終身雇用制度が崩れ、人材の動きが流動化して久しい現在。
入社してすぐに転職してしまう社員も増加傾向にあります。
特に転職に抵抗がない20代の若手人材や、売り手市場に乗じて年収アップを考えている人材が転職してしまうと、企業としても大きな痛手です。
ここでは、そんな新入社員の離職をどのように防いでいけばよいのか、その傾向を分析しながら考察していきたいと思います。
新入社員の離職率
就職四季報の統計データによると、新規学卒者の離職率は3年で3割以上に上り、実に10人に3人が入社した会社を離れているという結果が出ています。
業界別に見てみると、宿泊業・飲食サービス業が最も高く、次いで生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業と続いています。
これら上位の業種は慢性的な人材不足に悩まされており、定着率アップを目指し、ここ10年でかなり労働環境が改善されています。
それでも、人材不足に起因する個人への負荷増大などの影響で、なかなか定着率が伸びていかないのが現状です。
また、売り手市場により、より良い環境を求めて転職することに抵抗がない求職者が増えていることも、昨今の離職率の高さの原因となっています。
新入社員が辞めてしまう原因
とはいえ、自ら選択し、念願かなって入った会社なのに、どうして早期に退職してしまうのでしょうか。
前述したような社会的な背景による部分もありますが、
「自分が思っていた仕事とは違いやりがいを感じられなかった」
「給与が少なく生活が立ち行かなかった」
「職場の環境や人間関係に馴染めない」
など、入社する前にイメージしていた仕事とのギャップに耐えられなくなり退職するということが原因のようです。
もちろん、中には前向きな理由で転職する求職者も存在していますが、それは全体の少数派です。
また、「本当にそんな理由で辞めてしまうのか」と思うような自己中心的な理由で転職をしてしまう社員もいます。
こういった退職を考えている社員には仕事の質が下がったり、勤怠が悪化するなど、なんらかの予兆が見られますので、人事担当としてそれらの状況に常に目を光らせながら、適切な対応を行っていくことが必要です。
新入社員が辞めた時に生じる損失
新入社員がすぐに退職してしまうと、経済的にも、時間的にも、周囲の社員の精神的にも大きな爪痕を残してしまいます。
経済的な面からみると、一人あたりの採用にかかったコストがすべて無駄になってしまったり、外部研修や職場環境の整備などにかけた投資もすべて無駄になります。
一説によれば、社員一人あたりの3年間の育成費用は1,500万円にも上ると言われており、その影響は計り知れません。
時間的な面では、その人材の教育かけていた時間がすべて無駄になりますし、業務の引き継ぎなどを行っていたとすれば、また他の人材へ引き継ぐための労力が必要になります。
また、精神的な面でいけば「あのときこういう風にフォローしていれば…」「教育の進め方が悪かったのでは…」と、明確ではないにせよ、誰かの責任ではないかという概念が生まれ、今後の社員のモチベーションに影響を与えたり主体性を育むことが難しくなってしまったりします。
新入社員の離職率を改善するには…
組織に対して様々な影響を与えてしまう新入社員の離職をどのように改善していけばよいでしょうか。
まず、一番初めに取り組むべきことは、退職していった社員の退職理由を分析することです。
面接時の説明とのギャップがあったのか、給与や労働環境への不満なのか、社員同士の人間関係や社風に馴染まなかったのかなど、その原因をひとつひとつまとめていくことで、解決策が見えてきます。
そのうえで、会社としてどこを改善すべきかを提案し、様々な策を講じていきます。
場合によっては、経営陣を巻き込みながら組織全体の改革を推し進めていくようなこともありますので、そうした場合に、しっかりと説得できるだけの情報・資料を用意し、「離職率の改善は会社全体の問題である」という強い思いを持って、改善に取り組んでいきましょう。
まとめ
人事担当からすれば、数多の応募者の中から厳選し選び抜いた新入社員に早々に退職されてしまうのは、会社としての損失ばかりではなく、人事としての自信喪失にもつながってきます。
離職を防ぐために、様々な改善を行っていくことはとても重要ですが、まず社員としっかり向き合い、今感じている悩みごとを相談できるような環境を作り上げていくとも大切です。
新入社員の離職に頭を抱えている人事の方は、ぜひ本項を参考に、会社として様々なことに取り組んでいってください。