「アルムナイ」という言葉はご存じでしょうか。
卒業生やOB・OGなどを指す英単語ですが、近年、人事制度においてもよく使用されています。
出戻り制度とも言われるアルムナイ制度ですが、実は人材不足に悩むこの時代の一つの解決策になり得る制度なのです。
今回は、アルムナイ制度について詳しく解説していきます。
対比としてよく用いられるジョブ・リターン制度との違いについても解説しておりますので、ぜひご覧ください。
アルムナイとは?
アルムナイとは学校の卒業生を意味する英単語です。
そこから派生し、企業の元社員をアルムナイと呼ぶようになりました。
アルムナイ制度とは、簡単に言うと元社員を再び会社に迎え入れる制度です。
出戻り制度とも同義になりますが、アルムナイ制度を設けている会社ではアルムナイたちとの定期的な交流を取ることで、アルムナイを一つの組織化する仕組みを取り入れていることが多いようです。
一昔前までは、退職した会社に再就職するというケースは多くなかったものの、現在では転職も一般化されたこともあり、その中での人材獲得における一つの手法としてアルムナイ制度が用いられています。
アルムナイ制度とジョブ・リターン制度の違い
アルムナイ制度と似たような制度として、ジョブ・リターン制度というものがあります。
ジョブ・リターン制度とは、主に結婚や育児、介護といった私生活の事情による退職からの再就職を指すことが多いです。
それに対してアルムナイ制度は、転職や企業といった仕事上の事情による退職からの再就職を指すことが多いのです。
つまり、アルムナイ制度の方が退職後も別の仕事で活躍しているケースが多いため、優秀な人材の獲得につながりやすいという特徴があります。
アルムナイ制度が注目される背景
では、なぜアルムナイ制度が必要なのでしょうか。
その理由としては、
・採用市場の変化によって人材獲得が困難になった
・多様化した働き方
などが挙げられます。
採用市場の変化によって人材獲得が困難になった
労働人口の減少から売り手市場が続く現在、普通に求人広告を出すだけでは人材を獲得することが難しくなっています。
そんな中で、「新しい人材を確保する」ことから「すでに在籍している優秀な人材を逃さない」という発想が生まれたのです。
多様化した働き方
近年、働き方は多様化しており、テレワークや時短勤務、フリーランスなどその形は様々です。
退職する理由は様々ですが、こういった働き方の相違から退職する人も少なくありません。
しかし、個々人の働き方が変化していく中で、会社としての制度や働き方も変化します。
もしかすると退職後にその人の理想の働き方ができる会社に変わるかもしれません。
アルムナイ制度のように退職後も元社員とつながりを持っておけるということは、そういった変化の際に再就職を提案できる機会を得られるということです。
アルムナイ制度によって得られる効果とは
アルムナイ制度についてご説明してきましたが、制度を取り入れることによってどのような効果があるのでしょうか。
採用コストが削減できる
アルムナイ制度では求人広告や人材紹介会社を利用しないため、大幅にコストを削減することができます。
また、業務やその業界に関する知識もすでにあるため研修やOJTにかかる費用も削減することができます。
適切な時期に適切な人材を採用できる
アルムナイ制度による採用は、元社員が戻りたいときにふらっと戻ってくるものではありません。
つながりを持ち続けて、定期的にコンタクトを取っている中で、必要なタイミングで声をかけることができる点が真の目的です。
そのため、企業が必要と思った時期にその時必要な人材を採用できるということですね。
新たな人材ネットワークが構築できる
アルムナイ制度は採用できることだけではなく、元社員とのつながりを持っていられることがそもそものメリットです。
たとえ再就職してくれなかったとしても、そのつながりによって新しい仕事が生まれるかもしれませんし、奇抜なアイデアが生まれるかもしれません。
また、その人自身が再就職しなかったとしても紹介してもらってリファラル採用ができるかもしれません。
つながっていることで、様々な可能性にもつながるということですね。
企業のイメージダウンを防ぐ
SNSなどを使えば自分の発言を簡単に世の中に広められる時代です。
退職者との関係が悪ければ、悪い評判が広まってしまうかもしれません。
しかし、アルムナイ制度のように良好な関係性を保つことで企業のイメージダウンを防ぐことができます。
それだけでなく、アルムナイ制度によってさまざまな退職者とつながっていることで、企業のイメージが広く知れ渡り、イメージアップにつながる可能性もあるでしょう。
アルムナイ制度を運用する際の方法とポイント
アルムナイ制度のメリットがわかったところで、具体的にどのようにして運用していけばいいのでしょうか。
順を追って説明していきます。
再雇用の条件をしっかりと決める
いつでも戻ってこられる体制を作ることは、必ずしも退職前と同じ条件で再雇用するということではありません。
その時の会社の状況によっては給与の上下や福利厚生の内容も変わるかもしれません。
条件については再雇用の際に再度検討する形が一番望ましいでしょう。
また、再雇用までの間に新しいスキルや経験を身に付けた場合は条件が良くなる可能性も提示してあげることで、アルムナイのモチベーションも上がるかもしれません。
再雇用のための環境を整える
以前に働いたことのある職場でも、環境が変わっていることはよくあります。
当時はいなかった社員がいるかもしれませんし、組織の体制も変わっているかもしれません。
再雇用だからといって受け入れるための環境づくりを怠らないようにしましょう。
現場の社員とのコミュニケーションを取れる機会を作ると、スムーズに業務に臨めますよ。
アルムナイとの距離感を考える
アルムナイとどのように関係を続けていくのかをしっかりと決めておくことが大事です。
SNSでのつながりにするのか、定期的に集まって情報交換の場を設けるのか、会員制のサービスにするのかなど、そのつながり方も様々です。
最近ではアルムナイに特化したサービスもあるので、利用してみるのもいいかもしれませんね。
アルムナイ制度を導入している企業例
アルムナイ制度の運用方法がわかりましたね。
では最後に、実際に導入している企業の例についてみていきましょう。
アクセンチュア
アクセンチュアでは、「アクセンチュア・アルムナイ・ネットワークサイト」というアルムナイ専用のサイトがあります。
「アルムナイ・プログラム」を利用することで、他のアルムナイともコミュニケーションを取ることができます。
このサイトのメンバーになることで、求人情報が見られるだけでなく、イベントへの招待やサービスの値引きといった特典もあるのです。
P&G
P&GではP&Gを卒業した人専用のページが用意されています。
求人情報やイベントの案内などが掲載されており、現職の役員がメッセージを送ることもあるようです。
サイボウズ
サイボウズでは、退職したエンジニアの人たちを集めたイベントの開催実績があります。
エンジニアの採用は競争が激しく、人材不足に悩んでいる企業も多いです。
自社での勤務歴があり、社外でも経験を積んだエンジニアの再雇用は非常に価値のある採用といえるでしょう。
アルムナイ制度で優秀な人材とつながろう!
求人広告を出したり人材紹介会社を利用したりするだけが採用方法ではありません。
再雇用した社員は会社の業務や風土も理解しているため、即戦力にもなり得ます。
人手不足で悩んでいる企業様はぜひ試してみてはいかがでしょうか。