
多様性が高まったことによって複雑化している近年では、従業員一人ひとりが「自分事」として捉え、主体的に課題に取り組む姿勢が重要です。
全ての従業員がオーナーシップを身につけられるよう、従業員一人ひとりにオーナーシップを正しく理解させるところから、実践してみてはいかがでしょうか。