2017年度、有効求人倍率は1.5倍に達し、44年ぶりとなる高水準を記録しました。
圧倒的な人材不足の中、より良い人材を確保していくために今注目を集めているのが「社員登用制度」です。
今回はそんな社員登用導入のメリットや注意点、導入事例について説明したいと思います。
社員登用制度とは?
一般的に社員登用制度は、アルバイトやパートなどの雇用形態から、正社員へと雇用形態を変更することを言います。
企業側からすると正社員として雇用する前に、ある程度の実績や能力を見たうえで採用することができるため、優秀な人材を確保しやすく採用コストの削減にもつながります。
また、求職者の視点から見た場合にも、会社の雰囲気を事前にチェックしたり、比較的採用のハードルが低いアルバイトやパートから長期的に安定した就労が目指せるチャンスにもなるため、その注目度は高いです。
採用の難しいと言われている飲食業界やコールセンターなど、パート・アルバイトを雇用している企業で、社員登用の実績がある企業や実に7割を超えており、学生時代から活躍しているアルバイトの登用や、パートとして入社した優秀な人材を登用することで、事業の成長につながったというケースも良く聞きます。
社員登用制度導入のメリット
最大のメリットは前述したとおり、その仕事に習熟した人材の確保が容易になるという点があります。
すでにパート・アルバイトとして業務に取り組んでいるので、ある程度仕事を理解した人材を正社員として迎えることができます。
採用においても大きなメリットがあり、通常の中途採用の市場だけでなくアルバイト採用の市場にまで網を伸ばした採用が行えるため、母集団形成が容易になります。
また、社員登用することで、これまでアルバイト・パートだった人材のモチベーションアップにも期待ができます。
「自分の実績が認められた」「会社から必要とされている」という自信のもと、「もっと貢献しよう」「もっと認めてもらう」という思いを強く持つ方が多いため、能力があり意欲の高い人材の採用が実現可能になります。
運用における注意点
社員登用を行ううえで、もっとも注意しなければならないことは労働条件が変わるということです。
パート・アルバイトでは適用されなかった福利厚生が適用されたり、労働時間や服務規定に差が生じている場合もあります。
社員登用してから、こんなはずではなかったと言われないよう、社員登用の対象となる人材としっかりと話し合って手続きを進めていくようにしましょう。
もちろん、付帯する雇用契約書なども新たに締結する必要がありますので、そちらの準備も怠らないようにしましょう。
また、働き方改革に伴い、今後は同一労働同一賃金の流れが加速していうことが予想されます。
このことは正社員とパート・アルバイトとの待遇格差が減ることにつながりますので、より一層正社員がパート・アルバイトに比べ、どういうメリットがあるのかを明確に対象となる人材に伝えるようにすることも、今後は大切になってくることでしょう。
社員登用の活用事例
Case1.「Zoff」の場合
メガネショップを全国に展開し、1500名以上の従業員を擁するZoffの場合、年に2回社員登用を実施しています。
この社員登用には接客・視力測定・加工などのスキルを身に着けていれば誰でも挑戦することができ、この制度を通じて、店長・マネージャー・部長にまで昇格した人材を確保することに成功したそうです。
Case2.「オリエンタルランド」の場合
東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドも社員登用に積極的な会社です。
2016年4月に実施された社員登用では、800名以上を契約社員から正社員へ登用し、メディアでも話題となりました。
これに伴って増加した人件費は十数億円とも言われていますが、結果として人手不足の解消に繋がっており、大きな成果を上げています。
Case3.「京都トヨペット」の場合
トヨタ自動車の販社である「京都トヨペット」では、契約社員やパート社員から正社員へ登用する制度を設けています。
対象職種はショールーム受付・応対スタッフに限定されていますが、周囲の方々からヒアリングし、仕事ぶりなどを客観的に判断したうえで正社員登用を実施しており、女性を中心に積極的な登用が行われているようです。
Case4.「ロフト」の場合
同一労働同一賃金をベースとして、パート・正社員の区分を撤廃したロフト。
社員登用とは違うかもしれませんが、当時の従業員3296名のうち、2398名がパートタイム勤務者のほとんどが無期雇用社員として展開されました。
これに伴い職能資格制度などもあわせて導入し、社員がしっかりとキャリアを整えたり、勤務時間に応じてアシスト社員という独自の区分を用意するなど、大規模な改革が行われました。
まとめ
今後、働き方改革が進んでいけば、今以上に正社員とパート・アルバイトの格差も少なくなってきます。
その中で、より優秀で良い人材を確保していくためには、いかに働く人材の未来のことを考えれられるかが重要視されてくるでしょう。
長く安定して働ける環境を提供することができる社員登用制度。
まだ導入したことがない、登用実績がないというのであれば、ぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。