人事評価や人事考課のプロセスの中でも重要な役割を持つ「フィードバック面談」ですが、多くの企業で「結果と処遇を伝えるだけの場」になっているのが現状です。
「実際にフィードバック面談を実施したけど、あまりいい効果が出なかった」「そもそもフィードバック面談は実施していない」という方も多いのではないでしょうか。
しかし、フィードバック面談の意図を理解した上で正しく進めれば誰でも効果を出すことができます。
今回は、フィードバック面談の効果や進め方についてご紹介します。
フィードバック面談とは?
そもそもフィードバック(feedback)とは、もともとITや工学の分野で使われていた言葉で「帰還」と訳されます。
意味としては、出力と入力があるシステムにおいて出力された結果から制御・改善するために入力側に戻すことをいいます。
ここから転じて、「結果を原因と結び付けて伝え返し、調整する」という意味で使われるようになりました。
ビジネス上では主に上司から部下に対して行われ、何かしらの結果に対してその良し悪しや悪かった場合の課題を共有するのです。
フィードバック面談とは、特に人事評価や人事考課の中で上司と部下が評価の結果やその結果から生まれた課題を共有し、今後の解決策を話し合う面談を指します。
フィードバック面談の目的と重要性
フィードバック面談には、主に下記のような目的があります。
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評価への納得度を高める
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抱えている課題を把握し、その解決策を話し合う
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業務へのモチベーションを上げる
しかし、フィードバック面談への理解不足で本来の役割を果たせていないことが多いです。
フィードバック面談を、「上司が部下に評価結果を伝える場」だと思っている方が多いですが、本来は「結果を伝えた上で今後どのように行動するべきかを話し合う場」なのです。
評価に対しての納得できる説明がないと、部下は「評価基準」が分からず、結果に一喜一憂するだけで終わってしまいます。
評価の良し悪しに関わらず、各項目に対する評価結果とその理由を具体的な事実と共に伝え、どのような行動が評価に結びつくのか説明することが大事です。
根拠を説明すれば納得しやすくなりますし、評価基準が明確になるので自ずと「評価に値する行動」を取るようになり、会社への貢献度がアップするのです。
また、フィードバック面談は上司・部下の双方に教育としての側面を持っています。
業務行動に対する評価を上司から直接伝えることで、部下は客観的に問題と向き合い、改善に向けた行動を選択するようになるのです。
さらに、フィードバック面談では部下との話し方や本音を引き出す力などが求められるため、上司としてのマネジメント力を向上させる役割もあります。
つまり、フィードバック面談は上司から部下への評価結果・課題の共有の面があると同時に、上司のマネジメント能力や部下の問題解決能力を向上させる教育的な面も兼ね備えているため、人事評価や人事考課において非常に重要なプロセスなのです。
フィードバック面談で得られる効果
フィードバック面談の目的や重要性について説明しましたが、具体的にどのような効果を得られるのか見ていきましょう。
目標達成に繋がる
目標に対する現在の状況を客観的に把握でき、課題解決への糸口を掴むきっかけになります。
目標とアクションにズレが出ていれば軌道修正を行えるため、目標達成に向けた施策を講じられるのです。
優秀な人材を育成できる
適切なフィードバックは、課題と向き合い内省を促すことができるため、課題や問題の解決方法に気づくことができます。
また、内省する習慣が身につけば自律性が高まり、効率的かつ生産性の高い施策を選択する優秀な人材が育成できるようになります。
モチベーションがアップする
フィードバック面談はただ評価を伝えるだけの場ではありません。
アクションに対する評価とその理由、「どういう行動が評価されるか」という基準を説明することでモチベーションがアップし、具体的なアクションに結びつきます。
また、今ある課題のフィードバックを受けることで解決のヒントを掴めば、やる気もアップしますよ。
フィードバックの際は、部下の気持ちを汲み取りながら効果的に話をしていくことが重要です。
パフォーマンスが向上する
フィードバックは客観的に状況を把握できるため、効果的かつ生産的な行動を取れるようになります。
効果的だった行動は継続または強化し、そうでないものは改善または止めることで成果が上がっていきますよね。
これを繰り返し行うことで精度が高まり、パフォーマンスが向上するのです。
フィードバック面談の進め方
では具体的にどのように進めればいいのでしょうか。
ここでは、フィードバック面談の進め方をご紹介します。
事前準備
人事考課は一般的に下記の流れで進んでいきます。
フィードバック面談を行う上司は、最終評価まで記載された人事考課シートを事前に確認し、本人にきちんと説明できるよう準備しておかなくてはなりません。
最終評価をもとにフィードバックを行うため、評価修正に納得できない場合は説明を聞いておく必要があります。
曖昧な説明では、部下の信頼を失うことになり兼ねないので注意が必要です。
また、人事考課結果を確認した上で部下を育成する計画を立て、話す内容を整理しましょう。
面談実施
1.アイスブレイク
上司との面談は緊張するものです。
いきなり本題から入るのではなく、ちょっとした雑談から始めて緊張を解しましょう。
頃合いを見て面談の趣旨や進め方など簡単に説明してから、面談をスタートさせます。
アイスブレイクで使えるネタについては「アイスブレイクのネタがない!アイスブレイクに有効なゲーム集」をご覧ください。
2.自己評価のヒアリング
人事考課シートの情報をもとに自己評価の結果と理由、今期の活動全般について部下からヒアリングを行います。
この時、言いたいことがあっても途中で遮らず、とにかく最後まで部下の話を聞きましょう。
また、内容だけでなく、表情や声のトーンにも注目して部下の感情を読み取ることも大切です。
3.人事考課(人事評価)の結果説明
人事考課(人事評価)の結果を説明します。
自己評価と最終評価にギャップがある時は、「なぜその評価に至ったか」理由を丁寧に説明し、評価に対する納得感を高めましょう。
この時、相手の反応を見て、納得できているか確認しながら説明していくことが大切です。
また、人事考課結果について説明する際は、プラスの評価から説明するとフィードバックを受け入れやすくなりますよ。
評価内容に対する部下の意見をヒアリング
評価結果に対する部下の意見を聞きます。
自己評価よりも低い評価をされた場合、すぐに納得できる人はなかなかいないでしょう。
不満を感じていることがほとんどなので、部下の不満をヒアリングして解消することが重要です。
ここで威圧的な態度や頭ごなしの否定をすると、部下からの信頼を失うことになるので、反論せずに一旦受け止めることが重要です。
その上で、評価基準や具体的な事実とともに合理的な理由を説明していきます。
目標設定
フィードバックをもとに、部下の意向を確認した上で目標設定を行います。
課題や目標を本人に考えさせ、アドバイスも交えながら進めましょう。
この時重要となるのは、設定する目標とそれを達成するまでの期間や方法を具体的にすることです。
また、達成されたらどの程度人事考課に影響があるかという点を伝えるとモチベーションアップにもつながりますよ。
フィードバック面談を成功させるコツ
フィードバック面談はさまざまな効果を期待できますが、叱責や十分な説明がなされていないと効果が得られません。
ここでは、フィードバック面談を成功させるコツをご紹介します。
評価に対する明確な根拠を伝える
人事考課で行われるフィードバック面談は、本人の納得感を高めることが重要です。
最終評価の結果をただ伝えるのではなく、評価基準や事実を交えて具体的に説明することで納得しやすくなります。
感情的にならない
適切なフィードバックは上司と部下が成果や課題を共有し、信頼関係を構築した上で今後の目標を設定していくものです。
しかし、フィードバックへの理解不足により感情的に話を進めてしまい、上手く機能していないケースが多くあります。
叱責や部下の話を頭ごなしに否定するなど感情的にならず、コミュケーションを取りながら進めていくことが大切です。
「○○だからダメなんだ」などの否定的言葉はモチベーションを下げてしまう原因になるため言わないよう注意しましょう。
普段からコミュニケーションを取る
フィードバック面談を成功させるには可能な限り本音で話せる環境である必要があります。
そのためにも日頃から部下をよく観察し、コミュニケーションを取って信頼関係を構築しましょう。
ランチに誘うなど業務外でもコミュニケーションを取ることで、より信頼関係を築きやすくなりますよ。
フィードバック面談は上司・部下それぞれの成長を促すためにも非常に重要
フィードバック面談を効果的に進められると、社員の納得度も上がり会社への不満が減るだけでなく、上司・部下双方の人材育成ができるため、会社として大きな利益を得ることができます。
最大限効果を得るためにも、まずはフィードバック面談の意図と進め方を理解することが大切です。
フィードバック面談を成功させ、今後の人事評価・人事考課に活かしてみてくださいね。