採用活動を成功させる上で、企業の経営者、採用担当者が転職者の本当に考えていることを知っておくのはとても重要です。

 

ここでは代表的な職種をいくつか挙げ、それぞれの職種に応じた転職者の「ホンネ」を見つつ、求人を出す際に工夫すべきポイントなどをご紹介します。

 

ITエンジニア

専門的なスキルを求められる分、担当する開発分野や評価制度によって転職前後のギャップが起こりやすいのがITエンジニアです。

 

リクルートが提供するエンジニア向けポータルサイト「Tech総研」の調べによると、ITエンジニアの転職理由としてトップに上がるのが「会社からの評価や給与が上がらない。あるいは下がった」というもの。

 

ITエンジニアに限ったことではありませんが、

 

「運の悪いプロジェクトに配属されているから評価が伸びないと言われた」

「客先での仕事がほとんどで上司とコミュニケーションをとる機会がなく、給与も伸びなかった」

 

といったITエンジニアならではの悩みもあるようです。

 

その他、「会社や業界の将来に不安を感じた」「休日数、残業、勤務時間に不満があった」という不満を持つITエンジニアが転職先を選んだ理由として最も多かったのが「仕事内容の面白さ、醍醐味」でした。

 

待遇や評価に不満を抱えるエンジニアが多い中でこの理由がトップに来ることに矛盾を感じるかもしれませんが、

 

面白い仕事ができる→モチベーションが上がる→よい結果に結びつく→待遇も改善する

 

という好循環がITエンジニアの頭にあると言えるかもしれません。

 

営業職

営業職に従事する方々も様々な理由で転職を考え、実行に移しています。

 

「Create転職」が20~50代の営業として働く方々500名にアンケートを行ったところ、転職を考えた理由として最も多かったのは「給与への不満」でした。

 

そこから「待遇の不満」「営業方針への不満」「時間・残業の不満」と続いていきます。

 

条件待遇面の不満が上位に上がる点は他職種と共通していますが、「営業方針への不満」が上位に来るのは他職種にはない傾向です。

 

転職の満足度に関する統計では100点満点中50~80点と答えた方が多く、全体の3/4が転職によっておおむね不満点を克服しており、他職種に比べて満足度は高い傾向にあります。

 

転職理由の第一位に上がった「給与への不満」にフォーカスしてみると、営業として働く多くの方が転職による年収アップ、待遇改善を実感しているようです。

 

同じ統計で行われた「売れる営業になるために実行・勉強していることは?」という質問に、

 

「英語を習得し、今は中国語を勉強中」「経済誌などを読んで話題のネタを仕入れる」

 

と回答している営業もいることを考えると、そうした努力が結果に結びつく職場で待遇改善を望んでいる方が多いという見方もできるでしょう。

 

事務職

転職市場でも人気職種である事務職に、「定時退社や土日祝休みがしやすく楽そう」というイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、事務職にも事務職ならではの悩みがあります。

 

業界や企業の風土によって環境は異なりますが、事務職が抱える悩みについて聞こえてくる声をまとめてみました。

 

・仕事にやりがいを感じられない

・雑務ばかりでスキルが身につかず、成長を実感できない

・給与が安く、将来的に不安がある

・仕事がないときが苦痛。こっそりネットサーフィンで時間を潰すしかない

・雑用扱いで、社内でも冷遇されていると感じる

・事務職だけ研修が一切ない

 

中には「AIの進化で将来、この職種はなくなるのではないか」という不安を口にする方もいました。

 

30代を迎えると、女性を中心に「年齢に見合ったキャリアがある仕事に就きたい」「もっとやりがいのある仕事に就きたい」「一人で生きていく力を身につけたい」といった理由で転職を考える方が増えるようです。

 

企業側の対応としては、事務職として働く方の評価をどうするか考え、キャリアパスの道筋を示すことが重要になってくるでしょう。

 

求人広告掲載のポイント

「転職」とはそもそも、労働者が今の環境に対して抱いている不満を解消する行為です。

 

万人の不満を解消する求人広告を打ち出すのは非常に難しいですが、例として「働きやすい環境で長くじっくり働きたい」と考えるITエンジニアにターゲットを絞り、有給の取りやすさや残業の少なさをアピールするといった工夫で応募を集めることはできます。

 

仕事内容だけでなく企業の風土も含めて具体的なエピソードを交えつつ記載し、入社後のミスマッチが発生しないようにしましょう。

 

求職者が転職を失敗と感じる要因は、「転職前のイメージと転職後の現実が乖離していた」「転職前に抱いていた不満が本当の不満ではなかった」という二点に集約されます。

 

後者は求職者が条件選択を誤った結果起こり得るものなので企業側が対応するのは困難ですが、前者は求人広告や採用HPを通じた詳細な情報発信によって、未然に防ぐことができます。

 

「当社はあなたの転職先として、現状の不満に対してこのような待遇・評価を用意できる」ということが伝わる求人広告を作るようにしましょう。

 

まとめ

今回は代表的な職種の主だった転職理由をご紹介しましたが、実際の転職理由は人それぞれであり、面接に際して「前職の給与に不満があった」「職場の雰囲気が悪かったから」と、退職理由を正直に述べる転職者ばかりではありません。

 

採用活動を行う際は表面化しづらい求職者の「ホンネ」を見極め、不満を解消し得る待遇や風土をアピールしていくことが大切です。

 

もちろん不満点がひとつ改善されると別の不満が表に出てくる可能性もあります。

 

優秀な人材を確保し、流出を防ぐためにも個々の社員の志向を把握して、一人ひとりの希望を叶える環境に近づけていくことが企業に求められていると言えるでしょう。

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