自社が採用にかけている費用・コストをちゃんと把握していますか。
「採用には費用がかかって当然だ」という考えで、自社の採用費用を把握できていないと、余分なコストがかかっていても気づけません。
とはいえ、この空前の売り手市場の中、そもそも採用に苦戦していてコスト削減どころではないという企業も多いと思います。
しかし、ちょっとした工夫をするだけで採用コストを削減できるかもしれません。
そのためにも、まずは自社の採用にかかっている費用・コストをしっかりと把握することが重要になります。
今回は採用コストの内訳や、平均の採用単価、採用コストの削減方法について解説していきます。
採用コストとは?採用コストには何が含まれているのか
自社の採用コストを把握するためにはまず、採用コストについての理解を深める必要があります。
採用コストとは、企業が人材を採用するためにかかる費用全体を指し、採用を行うにあたって発生するコストすべてが含まれます。
景気によって労働者の需給バランスは変動するため、それに沿って発生する採用コストも変わってきます。
採用が難しい時期ほど採用に掛かる手間や時間が増えるため、採用コストも高くなるという仕組みですね。
令和元年時(2019年6月)の採用市場を見ると、有効求人倍率*は1.63倍となり、圧倒的な売り手市場*であることがわかります。
これにより企業間の採用競争は激しさを増すため採用難度も上がり、それに比例するように採用コストも高くなってしまうのです。
有効求人倍率:有効求人数(仕事の数)を有効求職者数(仕事をしたい人の数)で割った数値のこと。「1」より大きければ売り手市場(求職者優位)で「1」より小さければ買い手市場(採用企業優位)となる。
売り手市場:採用をしたいと思っている企業の数(需要量)が、求職者の数(供給量)を上回っている状態のこと。
採用活動で発生するコストには、求人広告費や人事担当の人件費などさまざまなものがありますが、これらは大きく「内部コスト」と「外部コスト」の2種類に分けることができます。
内部コスト
内部コストとは、面接や採用など採用業務にかかる費用のことです。
大半は人件費が占めていますが、その項目は多岐にわたります。
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面接官や人事担当者の人件費
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紹介(リファラル採用)のインセンティブ
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応募者の交通費
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内定者懇親会などの交際費
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内定者の引っ越し費用
以上が代表的な項目となりますが、このコストのほとんどを“人件費”が占めています。
内部コストを把握するにはまず”誰が”、”何時間”、採用業務に費やしているのかを調べる必要があるでしょう。
また、内部コストが高くなる要因としては、応募者が来なかったり、内定辞退者が多く出て一から応募者を集め直したりなど、採用活動が長引いてしまうことが挙げられます。
内部コストを削減するには、採用活動にかける物理的な時間や手間を減らす施策を考える必要がありますね。
外部コスト
外部コストとは、採用活動において外部に支払う費用のことです。
もっとも代表的なのが求人広告費です。
その他に挙げられる項目としては以下のようなものがあります。
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求人広告費
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採用代行サービスの利用料
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会社案内の制作費
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会社説明化の会場費
外部コストは、内部コストと比較して各費用の金額が大きくなりやすいです。
そのため、採用コストの削減に取り組む際には外部コストから見直すと削減効果も大きくなりやすいでしょう。
しかし、外部に依頼している業務は採用の肝となるものも多いため、削減する場合は慎重な判断が必要です。
安易に削減するのではなく、採用活動を成功させながら採用コストも削減できる方法を検討するようにしましょう。
「新卒」と「中途」それぞれの採用単価はいくら?
自社の採用コストの現状を知るためには、一人あたりの採用コスト「採用単価」でみるとわかりやすいです。
採用単価は新卒採用と中途採用で大きく異なります。
まずは新卒・中途採用それぞれの平均採用単価を見ていきましょう。
【新卒・中途の平均採用単価】
? | 全体 | 300人未満 | 300~999人 | 1,000人以上 |
---|---|---|---|---|
新卒の平均採用単価 | 49.9万円 | 51.7万円 | 42.5万円 | 53.7万円 |
中途の平均採用単価 | 48.3万円 | 40.9万円 | 64.4万円 | 73.6万円 |
参考:『マイナビ』2017年 マイナビ企業人材ニーズ調査
全体の結果では新卒と中途の平均採用単価には大きな差は見られないのに対し、企業規模ごとでみると差が出ていることがわかります。
この理由としては下記が考えられます。
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採用予算の違い
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新卒採用における採用人数の違い
まず、規模の大きい企業ほど採用予算を多く確保しているケースが多いです。
そのため、企業規模が大きさに比例して採用単価も高くなる傾向にあります。
次に新卒採用ですが、日本では「新卒一括採用」という独自の雇用慣行があるため、在学中の学生へ一斉に求人を出して、卒業後すぐに一斉に入社します。
そのため、一回に採用する人数が多いほど一人当たりのコストは下がるのです。
当然、企業規模が大きいほど採用する人数も増えるため、採用単価が下がると予想できますね。
これらの要因から、全体でみると採用単価に差はないように見えていても、企業規模ごとにみると差が出ているのです。
その他にも、特に中途採用において、人材に求めるスキルや能力によってもかかる採用コストは変わってくるため、上記の数字はあくまで参考程度としてくださいね。
採用コストの削減方法3つ
自社の採用コストが他と比較してどうなのかある程度目途はついたと思います。
では、そこからどのようにコストを削減していけばいいのかをご紹介していきます。
ミスマッチを防止する
採用コストがかさむ理由として多いのが、”早期退職による採用のやり直し”です。
せっかく採用に至ってもすぐに退職されてしまっては、また1から採用活動を始めることになり、多くの時間とお金を費やすことになってしまいます。
採用した人材の早期退職は「抱いていたイメージと違った」など、入社前と入社後で感じるミスマッチによって起こることが多いです。
つまり、このミスマッチを防ぐことができれば、早期退職が減り結果採用コストを抑えることにつながります。
ミスマッチを防ぐには、まず下記の2点を徹底しましょう。
ポジティブなことだけではなくネガティブなこともしっかり伝える
業務ついてのポジティブな部分だけしか伝えていないとミスマッチは起きやすくなります。
例えば、「責任ある仕事をお任せしたい」ことを伝えたい場合は、「責任ある仕事をお任せしたいと思いますが、その分残業時間が増えることが予想されます。」というように、ポジティブな面とネガティブ面の双方を伝えることで、候補者は働くイメージが鮮明になり入社後に不満を感じにくくなります。
スキルよりも仕事のやり方について深掘りする
面接では、候補者がどのような仕事のやり方をしてきたか、どんな環境だと仕事がしやすいかといったことを質問することも大切です。
つい、”何ができるか”といった話をしたくなりますが、高いスキルやパフォーマンスも、仕事のやり方や環境が合わなければ十分に発揮できないかもしれません。
それよりも、自社の風土や仕事のやり方について話をしつつ、候補者の仕事への取り組み方や、これまでの仕事環境の話を聞くようにすると、自社で働いてもらえそうかが判断しやすくなり、候補者もこの会社でどう働くのかがイメージがしやすくなるためミスマッチが起きづらくなります。
内定者フォローを怠らない
内定辞退が増えることも採用コストが高くなる要因の一つです。
内定を出したら、メールやSNSなどで適宜フォローを入れることも忘れないようにしましょう。
入社までに企業からまったく連絡がないと候補者が不安になり、イメージも悪くなって内定辞退へとつながってしまうことがあります。
特に現在は空前の売り手市場のため、複数社から内定が出ている求職者も少なくありません。
他社との採用戦争に負けないためにも、求職者とのコミュニケーションは途切れないようにしましょう。
求人広告を見直す
新卒採用・中途採用にかかわらず、採用費の大部分を占めるのが「求人広告費」です。
つまり、求人広告の運用次第では、採用コストを大きく削減できる可能性があります。
求人広告を見直すときのポイントは主に以下の5点です。
採用要件を明確化する
まずは、採用要件を明確にする必要があります。
どんな人物が採用したいのか、それは何人くらい必要でいつまでに採用したいのかなどの詳細が明確になっていないと、求人メディアの選定も適切にできず、広告内容もターゲットに響かないものになってしまいます。
また、その内容で応募が来たとしても自社の求めている人材ではない可能性が高くなってしまいます。
訴求ポイントは詰め込みすぎない
訴求ポイントは、2つくらいまで絞るのがベストです。
多くを伝えるというよりは、ターゲットが欲しい情報(自分のやりたい仕事ができるか、業績はどうか、待遇はどうかなど)を的確に伝えるとよいでしょう。
詰め込みすぎると分かりづらい内容になってしまうため注意が必要です。
写真にも工夫をする
写真は求職者が社内の雰囲気を初めて知るものです。ここで悪い印象を与えてしまっては、どれだけ求人内容に魅力があっても応募したくなくなってしまうかもしれません。
明るさは適切か(暗くないか)、写っている社員は笑顔か、社内が汚れた状態で写ってしまっていないかなど、より良い雰囲気が伝わるように写真にも気を使いましょう。
仕事内容が具体的にイメージできる内容にする
仕事内容は求職者の興味関心が強い情報のひとつです。具体的に働くイメージを持つことができれば応募率も上がります。
例えば営業を募集する場合、「〇〇の新規営業」と記載するだけでなく、どのような商品を誰に、何のために、どのような手法を使って営業するかなど伝えられる情報は出来るだけ具体的に書くようにしましょう。
自社の採用要件に適した求人メディアを選択する
「安いから」や「ずっと使っているから」といった理由で求人メディアを決めていませんか。
求人メディアには、”若手採用向け”、”女性採用向け”、”経験者採用向け”など、それぞれのメディアに特徴があります。
採用ターゲットの層に適した求人メディアを選択することで採用効果も大きく変わってきます。
採用手法を見直す
売り手市場が続く中、採用難を乗り切るための新しい採用手法がたくさん出てきています。
まだ従来の求人広告を使った採用が主流ではありますが、並行して新しい採用手法も取り入れていくことでより採用効果を高められるかもしれません。
採用効果が上がったことでコスト削減につながった例もありますので、いくつかご紹介していきます。
リファラル採用
リファラル採用とは、社員から候補者を紹介してもらって採用する手法です。
紹介してもらった候補者が採用できた場合にインセンティブを支払うといった流れが一般的です。
リファラル採用で社員に支払うインセンティブは一人につき3~5万円が相場です。
その他は内部コストがかかるだけなので、求人広告や人材紹介の採用単価がおおよそ50万円ほどだと考えると、非常に安価で採用できることがわかります。
いつでも紹介できる人がいるとは限らないため、急ぎの採用に向かないなどのデメリットはありますが、採用コストを削減するための手法の一つとしては有効だといえるでしょう。
また、会社の風土をよく知った社員が自社に合った人材を紹介してくれるため、採用のミスマッチも発生しづらいため、その点でもコスト削減につながるといえますね。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングとは、従来のような待つ採用手法ではなく、人材バンクやSNSなどを活用して”企業が自ら候補者を探し出し、直接アプローチを行う”採用手法です。
具体的な手法としては、ダイレクトリクルーティングサービスを活用する方法や、FacebookやTwitterなどのSNSを活用する方法が一般的です。
ダイレクトリクルーティングでは、人材データの利用料金や採用成功時に支払う成功型報酬の費用は掛かるものの、その費用は求人広告費の3分の1程度と言われているため、うまく活用することで採用コストの削減が期待できます。
また、ダイレクトリクルーティングでは採用したい人物へ企業から直接アプローチをするため、自社の採用要件にフィットした人材を採用しやすく、採用のミスマッチを減らすことができる点でもコスト削減につながるといえるでしょう。
企業の工夫で採用コストは削減できます!
採用コストで悩んでいる企業様は非常に多いと思います。また、他社ではどのくらい採用費用がかかっているのか気になっていた方もいたのではないでしょうか。
本記事で自社の採用費用が他と比べてどうなのかがある程度わかったかと思います。少しでも高いと感じたら、ぜひ今回ご紹介したコスト削減方法をぜひ実践してみてください。
適切な採用活動をして、採用コストを抑えながら採用成功を目指しましょう。