
少子高齢化にともなう労働力不足が深刻化する日本において、多くの企業にとって外国人採用はもはや一時的な人手不足の解消策ではなく、持続的な成長を支える重要な経営戦略となっています。
厚生労働省のデータによると、令和7年(2025年)10月末時点での国内の外国人労働者数は2,571,037人に上り、前年比で約26.8万人増加、平成19年の届出義務化以降で過去最高となっています。
しかし、初めて外国人採用に臨む人事担当者にとって、在留資格の確認や出入国在留管理局への申請、文化や雇用の考え方の違いから生じる早期離職など、実務における不安は尽きません。
本記事では、法的リスクを確実に回避し、社内で安全に活躍できる外国人採用の仕組みを作るために、担当者が知っておくべき実務手順や注意点を体系的に解説します。
【1】外国人採用の現状とよくある失敗パターン
日本国内の労働市場は、空前の人手不足に直面しています。
従来通りの日本人を対象とした採用手法だけでは現場の維持も困難になるなか、外国人採用を成功させるために、まずは「なぜ失敗するのか」の根本原因を知ることから始めましょう。
1-1. 在留資格の確認不足による違法就労
外国人採用でよくある失敗パターンの筆頭は、入社手続き時における「在留資格の確認不足」です。
担当者に悪意がなくても、自社で任せる業務内容が外国人の保有する在留資格で許可された範囲から外れている場合、意図せず違法な労働となってしまいます。
1-2. ジョブ型雇用との文化の違いによる摩擦
入社後に生じる「現場とのコミュニケーション不全や早期離職」も大きな課題です。
日本独自の曖昧な業務分担や暗黙の了解を前提とした指導体制では、外国人の定着は望めません。
海外では「自分の担当職務と権限が明確に定義されている」ジョブ型雇用が一般的です。
そのため、仕事が終われば定時で帰る文化や、自分の担当外の仕事はおこなわない態度を、日本人従業員が「やる気がない」と誤解してしまうことが、摩擦や離職の引き金となります。
1-3. 日本語能力だけで適性を判断してしまう
「日本語が流暢でコミュニケーションがスムーズだから」という理由だけで合格を出すのも危険なパターンです。
言語能力の高さと、自社の業務をこなせる適性やストレス耐性は別物です。
スキルや価値観のすり合わせを怠ると早期離職につながります。
【2】失敗しないために押さえるべき外国人採用の3つの基本
外国人採用を推進するうえで、最も重要となるのが法令遵守(コンプライアンス)です。
リスクを完全に回避するために、絶対に妥協できない3つの基本原則を解説します。
2-1. 在留カードの現物による就労可否の確認
雇用できる外国人かどうかを正確に見分けるには、外国人本人が所持する「在留カード」を物理的に確認することが基本となります。
確認の際は、以下の要件を満たしているかチェックします。
・カードの書体やホログラムを確認し、偽造品ではないこと(現物を触って確認する)
・「在留期限」が切れておらず有効であること
・おもて面の「就労制限の有無」の欄を確認し、自社で従事させる予定の業務が許可されていること
2-2. 日本人と同等の待遇が原則(差別禁止)
日本の労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法、同一労働同一賃金のルールは、国籍を問わず日本で働くすべての労働者に等しく適用されます。
「外国人だから」という理由で低い給与を設定したり、不合理な労働条件で働かせたりすることは明確な違法行為です。
国籍や出自を理由に選考時や処遇面で不利な扱いをすることは全面的に禁止されています。
2-3. 違法雇用は企業も罰せられる(不法就労助長罪)
適切な在留資格をもたない外国人を働かせたり、許可された在留期間を超えて就労させたりした場合、企業側は「不法就労助長罪」という非常に重い罰則を科される可能性があります。
不法就労助長罪が適用された場合、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
「不法就労であることを知らなかった」という過失であっても、事前の確認を怠っていれば処罰を免れません。
【3】在留資格の基礎知識|自社に合うのはどのタイプ?
在留資格は29種類存在し、それぞれ許可される活動内容や期間が細かく定められています。
企業が雇用する際に特に関わる主要な在留資格の区分を整理します。
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在留資格の区分 |
該当する資格名 |
特徴と就労のルール |
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専門的・技術的分野 |
技術・人文知識・国際業務(技人国) |
事務、営業、通訳、ITエンジニアなど、専門的な知識や技術を必要とする業務に従事するための在留資格。学歴や実務経験、担当する業務内容などが要件を満たしているか審査されます。 |
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特定分野の即戦力 |
特定技能 |
深刻な人手不足が認められる産業(製造業、飲食、建設、介護など)において、一定の技能をもつ即戦力を受け入れる資格。特定技能1号では、企業などの受入れ機関に生活・就労面などの支援が義務付けられています。 |
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技能移転・人材育成 |
技能実習 ※技能実習制度は廃止され、新たな「育成就労制度」が2027年4月1日から施行されます。 |
開発途上国への技術移転を目的とした制度。 2027年4月1日から技能実習制度は廃止され、新たな「育成就労制度」が施行されます。現在の技能実習については、一定の経過措置が設けられています。 |
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身分・地位に基づく |
永住者、定住者、日本人の配偶者等 |
活動内容に制限がないため、日本人と同様に工場での軽作業や店舗での接客など、どのような仕事にも時間制限なく従事させることができます。 |
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条件付きで就労可能 |
留学、家族滞在(※資格外活動許可が必要) |
出入国在留管理局から「資格外活動許可」を得ている場合、原則週28時間以内(風俗営業等を除く)でアルバイトが可能です。※他社との合計時間で計算されるため注意が必要です。 |
【4】「国内在住者」と「海外からの呼び寄せ」の比較
外国人を採用するルートは、大きく分けると「すでに日本に住んでいる人を採用する」か、「海外から新たに呼び寄せるか」の2つに分かれます。
初めて外国人を採用する企業は、在留資格の変更などが必要になる場合もありますが、すでに日本で生活している人を採用することで、海外からの採用と比べて入国手続きや生活立ち上げの負担を抑えられるケースがあります。
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比較項目 |
国内在住者の採用 |
海外からの呼び寄せ(海外在住者) |
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採用コスト |
比較的抑えやすい(渡航費などが不要なケースが多い) |
高い(渡航費、ビザ申請代行費などがかかる) |
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日本語・文化理解 |
日本で生活している期間があるため、日本での生活環境に慣れている場合がある |
日本語能力や日本での生活経験は人によって異なるため、入社後のフォローが必要になる場合がある |
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生活サポート |
すでに日本で生活基盤を築いている場合、負担を抑えやすい |
住居探しや各種手続きなど、生活立ち上げのサポートが必要になる場合がある |
【5】外国人採用7つのステップと失敗しないための注意点
初めての採用でも迷わず、トラブルを起こさずに実行するための具体的な実務プロセスを7つのステップで解説します。
5-1. STEP1:採用計画(求める人物像と在留資格の明確化)
まずは、外国人にどのような業務を担わせたいのか、その業務内容がどの在留資格の許可基準に該当するのかを明確にします。
あらかじめ具体的な仕事内容と必要なスキルレベルを定義しておくことで、入社後の不満を防ぎます。
5-2. STEP2:募集(求人方法の選定)
外国人専用の求人サイトの利用、人材紹介会社の利用、または既存の外国人スタッフからの紹介(リファラル採用)などがあります。
人材紹介会社を利用する際は、ホームページなどで「有料職業紹介事業許可」を適切に取得しているかを精査することが大切です。
5-3. STEP3:書類選考(在留カードの確認)
履歴書や職務経歴書の選考と同時に、必ず「在留カード」の両面のコピーを提出してもらい、実物の確認をおこないます。
在留期限や資格外活動許可の有無をこの段階でチェックします。
5-4. STEP4:面接での見極めとNG質問
面接では、業務をこなせる適性や、自己解決能力を相互に確認します。
【面接で使える質問例】
「日本で就職しようと考えた一番の理由を教えてください」
→長期的なキャリアビジョンと意欲を見極めます。
「これまでの仕事や学校生活で最も大変だったことは何ですか?それをどのように解決しましたか?」
→困難に対する自己解決能力と、そのさいのコミュニケーション方法を確認します。
【面接時に注意すべきNG質問】
国籍や出生地、家族の状況、宗教や信条について質問することは、就職差別につながるハラスメントとみなされる可能性が高いため絶対に避けてください。
宗教関連の配慮を尋ねるばあいは、個人の信仰ではなく「業務時間中に必要な配慮(礼拝の時間や食事制限など)があるかどうか」という職務調整の文脈においてのみ丁寧に確認します。
5-5. STEP5:内定・雇用契約
後々のトラブルを防止するため、雇用契約書は日本語のものだけでなく、相手が完全に理解できるよう母国語や英語を併記した多言語フォーマットで作成・交付することが強く推奨されます。
5-6. STEP6:在留資格の申請・変更手続き
内定受諾後、外国人の状況や就労する在留資格に応じて、出入国在留管理庁に「在留資格認定証明書交付申請」や「在留資格変更許可申請」などの手続きをおこないます。
必要書類は在留資格や企業の状況などによって異なるため、雇用契約書や事業内容を証明する書類などを確認し、余裕をもって準備を進めましょう。
5-7. STEP7:入社準備と生活面も含めた受け入れ体制の構築
入社日までに、現場の受け入れ態勢を整えます。
抽象的な表現を避け、図解や多言語対応のマニュアルを用意したり、孤立を防ぐために日本人社員を「メンター」として配置したりすることが効果的です。
また、仕事上のサポートだけでなく、住居の手続き、銀行口座の開設、雪国などの場合は気候への配慮(防寒具の案内など)を含め、安心して生活できる基盤づくりを企業が率先して親身にサポートすることも、職場への定着を支える取り組みのひとつです。
【6】外国人採用で活用できる助成金
外国人採用にともなう環境整備や採用コストを軽減するために、国が提供する助成金を賢く活用することができます。
6-1. 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
外国人労働者が職場に円滑に適応できるよう、事業主が就労環境整備(就業規則の多言語化、翻訳機の導入、外部通訳との契約、外国人労働者向けの相談員の設置など)に取り組む際に、その費用の一部が助成される制度です。
整備計画を事前に提出し、実施後の定着率などの目標を達成することで受給できます。
6-2. トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
職業経験の不足などから就職が困難な求職者を、一定期間(原則3カ月)試行的に雇用する場合に支給される助成金です。
外国人であることだけを理由に対象となる制度ではなく、対象労働者に関する要件やハローワーク等の紹介による雇入れなど、所定の条件を満たす必要があります。
外国人を採用する場合も、これらの要件を満たせば対象となるケースがあります。
6-3. 助成金申請時の注意点
助成金にはそれぞれ支給要件や不支給要件が定められており、法令違反の状況などによっては支給を受けられない場合があります。
申請前に、利用する助成金の最新の支給要件を確認しましょう。
【7】まとめ
外国人採用を初めて担当する場合、何から始めればよいか戸惑うことも少なくありません。
しかし、基本となる「在留カードの現物確認」を徹底し、在留資格ごとの要件を正確に把握してプロセスを標準化すれば、重大な法的リスクを確実に回避することができます。
日本人と同等の公正な待遇を守り、マニュアルの整備や多言語対応の雇用契約、そして何より「生活面への親身なサポート」を整えることが早期戦力化と定着への近道です。
補助金などの行政支援も上手に活用しながら、自社の新たな原動力となる外国人材を安心して迎えるための体制づくりを進めましょう。


