高齢化が進む日本で、介護離職を減らすべく政府は法整備を進めてきました。
最新の改正では平成29年10月1日「育児・介護休業法」が施工されたばかりです。
家族の介護をするために取得する「介護休暇」と「介護休業」の違いとは何か。
それぞれの運用ルール・給与制度についてご紹介していきます。
介護休暇とは
病気やケガ、高齢、精神上の障害などによって、家族に介護が必要な場合に取得できる休暇のことを指します。
時間単位の取得も可能であり、直接的な介護のほか、必要な買い物や各種手続きの際も利用ができるのが特徴です。
法律によって守られた権利
仕事と介護を両立できるように規定された「育児休業、介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」によって守られた制度です。
しかし、実際は介護休暇を申請した際に、企業側から拒否されることがあり、介護者は仕事と介護の両立ができず、退職せざるを得ない介護離職が散見されています。
介護による離職者数は年間で10万人、そのうち半数以上が仕事を続けたかったと回答していたことが、平成24年の総務省統計局・厚生労働省の委託調査で分かっています。
介護休暇は法律によって「事業主は介護休暇申請を拒否できない」「介護休暇を取得しても解雇される理由にはならない」と定められており、解雇だけでなく、減給・降格、賞与削減なども同様に禁止されています。
企業からすると、介護休暇による社員の生産性の低下は大きなデメリットであり、介護休暇申請を受け付けてくれないこともありますが、法律によって守られている権利なので、しっかりと活用していきましょう。
介護休暇取得のための条件
仕事と介護の両立を手助けしてくれる介護休暇ですが、取得するためには規定の条件を満たす必要があります。
以下、取得のための条件をご紹介します。
取得できる休暇日数
介護を必要とする対象家族1人に対して、1年で最大5日まで。対象家族が2人以上の場合は10日間の取得が可能です。
つまり、対象家族が3人以上の場合でも10日を超える休暇は取得できません。
また、有給休暇とは別に与えられる休暇であり、休暇の取得は1日単位または半日単位での取得ができます。
介護休暇の対象家族
対象家族とは、事実婚を含む配偶者、実父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹及び孫にあたります。
介護している相手との間柄が上記に当てはまらない場合は、介護休暇の取得はできません。
また、介護休暇に充てられる日は「労働日であった日のみ」であり、もともと休日である日に介護休暇は充てられません。
介護休暇の対象者
・日々雇用を除く労働者(正社員、アルバイト、パート、派遣社員、契約社員も含みます)
労使協定により対象外にできる場合
・入社1年未満の労働者
・申出の日から93日以内に雇用期間が終了する労働者
・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
有期契約労働者の場合、以下要件を満たす必要あり
・入社1年以上
・介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6ヶ月経過する日までに労働契約期間を満了し、更新されていないことが明らかでないこと
介護休業との違い
介護休業と介護休暇は3つの違いがあります。
取得可能休暇日数
要介護状態の対象家族1人に対して、通算93日まで取得ができ、介護休暇と比べ長期の取得が可能ですが、取得中は給与が発生せず、経済面で不安になる場合があります。
休暇中の給付金の有無
金銭的な不安を解消するために、利用できるのが「介護休業給付金制度」です。
介護休業給付金制度で支給される金額は、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」により、算出します。
支給のタイミングは、被保険者が介護休業期間を終了した後のため、給付金をすぐに使うことはできません。
また、介護休業給付金制度を利用するには、条件をクリアする必要があります。
支給対象にならないもの
・65歳以降の介護休業開始
・介護休業開始時点で、介護休業後の離職が決定している
期間限定雇用者が支給されるための条件
・1年以上雇用されている
・休業開始予定日から起算し、93日を超えて引き続き雇用の見込みがある
給付金制度を利用したい場合は、上記のようにさまざまな条件があるため、申請窓口の「ハローワーク」へ問い合わせましょう。
申請方法の違い
介護休暇は口頭で伝えれば取得が可能ですが、介護休業は、休業開始予定日と終了予定日を明らかにし、開始日の2週間前には申請する必要があります。
まとめ
「元気にしているし、大丈夫!」と思っていても、いつ身近な人に介護が必要になるかは誰にも分かりません。
もし会社の戦力となる従業員が介護で休まなくてはいけなくなる時がきても対応できるように、事前に介護のために利用できる制度を学んでおきましょう。
知識がなく、従業員が望んでいない介護離職を選択しなければならなくなった時、知らなかったでは済まない「後悔」が押し寄せます。
そうならないためにも、介護休暇制度の知識を身に付け、上手く活用しながら介護と仕事の両立を目指していきましょう。