せっかく採用にまでこぎつけても、内定者が必ず入社するとは限りません。
内定辞退を防ぐために内定者フォローを行っている企業は多いと思いますが、「あまり効果がない」「内定者が何を悩んでいるのか分からない」「どういった施策を講じれば良いのか分からない」といった、お悩みをお持ちの企業も少なくないでしょう。
そこで、内定者に多い悩みや施策例をご紹介するとともに、内定者フォローの重要性や進め方について解説していきますので、ぜひご覧ください。
内定者フォローはなぜ重要なのか
日本の採用市場は、少子高齢化や景気回復などの影響で、求人募集数よりも求職者の方が少ない「売り手市場」が続いています。
株式会社リクルートキャリア「2019年3月度(卒業時点) 内定状況」就職プロセス調査(2019年卒)によると、2019年卒生の内定取得社数は、平均2.46社と多くの学生が複数社から内定を取得している状況です。
また、大学生の内定辞退率は67.8%であることから、多くの企業が学生から内定辞退をされていたことが分かります。
2020年は新型コロナウイルス感染症が流行しましたが、マイナビの行った「2021年新卒採用は6月以降どのような動きになるのか 」の調査によると、
2020年度6月以降の新卒の採用予定人数について、
- 「当初の予定どおり」…82.6%
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「減らす」…3.9%
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「増やす」…1.5%
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「検討中」…12.1%
となっていることから、新卒採用に関する意欲は、今後も高い水準にあることが推測されます。
内定辞退は、採用活動にかけてきた手間やコストが無駄になるだけでなく、事業活動にも影響を与えかねません。
つまり、
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採用市場は厳しい状況が続いている
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内定辞退が出ると企業にとって大きな損失になる
ことから、内定者の取りこぼしを最小限に抑えるために、内定者フォローが重要なのです。
内定者フォローは何を行うべき?
内定者フォローを行う際の進め方についてご紹介していきます。
内定者フォローの施策を検討する
内定者の多くは、「本当にこの会社で良いのか」「上手くやっていけるだろうか」といった、不安を抱えています。
このような不安から内定辞退してしまう人も少なくありません。
そのため、内定者の不安を取り除くことで、内定辞退や入社後のミスマッチを防止することができます。
特に、
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社会人生活
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人間関係
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仕事内容やキャリア
について不安や悩みを感じていることが多いため、これらを解消できる内定者フォローを行うことが重要です。
適切にフォローを行うためにも、内定者へ不安や悩みをヒアリングして把握するのも良いでしょう。
内定者フォローのスケジュールを立てる
内定者フォローの施策が決まったら、
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いつ
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どの時期に
-
どうやって
実施するのか具体的に決めていきます。
内定者フォローを実施すべきタイミングは、主に「内々定(4月~5月)」「内定日前(6月~9月)」「内定後(10月~3月)」の3つの時期に分けられます。
内々定出しの時期(4月~5月)
どこの企業に入社するか決断するために、企業情報を積極的に求める時期です。
厳密に言うと内定者フォローではなく、「自社を選んでもらう段階」であるため、企業情報の積極的な提供が重要となります。
内定式前の時期(6月~9月)
入社決断後から正式な内定日(10月1日)までの保留期間であり、「自分の決断が正しかったのか」思い悩む時期です。
企業理解促進のための情報提供や、内定者同士の交流による一体感醸成によって、入社決断を強めるフォローが重要です。
最も内定辞退が発生しやすい時期のため、放置しないようにしましょう。
内定式後の時期(10月~3月)
入社意思が固まると入社後をイメージするようになるため、社会人になることへの不安が高まる時期です。
社会人に必要な基礎知識や職場に慣れさせるための支援など、働く姿を具体的にイメージできるような研修や情報提供が重要となります。
内定から入社までの期間、内定者は様々な不安を抱えて葛藤しています。
内定者の心理状態を把握した上で計画的に内定者フォローのスケジュールを立てましょう。
内定者との接触方法を決める
内定者フォローで重要なのは、できるだけ多く内定者と接点を持つことです。
内定を出したからといって放置してしまうと、不安感や不信感を与えることにつながるため、気軽にコミュニケーションが取れる方法を決めましょう。
近年は、採用時に使用したメールアドレスだけでなく、LINEやFacebookといったSNSを活用している企業が増えています。
内定者へフォロー内容やスケジュールを伝える
内定出ししたタイミングで、入社までのスケジュールや連絡手段を伝えましょう。
いつでも気軽に相談できる体制が整っていることを内定者へ伝えると、安心感や信頼感を与えることができます。
内定者に多い悩みとは?
先述のとおり、内定者は
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社会人になること
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人間関係に関すること
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仕事内容やキャリアに関すること
に不安や悩みを感じていることが多いです。
社会人になること
学生には社会人経験がないため、「自分が社会人としてやっていけるかどうか」不安に感じています。
そのため、ある程度のマナーや業務知識を身につけたいと考える学生が多いのです。
しかし、企業側から何の情報提供もされないと、具体的にどのような知識やスキルを身につければ良いのか分かりません。
このような悩みを解消するには、ビジネスマナーなどの社会人に必要な基礎スキルや、仕事に必要な知識といった、入社前教育の実施が効果的です。
人間関係に関すること
新たなコミュニティに属するにあたり、「どのような人たちがいるのか」「良好な人間関係を構築できるか」など、人間関係への不安や悩みを抱えています。
人間関係は離職の原因にもつながるため、
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役員
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先輩社員
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同期
と交流する機会を設け、歓迎ムードを演出しましょう。
また、内定者にとって同期は特別な存在です。
懇親会やSNS上で内定者グループを作るなど、内定者同士のつながりを強化することで、大きな安心感を与えられるため、歩留まりの向上が期待できます。
仕事内容やキャリアに関すること
企業は、学生が仕事や企業について理解を深められるよう、様々な工夫を凝らしていると思います。
しかし、学生は
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詳しい仕事内容
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キャリアプランを実現するために必要となる過程
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昇進・異動に関する制度と現状
といった具体的な情報を求めており、企業からの情報提供が不十分と感じている人も少なくありません。
面談や研修時に学生の思い描くキャリアや希望職種をヒアリングした上で、企業が期待していることを伝え、価値観をすり合わせましょう。
また、学生が希望する会社の情報を可能な範囲で伝えるようにすると、相互理解が深まるため、入社後に感じるギャップを抑止できます。
内定者フォローの施策例
では、具体的にどのような内定者フォローがあるのでしょうか。
ここでは、内定者フォローの施策例をご紹介します。
懇親会
懇親会は、内定者を集めて職場の状況や、事業内容について説明する内定者フォローの施策です。
内定者同士が交流する機会を設けると、連帯感が強まり、入社意思を固めることができます。
また、役員や若手社員と話すことによって、社風や社員の人柄が分かるため、人間関係の不安や悩みの解消にも期待できるでしょう。
近年は、家族の意向による内定辞退を防ぐために、内定者の家族と懇親会を開く企業も増えつつあります。
内定式
内定式は、企業が正式に内定通知を渡す式典で、多くの企業で行われている内定者フォローの施策です。
多くの企業では、経団連の決めた解禁日である10月1日に実施され、内定通知書の授与や代表・役員の挨拶、事業内容の説明を行います。
また、内定式後に
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社員との交流会
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内定者懇親会
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内定者面談
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研修
といったプログラムが組まれることもあります。
内定式を開催すると「この会社で働くのだ」と実感しやすくなるため、入社への意識が高まると同時に、役員や先輩社員の話から企業理解を深めさせることも可能です。
定期的な連絡や面談
定期的な連絡や面談は、内定者と直接話すことで相手の心理状態を把握し、不安や悩みをケアする内定者フォローの施策です。
先述のとおり、内定者は様々な不安を抱えているため、放置してしまうと内定辞退される可能性が高まります。
内定者と実際に話し、「社会人生活」や「人間関係」、「仕事内容・キャリア」といった内定者の抱えている不安を把握し、必要な情報を提供することで、企業理解促進や入社の意思固めにつながります。
内定者と円滑にコミュニケーションを取るには、
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交流のある人事担当者
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配属予定先の先輩社員(社歴3年~5年)
を担当者として任命しましょう。
内定者が親しみを感じて相談しやすくなるため、信頼関係を構築しやすいです。
また、内定者への連絡頻度は2週間に1度を目安に、最低でも月に1度は連絡を取るようにすると良いでしょう。
あまり頻繁に連絡を取ると、内定者の負担になってしまうため、注意が必要です。
SNSの活用
身近なツールであるSNSを内定者とのコミュニケーション手段として活用することで、内定者フォローを行えます。
FacebookやLINEといったSNSは、企業と内定者双方が気軽にコミュニケーションを取れるため、コミュニケーションの促進や情報提供による企業理解促進に期待できます。
ただし、
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設定ミスや投稿先のミスによって情報漏洩するリスクがある
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プライベートのSNSで職場とつながることに抵抗を持つ人もいる
可能性があるため、注意が必要です。
また、SNS上のやり取りであっても、相手が役職者だと内定者が緊張してしまい、積極的に交流できない可能性があります。
内定者が気軽に連絡を取れるよう、交流のある人事担当者や年齢の近い若手社員に任せると良いでしょう。
メールマガジン
メールマガジンは、内定者向けに会社の内情が分かる内容を定期的に送信する、内定者フォローの施策です。
メールマガジンには、
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社内イベントの様子
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既存社員から内定者へ向けたメッセージ
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内定者の自己紹介
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社内報の抜粋記事
など、内情が伝わるようなコンテンツを盛り込むことで、企業理解の促進や入社後に感じるギャップを軽減することができます。
初回配信のメールに、内定者向けメールマガジンの配信頻度や内容について記載しておくと、開封率アップが期待できます。
ただし、あまり頻繁に配信すると内定者にプレッシャーがかかってしまうため、注意が必要です。
また、内定者の疑問を解消する「Q&Aコーナー」のようなコンテンツを設けると、より一層興味・関心を引けるでしょう。
社内イベント
社内イベントは、内定者を
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クリスマスパーティー
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忘年会
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新年会
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スポーツ大会
といった、社内イベントへ招待する内定者フォローの施策です。
社内イベントに参加すると、職場の雰囲気や社員の人柄、社風を体感してもらえるため、人間関係の不安を払拭できます。
また、内輪のイベントに内定者を招待することで、「会社全体で歓迎している」ことを伝えられるだけでなく、信頼感の高まりにもつながります。
ただし、強制参加にすると内定者の負担が増えてしまうため、社内イベントは任意参加にしましょう。
職場見学
職場見学は、配属予定先の部署や職場を内定者に見てもらう内定者フォローの施策です。
職場見学では、配属予定先の上司や先輩社員が、内定者とコミュニケーションを取りながら説明や質疑応答を行います。
そのため、企業・業務への理解が深まり、不安の払拭や入社後に感じるギャップの軽減が期待できるのです。
職場見学を実施する際は、
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注目ポイントが記載されているプリントを事前に配布する
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事前に決めたテーマについて、見学後にディスカッションを行い、その内容をレポートに書いて提出してもらう
などのプログラムを組むと、より一層理解を深められます。
内定者アルバイト(有給インターン)
内定者アルバイトは、希望した内定者を入社までアルバイトとして雇い、実際の業務を体験してもらう内定者フォローの施策です。
実際に業務を経験してもらうことで、企業への帰属意識を高める効果や入社前研修としての効果を期待できるため、即戦力化につながります。
また、選考時には分からなかった内定者の本質や仕事への適性を判断することもできるため、配属先決定にも役立てられるでしょう。
一般的には、10月~3月頃に行われますが、卒業論文の作成に追われる学生も多いため、負担を感じにくい内容にする必要があります。
様々な仕事を経験してもらった上で、本人の希望を考慮して決定すると、内定者フォローの効果が高まります。
通信教育
内定者に郵送やオンライン上で通信教育を受講させる、内定者フォローの施策です。
通信教育では、研修目的に合わせて
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ビジネスマナー
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wordやExcelの基礎知識
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語学
といった、プログラムが組まれています。
通信教育を受けさせることで、社会人生活への不安払拭や、スキル・知識の悩みを解消できるため、入社意思固めにつながります。
また、業務で必要になる知識や基本的なビジネスマナーを身につけた上で、入社してもらえるため、即戦力化が期待できるでしょう。
特にe-ラーニングは、スマートフォンから好きな時に受講でき、受講状況も把握しやすいことから、内定者・企業側双方にとって利便性の高いツールと言えます。
合宿研修
内定者を一箇所に集めて合宿形式の研修を行う内定者フォローの施策です。
内定者を対象とした合宿研修では、
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企業理念や事業内容の説明
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仕事のやりがい
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仕事の進め方
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ビジネスマナー
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チームワークの重要性
などのプログラムを組むことが多いです。
内定者や先輩社員との交流を深めることで、人間関係の不安を払拭し、帰属意識を高めさせることができます。
内定者研修は非日常の時間をともにするため、仲間意識の強化や意識改革の促進を期待できますが、コストが高くなる傾向にあります。
適切な内定者フォローで内定辞退を防ごう!
内定者フォローは、内定者の抱えている不安や悩み、時期によって異なる心理状態に合わせて、必要な施策を講じることが重要です。
学生は、自分以外の内定者が企業からどのようなサポートを受けているのか、非常に気にしています。
「社内イベントに呼んでもらえた」「定期的に連絡が来る」といった状況の中、自分だけ何の連絡もなければ、不安になってしまいます。
内定者との関係を構築して入社意思を固めるためにも、ご紹介した内容を参考に、内定者フォローを行ってみてください。