部下や後輩の成長のためには、時に間違いを指摘して叱り、改善へ導くことも必要です。
しかし、「叱ることでやる気を失ってしまう」「関係がこじれてしまう」というリスクもあり、うまく叱れない、叱り方がわからないという方も多いと思います。
そんな方のために、上司がするべき部下や後輩への正しい『叱り方』について解説していきます。
叱ること自体は悪いことではない
部下や後輩を指導する立場にいる方々の中には、「指導」や「注意」といった行為にマイナスイメージを抱く方もいると思います。
誰しも叱られて気持ちいいとは思わないし、落ち込む気持ちもわかるから、叱ることにわずらさしさや抵抗を感じてしまうのは自然なことです。
ですが、叱らなければならない状況で部下や後輩の機嫌をうかがい、自分の感情を押し殺してしまうと、「この上司は何をしても叱らない」と思われかねません。
さらに、あなたは言いたいことを言えず、ストレスを抱えてしまいます。
ですので、叱ること自体は決して悪いことではありません。
但し、具体的な理由を述べず感情に任せて頭ごなしに叱ってしまうのは良くありません。
いきなり「ちょっと来て」と呼ばれて、何の説明もなく感情のまま叱られたら、「いきなりなんだよ!」と反発の感情を抱いてしまいますよね。
だからこそ指摘をする前には、
「なぜ叱る必要があるのか」
「自分の個人的な感情だけで叱ろうとしていないか」
など、一度自分の行動を見つめ直すことを心がけるといいでしょう。
自分を客観視することで、感情に任せて叱ることを避けられるだけでなく、優しい言葉をかけやすくなるというメリットも生まれます。
「叱る」と「怒る」の違い
「叱る」という行為は相手本位であるのに対し、「怒る」という行為は自分本位です。
例えば、部下や後輩がミスをした際に、
「なぜしっかりとチェックしなかったのか」
「こういうやり方をしていればミスがでなかったのではないか」
というように、その部下や後輩が今後同じミスを繰り返さないために注意・指摘をする行為は、あくまで自分の感情ではなく、部下や後輩の成長を促すためのものであるため、これは叱っているといえるでしょう。
反対に、部下や後輩がミスをした際に、
「こんなミスをされたら俺の評価が下がってしまう」
「お前のせいで仕事が増えたじゃないか」
というように、自分への影響に対して文句を言うような内容は自分本位であるため怒っているといえるでしょう。
上司や部下がともに成長していくために必要なのは「怒る」ことではなく「叱る」ことです。
この前提が間違ってしまうと、部下や後輩から反感を買ってしまうかもしれません。
叱る際は、しっかりと「納得」できる内容を伝える
前項で「怒る」のではなく「叱る」ことが大事であることを説明しましたが、叱る内容も重要です。
いかに相手のことを考えた叱り方をしていても、内容がしっかりと伝わらなければ部下や後輩の心には響きません。
叱る際は、相手が「なるほど」と思えるような納得できる内容で叱ることを意識しましょう。
そのためにも、まずは部下や後輩の話を聞くことが大事です。
自分の理想論ばかり語っていては、意味がありません。
部下や後輩の意見を聞き、それに対して今後どうするべきか、上司としての意見やアドバイスをすると、部下や後輩も自分たちで間違いに気づき、今後の成長にもつながるでしょう。
「優しい言葉」に「注意したい内容」をはさむ
次は、心理テクニックを使った叱り方です。
心理学の分野には「初頭効果」と「親近効果」という言葉があります。
わかりやすく言うと、前者が「最初の印象が大事」ということで、後者が「一番最後が最も大事」ということ。
これらの言葉をまとめると、「人の記憶に残りやすいのは物事の最初か最後」だと言うことができます。
後輩の指導にもこの考え方は応用できます。
印象に残りやすい最初と最後に「ここは頑張ってるよね」「期待してるよ」という褒める言葉、優しい言葉を持ってくることで、「自分を想ってくれている」と感じてもらいやすくなります。
その間に注意したい話題をはさみこむのがベストですが、「もっと〇〇をこうしてよ」と言うよりも、「ここをもっとこうしたら完璧だね」というように、肯定につながる内容にすると、より素直に受け入れてもらえるでしょう。
相手のことを想って叱ることができれば、部下や後輩はもちろん、同僚や上司の信頼を得ることにつながります。
後輩もあなたからの指摘を素直に受け入れることができるようになるので、双方にとって大きなメリットがあるといえるでしょう。
ミスを繰り返してしまう部下や後輩への指導
丁寧な指導を心がけても、なかなか仕事内容が身につかず、ミスを繰り返してしまう後輩に「何度同じことをすれば気が済むんだ」とイライラしてしまうことはありませんか?
時間をかけて教えていく必要はあるかもしれませんが、やはりここでも指摘の仕方を工夫する必要があるでしょう。
はじめに実践すべきなのは、「ミスの原因を探ること」です。
ミスが発生する箇所に至るまでの流れを最初から振り返り、何を考え、どう行動した結果、ミスが起きたのかを検証していきましょう。
検証ができたら、今後ミスをしないようにするにはどうすればいいかを一緒に考えてあげてください。
一緒に考えることで、後輩はあなたが自分に関心を持って接してくれていると感じることができ、ミスを改善しようというモチベーションを持ちやすくなります。
そして、改善できたらしっかり褒めることも大事なポイントです。
このサイクルを繰り返すことで、部下は成長を実感しつつ取り組んでいけるため、モチベーションを保ちながらも成長していけるのです。
「わからなかった昔」を思い返してみる
今は様々な仕事をこなし、後輩を指導する立場にいるあなたも、新入社員だった頃があったと思います。
「自分は最初から完璧にできた!」という方も、ぜひ入社したての自分を思い返してみてください。
わからなかったこと、ミスをしたことが思い出され、仕事で失敗してしまう部下や後輩の気持ちに近づくことができたのではないでしょうか。
指導する上で大切なのは失敗してしまう人の視点で考え、親身になることです。
「自分もこういうミスしたことがあるよ」とその失敗に寄り添えば、改善点を指摘しつつ部下や後輩との距離を縮めることも可能になります。
部下や後輩にとってあなたは指導を行う立場の人間であり、成長する上で重要なモデルでもあるのです。
あなたがどんなところでつまづき、改善していったかを示してあげることで、部下や後輩の成長だけでなく、あなた自身も成長することができるはずです。
「初心忘るべからず」ですね。
正しい叱り方を覚えて、上司・部下ともに成長しよう!
多くの方が部下や後輩の指導に悩みながらも、様々な叱り方を模索し、後輩に成長への近道を示していることと思います。
後輩の性格や志向は十人十色なので、接し方も人によって変えていく必要はありますが、どんなときでも余裕を持って、懐の広さを見せられる上司でありたいですね。
せっかく後輩のことを想って注意をしても、反発されては元も子もありません。
ぜひこの機会に上手な叱り方を身につけて、部下や後輩に親しまれる上司を目指していただければと思います。