グローバル人材と言われるとどんな人物をイメージしますか。
「語学力」や「高学歴」…なんだか特別なスキルやキャリアを持っている人物のように聞こえます。
実際にグローバル人材とはどんな人材なのでしょうか。
今回はグローバル人材の定義からどんな能力を持ち、企業はどのような育成方法、環境を作るべきなのか見ていきましょう。
グローバル人材の定義
2013年6月に日本政府が閣議決定にて「日本人としてのアイデンティティや日本の文化に対する深い理解を前提として、豊かな語学力・コミュニケーション能力、主体性・積極性、異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できる人材」と定義しています。
加えてジャーナリスト池上彰氏は「世界に通用する人間であると同時に、日本の良さも自覚した上で働くことのできる人材」と定義しています。
では企業視点から見た場合はどのような人物と定義できるでしょうか。
「自社事業の海外進出やグローバル戦略を成功へと導くことのできる人材」「国外でも活躍できる人材」のことを指しています。
つまりビジネスシーンにおいて「海外市場特有の様々な事情や文化的背景を全面的に受け入れ、自社と取引相手の両方にとってベストな条件を見極めてお互いに良好な関係を築き上げ、成果を生み出せる人材」と言えるでしょう。
なぜ、必要なのか?
各新興国の急成長に伴い日本企業の海外進出や市場変化による課題など、グローバル化、グローバル人材育成の必要性が叫ばれる中、日本のグローバル競争力は全体的に低下しています。
その理由の一つに日本人の語学力の低さがあげられます。
さらに一般社団法人日本能率協会が2016年11月に公開した『日本企業の経営課題2016』の調査結果で調査対象となった211社は人数的には45.5%が一定の人材の充足度を感じているが、質的には20.8%しか充足度を感じていない。
また当面する経営課題の10年間の推移では人材強化だけ10年間大きな変動なく、常に問題視され続けています。
上記のような結果から国際市場でも通用するグローバル人材の不足により日本企業の海外進出が遅れているのです。
日本のグローバル競争力の向上、日本企業の海外へむけた市場拡大や飛躍的成長のためには、グローバル人材は必要不可欠な存在なのです。
グローバル人材に求められる能力
総務省の「グローバル人材育成の推進に関する政策評価書」によると、求められる能力は大きく分けて以下の3つです。
語学力・コミュニケーション能力
相互理解を深め、人間関係の構築や維持のために必要不可欠な能力です。
異文化対応力
日常習慣や一般常識、マナー、ルールなど自分自身が慣れ親しんでいるものとは性質が大きく異なる異文化を正しく把握するためには、異文化の正しい理解と日本文化や所属する組織の文化に対する理解が必要です。
さらにその差異を受け入れる柔軟で強い心が必要となります。
主体性・積極性
多くのライバルが競い合うグローバル市場で勝ち抜くため、誰よりも早く一歩目を踏み出す主体性や積極性は欠かせません。
失敗を恐れずに経験と成長を重ねることのできる主体性や積極性は組織戦略の成功率を飛躍的に高め、さらに強い組織への成長に繋がります。
この能力は国内外問わず共通して必要な能力であり、国内でのキャリアの中で十分に鍛えることができます。
「語学力・コミュニケーション能力」と「異文化対応力」はグローバル環境下で特に求められる能力ですが、良質な経験や適切な学習方法があれば誰でも身につけることが可能です。
また本人の努力と適切なサポートを行うことで、レベルを引き上げることも可能です。
このようにグローバル人材とは決して特別な人材というわけではなく、適切なサポートと本人の努力によって誰もがグローバル人材として活躍できるということです。
では、誰もがなれるグローバル人材を育成するためにはどうしたら良いのでしょうか。
グローバル人材育成のコツ
まず選抜する人材についてですが、「語学力・コミュニケーション能力」「異文化対応力」「主体性・積極性」の中でも「異文化対応力」は個性や性格といった生まれつき持ち合わせている先天的要素です。
先天的要素は人材教育による影響をほとんど受けることがないため、採用時や選抜する際に見極めることが重要です。
対して後天的要素は知識や経験などの外部影響による成長を期待することができるので、「語学力・コミュニケーション能力」「主体性・積極性」については不足要素の充填に必要な育成手法・環境を把握し導入することが重要です。
育成環境の整備の一環として組織風土の再構築も重要な要素となります。
組織内において共有認識として扱われている判断基準や行動規律、価値観にグローバル人材に求める要素「語学力・コミュニケーション能力」「異文化対応力」「主体性・積極性」を埋め込むことにより採用や育成に有利な組織風土を構築することができます。
求職者にとっても採用後の職場環境をイメージするための重要な指標となるので、今後グローバル人材の採用に力を入れていきたいという企業にとっても組織風土の見直しや再構築は一つのポイントとなるでしょう。
まとめ
日本政府としてもグローバル人材の育成が叫ばれているように、海外進出や海外市場の拡大を考える企業にとってグローバル人材は必要不可欠な存在です。
確かにグローバル人材としての全てのスキルを兼ね備えた人材の発掘は厳しいですが、実際は育成環境やサポート体制、本人の努力さえあれば今からでも海外市場で通用するグローバル人材を育てることができるのです。
『語学力・コミュニケーション能力』、『主体性・積極性』をはじめとする要素に関する育成やグローバル人材の採用に継続的に取り組むことで、グローバル時代を生き抜ける組織・企業となるでしょう。