年々、禁煙に関しての意識が高まり、社内分煙を徹底するだけでなく、全面禁煙を実施する企業も増えてきました。
今回は、社内での喫煙に対する意識やトレンドなどをご紹介します。
厚生労働省の求めるガイドライン
職場における喫煙対策は、平成8年に「職場における喫煙対策のためのガイドライン」の策定により、一定の成果が得ることができました。
平成15年には新ガイドラインが策定され、受動喫煙防止対策の充実が推し進められています。
そのガイドラインの一部を紹介します。
基本的な考え方
1.禁煙対策は組織全体で取り組み、全員参加の下で確実に推進すること
2.ガイドラインに沿いつつ、事業所の実態に応じて喫煙対策に積極的に取り組むこと
3.適切な喫煙対策の方法には、「全面禁煙」と「空間分煙」があり、本ガイドラインは空間分煙を中心に対策を講ずる場合を想定したものであること
ガイドラインでは、社内全体で禁煙対策を推し進めるという意識のことももちろんですが、社内での喫煙についても記載されています。
喫煙室または喫煙コーナーの設置が義務付けられ、非喫煙場所と喫煙場所の境界を行き来する気流の風速を0.2m/s以上にしなければならないなど、細かく決められています。
世の中のトレンドは?
実際に禁煙対策に対する世の中の企業の傾向はどうなっているのでしょうか。
帝国データバンクは2017年に「企業における喫煙に関する意識調査」を公表しました。
適切な換気がされている、または屋外に喫煙場所を設けている「完全分煙」が56.2%、「全面禁煙」が22.1%でした。
2009年に厚労省が調査した時には「完全分煙」が27.9%、「全面禁煙」が18.4%だったのを考慮すると、禁煙・喫煙に関する取り組みはここ10年程度で急速に進んでいることが分かります。
半世紀前は50%近かった喫煙者が、たばこに対する規制が強まったのも背景に2017年には18%まで減りました。
しかし、「ストレス発散」「上司との付き合い」などを理由に辞められない喫煙者が多いことも事実です。
政府は2020年までに「受動喫煙のない職場」の実現を見据えており、企業は「完全分煙」や「完全禁煙」により力を入れていくと考えられています。
喫煙スペースを設置するメリット・デメリット
禁煙ブームが進み、ある程度喫煙ルールは整備されましたが、全面禁煙にまで踏み切っている企業は全体の2割程度に留まっています。
会社によって様々な事情があるかと思いますが、ここで喫煙所を設置するメリット・デメリットを見ていきましょう。
喫煙所を設置するメリット
・社内の人たちと部署の垣根を超えたコミュニケーションが取れる
・たばこの話が気軽にできる
・喫煙所を設けることで臭いを拡散させない
喫煙所を設置するデメリット
・喫煙所の設置や維持に費用がかかる
・清掃の手間がかかる
・細かい休憩が増えるので、休憩時間が吸わない人に比べて長くなる
全面禁煙を実施する企業の紹介
全面禁煙をしたいが実施することで喫煙者から不満が起きるのではないかと悩む総務・人事の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここで、全面禁煙を実施する企業を例に出し、導入の経緯から導入後の変化まで紹介していきます。
オフィス機器メーカー「リコー」の例
喫煙所を撤廃して称賛を受けたオフィス機器メーカー「リコー」は、2015年1月から喫煙所の撤廃だけではなく、終業時間中の喫煙を全面的に禁止しました。
主な目的は、「社員の健康障害防止・受動喫煙防止」。
他にも喫煙者の方が休憩時間を長くとっていると不満が非喫煙者から上がったこともきっかけとなり全面禁煙に切り替えました。
非喫煙者からは称賛され、喫煙者からも「これを機に禁煙しよう」というポジティブな声が上がっています。
社内では全面禁煙に切り替わる前から喫煙者の禁煙支援も行っており、産業医や保健師のもと禁煙が成功すれば、健康保険組合から禁煙のためにかかった費用を半額負担するという制度も導入。
むやみに全面禁煙をするのではなく、喫煙者が禁煙をするためのサポートをしていたことも上手く切り替えられた要因ではないかと考えます。
まとめ
禁煙ブームが進む中で、多くの企業が社内の喫煙ルールを整備しており、対応策を実施したことで、「職場内がきれいになった」「業務の改善・効率化につながった」などポジティブな声が上がっています。
ただ、7割近くの企業が喫煙対策を実施する中で、全面禁煙を徹底している企業はその中の2割しかありません。
社内の状況的に全面禁煙に踏み切るのは難しい部分があるかもしれませんが、社内の状況に応じてしっかりと喫煙ルールを整備することが大切です。