2025年卒の就職活動から、条件を満たす場合のみインターンシップの直接採用が可能になります。
「具体的にどう変わるの? 」
「企業がすべき準備や対策を知りたい」
そうお考えの採用担当者は多いのではないでしょうか。
今回は、インターンシップルールの変更点や注意点を具体的に解説します。
そもそもインターンシップとは
インターンシップとは、就活生が入社前に行う職場体験のことです。
就活生にとって、企業風土や職場の雰囲気は、実際に体験しないとわかりません。そのため、入社前の企業研究や業界研究を兼ねてインターンシップに参加する学生は多くいます。
企業にとってインターンシップは、優秀な学生を早期に見つけ、アプローチできるチャンスです。
日本では新卒採用者をターゲットにしたインターンシップが盛んに行われています。実施期間は、数日〜年単位になる場合もあり、企業によってさまざまです。
本来は通常業務を実地体験するのがインターンシップですが、日本では実務以外の活動もインターンシップに含まれています。
例えば、
- グループワーク
- ディスカッション
- プレゼンテーション
- ケーススタディ
などです。
インターンシップのルールが見直された背景
インターンシップは、あくまでも職業体験の提供が目的です。
そのため、就活ルールでは「インターンシップ生の情報は採用選考活動に利用できない」と決められていました。
しかし、実際の採用市場では「インターンシップを利用した採用活動が行われている」など、多くの企業がルール違反を行っていました。
他にも、
- インターンシップ生限定で早期に選考案内を届ける
- インターンシップ中に優秀だった人には採用を確約する
- インターンシップ生だけ採用選考試験で加点する
といった事例が挙げられます。
こうした実態を踏まえて、適切な採用選考活動の実施を後押しするために行われたのが、インターンシップルールの見直しです。
見直しの結果、2025年卒の就職活動から、一定の条件下でインターンシップ生の直接採用が認められます。
三省合意改正のポイントと注意点
インターンシップのルールは、「経済産業省」「文部科学省」「厚生労働省」の三省の合意によって決められています。2022年4月のルール見直しで、三省合意改正が実施されました。
主な改正内容は、
- 要件を満たすときだけ「インターンシップ」と呼べる
- 学部1~2年生はインターンシップの対象外
- 採用活動に使えるケースが決められた
です。
三省合意改正のポイントと注意点を詳しく解説します。
注意点1. 開催日数によっては“インターンシップ”と名乗れない
三省合意改正後、インターンシップと呼べるのは5日間以上のプログラムに限られます。専門活用型は2週間以上です。
最低ラインが定められたことで、インターンシップ開催までのハードルが上がりました。これにより、企業にはしっかりした準備とリソース確保が求められます。
注意点2. 1~2年生のプログラム名に“インターンシップ”はNG
新たに定義されたインターンシップは、学部3年生か修士課程に進学する学生が対象になります。学部1~2年生はインターンシップの対象外となる点に注意が必要です。
この定義は、インターンシップと学業の両立を目的としています。
従来のインターンシップには誰でも参加できましたが、授業を欠席したり休学したりしてまで参加する学生が問題視されていました。
そこで導入されたのが、インターンシップに参加できる学生の制限です。
注意点2. 学生情報の採用活動に使えるのは「タイプ3・4」のみ
産学協議会が定めた「キャリア形成支援に関する取組み4類型」のうち、学生情報の採用活動に使えるのはタイプ3と4の2種類のみです。
それぞれ、
- タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ
- タイプ4:高度専門型インターンシップ
と呼称されています。
学生情報を採用活動に利用する条件5つ
- 就業体験要件
インターンシップ期間の半分以上を、実際の職場での就業体験にしなくてはなりません。テレワーク中心の場合は、テレワークも職場と認められます。
- 指導要件
就業体験では、職場の従業員が学生を指導しなくてはなりません。なお、インターンシップ後は、適切なフィードバックを実施する必要があります。
- 実施期間要件
汎用的能力活用型は5日間以上、専門活用型は2週間以上実施する必要があります。
- 実施時期要件
学部1〜2年生の参加は不可です。学業との両立のため、学部3〜4年または修士1〜2年の長期休暇期間のみ参加が認められます。なお、大学正課・博士課程はこの限りではありません。
- 情報開示要件
タイプ3の実施にあたって、事前に情報を開示する必要があります。
募集要項などに以下の項目を明記しましょう。
- プログラムの目的
- 実施時期、期間
- 募集人数
- 選抜方法
- 給与の有無
- 就業体験の内容
- 就業体験に必要な能力
- フィードバック方法
- (必要なら)採用活動に学生情報を利用する旨
- 当該年度のインターンシップ実施計画(時期・回数・規模など)
- インターンシップ実施に係る実績概要(過去2~3年程度)
- 採用選考活動などの実績概要 ※企業による公表のみ
キャリア形成支援に関する取組み4類型
従来のインターンシップや会社説明会といった活動は「キャリア形成支援に関する取り組み」の4分類にわけられます。
これによりインターンシップの定義が明確化され、学生情報の利用に関する制限が設けられました。
ここでは、キャリア形成支援に関する取組み4類型をそれぞれ解説します。
名称 | 対象者 | 実施期間 | 採用との連携 | |
---|---|---|---|---|
タイプ1 | オープン・カンパニー | 問わない | 1日~ | × |
タイプ2 | キャリア教育 | 問わない (主に1~2年生) |
プログラムによる | × |
タイプ3 | 汎用的能力・専門活用型インターンシップ |
3~4年生 博士1~2年生 |
汎用能力活用型:5日~ 専門活用型:2週間~ |
〇 ※採用活動開始以降に限る |
タイプ4 | 高度専門型インターンシップ | 修士以上 | 2ヶ月~ | 〇 ※採用活動開始以降に限る |
タイプ1. オープンカンパニー
タイプ1「オープンカンパニー」は、学部1年生から参加可能なプロジェクトです。
例えば、
- 就活イベント
- 会社説明会
が挙げられます。
実施主体は、企業や就職情報会社、大学のキャリアセンターなどです。
オープンカンパニーの目的は、企業や業界知識の獲得や早期キャリア形成とされています。
学生が自身のキャリアを考えるきっかけとなるため、積極的に参加する学生が多いです。
就業体験は含まず、学生情報を採用活動に利用するのは禁止されています。
実施時期や期間、対象に制限はありませんが、学業との両立に配慮しましょう。
タイプ2. キャリア教育
大学と企業が連携して作り上げる産学連携プログラムや、企業がCSRとして実施するプログラムがタイプ2です。
「働くことへの理解を深める教育の提供」を目的としており、授業形式で企業の担当者がキャリア教育を実施します。
参加できる学生に制限はありません。学部1年生から参加できますが、キャリアを考え始める学部1~2年生が主な対象です。
キャリア教育で就業体験を実施するかは任意で選択できます。また、学生情報を採用活動に利用することはできません。
タイプ3. 汎用的能力・専門活用型インターンシップ
タイプ3はこれまでのインターンシップに近いプログラムです。
ただし、実施条件が細かく決められています。
タイプ3の実施条件は、
- インターンシップ期間は5日間以上
- インターンシップ期間の半分以上は就業体験である
- 学部3~4年生または修士1~2年生が対象となる
- 必ずフィードバックを行う
などです。
インターンシップで得た学生情報は、採用活動に利用できます。その場合、インターンシップの募集要項などで、学生情報を採用活動に利用する旨を学生に周知しておかなければなりません。
要件を満たした企業は、「産学協議会基準準拠マーク」を記載できます。
決まりに則ってインターンシップを実施しているという信頼感が、学生へのアピールにつながるでしょう。
タイプ4. 高度専門型インターンシップ
タイプ3よりも専門性の高い学生を対象に行うインターンシップが、タイプ4「高度専門型インターンシップ」です。
ジョブ型採用を考えている企業向けに設けられ、試行が始まっています。
タイプ4の対象は、修士以上の学生です。実施期間は最低2ヶ月とされており、長いスパンでの実施が前提となります。
タイプ4も一定の条件を満たせば、学生の個人情報を採用活動に利用可能です。実施条件などは産学協議会で検討が進められているため、より詳しい内容はこれから明らかになるでしょう。
採用直結のインターンシップを導入するメリット・デメリット
インターンシップで得た学生の個人情報を採用活動に利用できると、どのような影響があるのでしょうか?
採用直結のインターンシップを導入するのは、メリットはもちろん、デメリットもあります。良い面と悪い面を知ったうえで、導入を検討しましょう。
メリット
採用直結のインターンシップを導入するメリットは、主に4つです。
学生が企業文化を知る機会を提供できる
三省合意改正後のインターンシップは、少なくとも5日間は実施されます。そのため、学生は時間をかけて企業理解や業界理解を深められます。
就業体験を通して、入社後の仕事内容を具体的にイメージできるようになるでしょう。
学生の素養を判断しやすい
実務で活躍できるかどうかは、採用面談やペーパーテストだけでは判断できません。インターンシップを実施すると、企業は学生の素養を事前に確認できます。
離職率低下が期待できる
インターンシップは、学生にとって仕事内容や企業風土を確認できる良い機会です。
入社前の就業体験を通して会社への理解が深まれば、入社前後のギャップが小さくなります。したがって、離職率低下が期待できるでしょう。
即戦力が得られる
インターンシップの期間は最低5日間ですが、専門性が高い業務の場合は2ヶ月以上の長期間に及びます。
長期間のインターンシップは、実質的な新入社員研修です。そのため、インターンシップ生は入社後の研修をする必要がありません。
入社してすぐ即戦力として活躍できる人材を獲得できるのは、採用直結のインターンシップを導入するメリットです。
デメリット
採用直結のインターンシップを導入するデメリットは、主に4つあります。
スケジュールが前倒しになる
インターンシップから直接学生を採用できるようになると、採用活動全体のスケジュールが前倒しになります。
スケジュールの前倒しにともなって、企業はより早くから採用活動の準備を始めなければなりません。
人事担当者の負担が大きくなる
インターンシップの実施時期によっては、前年度の卒業生の採用活動時期と重なる可能性があります。
複数の学生のインターンシップや採用活動を同時進行で行うため、人事担当者の負担は大きくなるでしょう。
企業は社内負担が大きくならないように、人事担当者を増やしたり、採用スケジュールを調整したりする必要があります。
選考フローを新たに設ける必要がある
採用直結のインターンシップでは、学生情報を採用活動へ利用することが認められています。
しかし、インターンシップだけで採用可否を決める企業は少なく、採用選考を実施する企業が多いです。
この場合、インターンシップ生と一般エントリーの学生の選考フローが変わります。選考フローの見直しや策定が必要になるので、採用工数が増えるのは難点です。
長期的なアフターフォローが必要
インターンシップは学部3年生以上を対象に実施します。早ければ学部3年生の夏休みにインターンシップができる仕組みです。
就活ルールのスケジュールに則って採用選考を行うのであれば、その学生が4年生の6月を迎えるまでの約1年間、つなぎとめておく必要があります。
インターンシップ終了後も定期的に連絡するなど、採用コストがかさむのはデメリットです。
2025年卒の採用スケジュール
2025年卒からインターンシップのルールが変更になりますが、就活ルールは従来のままです。
採用直結のインターンシップを導入した場合、採用スケジュールはどのようになるのか解説します。
6月~9月…サマーインターンシップ
2023年の6〜9月に、夏季休暇を利用してサマーインターンシップを実施しましょう。
主な対象は学部3年生です。
インターンシップで得た学生情報を採用活動に利用するなら、要件を満たす必要があります。
「5日間以上の実施」「就業体験を行う」といったルールを確認してから、インターンシップを企画することが大切です。
10月~12月…秋冬インターンシップ
2023年の10〜12月には、秋冬インターンシップを開催すると良いでしょう。
この時期は夏季休暇と比べて、学生がまとまった時間を取りにくいのが特徴です。
研究や学業に影響がないように、オープンカンパニーやキャリア教育の短期間のプログラムが向いています。
本格的に就活を始める学生が増えるので、自社の広報活動が重要になる時期です。求人サイトへの掲載や会社案内パンフレット作成、就活イベントへの出展申請をするといった準備を進めます。
1月~2月…インターン参加者のフォロー
1月〜2月は大学の試験期間にあたるため、学生は試験勉強に集中する時期です。冬季休暇中といっても新たにインターンシップを実施するのはおすすめできません。
この時期は、過去のインターンシップ生へのフォローを中心に行いましょう。
3月から解禁される広報活動のため、採用サイトやパンフレットの最終確認や面接会場の確保といった事務作業を進めることも重要です。
3月~5月…広報活動解禁
就活ルールに則り、3月に広報活動が解禁されます。3〜5月は、会社説明会や就活イベントが数多く開催される時期です。
この期間にどれだけ多くの学生に自社を知ってもらうかが重要となります。インターンシップ生のフォローと同時並行で広報活動をするので、人事担当者の業務負担が大きくなるでしょう。
人事担当者がキャパオーバーしないように、他部署との協力体制を整えておくことをおすすめします。
6月~9月…選考活動解禁
6〜9月は選考活動が解禁される時期です。選考に進んだ学生を対象に、選考試験や面接を実施します。
この期間は、競合他社や選考対象の学生の動向に注視しましょう。
大手企業に採用されなかった学生が、中小企業への応募を始めたり、部活を引退して遅めの就活を始めたりする学生もいます。
10月~2月…内定式・入社前研修
10月は多くの企業で内定式が開催されるでしょう。内定式後から2月までの期間は入社前研修を実施して、入社後の業務がスムーズに進められるようにサポートしましょう。
入社前研修は、内定者との信頼関係を築くために有効です。
内定後に辞退される可能性を減らせるように、モチベーション維持につながる研修を実施する必要があります。
まとめ
2025年卒からインターンシップ生から採用ができるようになります。学生情報を採用活動に利用する場合は、いくつかの要件を満たす必要があるので注意が必要です。
採用に直結するインターンシップの実施は、企業と学生、双方にとってメリットがあります。
メリットがある反面、デメリットもあるため、自社に導入して問題ないか検討することが大切です。
自社の現状を踏まえて、2025年卒の採用活動に向けて準備を進めてはいかがでしょうか。