出産を機に退職をする女性がどのくらいいるかご存知でしょうか。
国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、子育てをしながら仕事を続けたいと思う方も多い中、約半数の女性が離職をしています。
今回は離職が会社・社会に及ぼす影響や退職理由を紐解き、対策方法を実例も含め紹介していきます。
出産・子育て退職による影響
第一生命経済研究所の試算によると第1子及び第2子の出産を機に会社を辞める人の数は年間20万人。
その内訳は、正社員が7.9万人、パートや派遣労働者は11.6万人、自営業者などは0.5万人となり、各平均所得を掛け合わせると6360億円になります。
さらに、退職者がでると企業の生産性が落ちることも考慮すると、経済的損失は約1.2兆円。
女性の退職は、会社だけでなく、社会全体にとっても影響が大きいことが分かります。
一方、第1子出産後の育休制度を利用する人の割合は、2000年~04年が15.3%だったのに対し、2010年~14年では28.3%と倍増(各数値は2018年7月30日付 東京新聞朝刊より)。
また、国立社会保障・人口問題研究所の調査によると出産後、無職でいる女性の86%が主に収入の確保や貯蓄などの経済的な理由で「なんらかの時点では就業したい」と感じていることが分かりました(2015年度の調査結果)。
このことからも結婚・妊娠・出産・育児とライフステージが変化しても「仕事を続けたい」という女性が多いことが分かります。
出産・子育て退職が起きる理由
にもかかわらず、なぜ出産を機に退職する人が半数近くいるのでしょうか?
その理由は大きく分けて3つ。
育児休業が取得できない
法律では出産予定日の6週間前に取得できる「産前休業」。
出産日の翌日から8週間の就業を不可とする「産後休業」にくわえ、1歳に満たない子を養育する従業員は、男女を問わず取得できる「育児休業」があります(最長子が2歳になるまで延長可)。
これらは国で定められた制度にも関わらず、利用を認めていない会社も。
あるいは社内での浸透度が低く、上司に相談しにくいという問題もあり、なかなか取得できない女性が多いようです。
職場の理解が得られない
先述した休業制度以外にも「短時間勤務制度」や「子の看護休暇」「時間外労働・深夜業の制限」といった制度もあります。
しかし、周りの目線が気になり、早く帰ることで「楽でいい」と思われていないかと悩む方も多いようです。
預け先がない
保育園の慢性的な不足は、子供の有無にかかわらずご存知の方が多いでしょう。
働いている状態や育休明けのタイミングでさえも入園できない場合が多々あります。
預け先が確保できず、職場復帰したくても叶わない人が一定数いる現状がうかがえます。
出産・子育て退職の対策
制度を整える
働く女性を支援する法律は先述したものを含め多数ありますが、社内で浸透しているのは、一部の企業のみ。
前例がなくともこれを機に積極的に制度を導入・改正に踏みきってみましょう。
福利厚生の充実
オススメしたいのが福利厚生サービスのアウトソーシング化。
例えば『ベネフィット・ステーション』では、<都市部の保育園探しのお手伝いサービス><育休復帰前にイーランニング等の研修や専用コールセンターによる情報サポート><認可外保育施設利用時の割引>など、100万を超えるメニューからニーズにあったサービスを選ぶことが可能です。
社内環境の改善
まず、社内でのコミュニケーションを活性化してみましょう。
定期的な面談を設定したり、育産休を取得した先輩社員と交流の場も持たせたりといった取り組みで精神面をケア。
休暇取得前や時短勤務利用時の不安を取り除くことができます。
さらに、復帰後の急な体調不良での早退や休暇を想定し、日ごろから「業務の見える化・共有化」に務めることも重要。
担当業務の一覧表やマニュアル作り、業務に関連する連絡先をまとめることで、より業務も円滑になります。
取り組み事例
仕事・家庭の両立を支援するため、様々な取り組みを行っている企業の一例を紹介します。
子育て・介護により退職した方を再雇用する制度を導入している企業
『京都信用金庫』では、妊娠・出産・育児などを理由にやむなく退職した社員が5年以内であれば、復帰可能なキャリア・ パートナー制度を導入。
今まで築いてきたキャリア・スキルがそのまま活かせるという点で利用者にとってもメリットが大きく、2008年から2017年までに4名の実績があります。
テレワーク等多様な働き方を可能とする雇用環境を整備している企業
『積水ハウス株式会社』では、育児・介護中の従業員、通勤困難者及び育児休業者を対象に在宅勤務(テレワーク)制度を導入。
利用者には会社からPCが貸与され、週2回を目安にフルタイムを前提とした終日在宅勤務が可能です。
事前に上司と相談の上、中抜けや部分的な在宅勤務もでき、非常に柔軟性の高い制度となっています。
これにより生産性が向上するだけでなく、スキルや知識レベルが維持されスムーズな職場復帰が実現。
経営利益は5期連続で最高益を更新しています(2017年10月時点)。
まとめ
出産・子育てを経ても働ける場所を探している女性は多数います。
彼女たちがもたらす経済効果は、会社だけでなく社会全体を考えてもとても大きなもの。
今後の日本の将来も考え、「産前産後・育児休業」「時短勤務制度」といった制度を理解し、それらの制度が当たり前のように活用できるよう社内環境を整備。
そして、時短勤務、在宅など多様な働き方を可能とする雇用環境と整えることが急務です。
また、体調・精神面でも復帰した女性が「働きやすい」と思えるような会社にするため、周りの協力も重要。
まずは、できることから少しずつ取り組んでみてはいかがでしょうか?