有効求人倍率が全都道府県で1を超え、今や売り手市場とも呼ばれているその反面、企業は深刻な”人手不足”に悩まされています。
人手不足による過重労働や倒産など、ニュースなどで耳にしたことがあるはずです。
全国的に問題視されている”人手不足”について、現状の課題とその対策について解説します。
人手不足から起きる負のスパイラル
人手不足とは、会社の経営を続ける上で必要な人員が不足してしまう状況です。
この人手不足が企業にとって、深刻な問題となる理由。
それは、人員が確保できないことにより事業を続けていくことができなくなる点です。
なぜ事業を続けられなくなるのでしょうか、それは人手不足が更なる人手不足を呼ぶ負の連鎖が発生するからです。
必要な人員が不足することで、業務の負担は残った従業員に集中します。
その結果、従業員が疲弊しやすくなり、その状況が新たな離職を呼ぶことに繋がるからです。
つまり一度人手不足に陥ってしまった場合、早急に手を打っていかなければ負の連鎖はどんな企業でも発生。
更なる人手不足が加速していく恐れがあるのです。
人手不足の原因として考えられる理由
実際、人手不足の決定的な原因はあるのでしょうか。
主に言われているのは、
・少子高齢化による労働者人口(15歳~64歳)の減少
・求人倍率の高騰(雇用者数の増加)
・企業による労働環境の違い
などがあげられています。
もちろん、少子高齢化・労働人口の減少は内閣府においても、深刻な問題と認識されています。
しかし人手不足が問題とされ始めたのは、ここ最近のことではありません。
2007年に1947~49年生まれの団塊の世代の退職期を迎え、「人手不足時代」とするなど、労働者人口の減少については、早い段階で問題視されてきました。
労働力人口の減少とあわせ、求職者数が求人数を上回り、求職者が自由に求人を選べるようになりました。
そのため不人気業界・職種や中小企業は求人において不利な立場になりがちになっているのです。
確かに上記のような社会的要因は、人手不足に大きく影響しています。
しかし人手不足には”人材が定着しない”というパターンも存在します。
その一つが「企業による労働環境の違い」です。
労働時間、労働環境、賃金などといった労働条件に満足しなければ応募する人も減りますし、現在働いている従業員も不満を持てば離職する可能性が高まります。
特に人手が足りない業界
求職者数が求人数を上回った”求人倍率の高騰”により、特定の業界や企業に偏って発生しています。
その中でも次にあげる5つの業界は、特に人手不足と言われています。
(1)建設・運送業界
「仕事がハード」というイメージから若年層に避けられがち。
慢性的な人手不足や世界的イベントを控えた建設ラッシュなど、他業種とも比べても総労働時間の多さが問題視されています。
(2)サービス・宿泊業界
急激な店舗展開を行っているチェーン店などは採用が追い付いていないという状況です。
また従業員の定着率も低く、さらに人手不足が深刻化してきています。
(3)IT業界
エンジニアのようなIT技術者の労働環境にネガティブなイメージを持っている人が多いようです。
まだまだ伸びしろのある企業であり、需要の高い業界だからこそ、人材のイメージするギャップの改善が上手く進まず、人手不足が続いています。
(4)医療・福祉業界
「大変そう」というネガティブなイメージが先行している業界です。
労働条件の悪さや待遇面の改善が見られず、慢性的な人手不足に陥っています。
(5)放送業界
一見人気業界と見られがちですが、WEB配信などの新事業への関心が高まっている反面、放送業界が新たな事業分野に進出する関心を見せない傾向があり、人手の流出・採用への課題が高まっています。
いくつかの業界を抜粋しましたが、多くが労働条件や業界のネガティブなイメージが問題となっています。
人手不足解消の成功例
では人手不足における課題には、どのような策が有効なのでしょうか。
採用段階での問題点と定着率における問題点を中心に人手不足の解消例をいくつか見ていきましょう。
A社(運送業界) 「Webサイトの改修」
就職活動においてWebサイトが主流になっている点を考慮し、会社の魅力を伝える・求職活動者の目に留まるよう企業サイトの改修を行った。
<具体案>
・Webサイト上で、日々の業務内容の紹介
・社員の日々の勤務状況や働きやすさが伝わるコンテンツの掲載
・求人広告から改修したWebサイトに誘導できるよう、広告出稿先の再検討
<結果>
Webサイトからの問い合わせが増加し、企業理解度が深く、活躍してくれそうな方を選抜して採用することができるようになった。
B社(介護業界) 「有給休暇取得促進」
業務特性上、長期間の休みを取得することが難しく、ワークライフバランスが取れない、業務負荷が高いなど定着率が課題となっている。
<具体案>
・年度初めに職員全員で日程調整を行い、全員が年次有給休暇を2日必ず取得するように調整
<方法>
全員が3日間の希望を提出し、繁忙状況や全体の人員配置の状況、希望者の偏りを考慮して日程を決定した。
<結果>
休暇が取得できるということで、職員のモチベーションが向上した。
また休暇取得のために職員の中で業務効率化の動きが出き、必ず誰かが休暇を取得する状態を想定した準備やスムーズな引き継ぎを率先して行う動きが出てきた。
これを受けて職員同士のコミュニケーションの機会が増え、信頼関係が構築できた。
職場環境の改善により、定着率も向上した。
まとめ
今後の労働人口の減少における人手不足問題は、企業にとって避けることのできない課題です。
企業として早い段階でAIやロボットの導入を検討するのも一つの策と言えるでしょう。
しかし、全ての職種・業界で機械化できるとは限りません。
そのためにもまずは、今活躍している社員が「辞めたくない」と思う職場であり続けることが重要です。
そうした職場環境の整備は求職者としても魅力を感じる職場へと繋がっていくのです。