少子高齢化の影響で売り手市場が続いている現在、新卒採用に苦戦を強いられている企業も多いのではないでしょうか。
採用市場と採用コストは連動しており、売り手市場になると採用コストも高騰する傾向にあります。
そんな状況だからこそ、できる限り採用コストは抑えたいですよね。
実は、採用コストは採用活動を少し工夫するだけで削減できる可能性があるのです。
そこで今回は、新卒採用における費用の相場から採用コストの削減方法までご紹介していきたいと思います。
新卒採用とは?
新卒採用とは、就業した経験のない、学校を卒業したばかりの学生を採用することです。
日本の新卒採用は「新卒一括採用」という独自の採用手法を取っています。
そのため、在学中の学生へ一斉に求人が出されて、卒業と同時に正社員になるのが一般的です。
欧米にも新卒採用はありますが、日本と違って採用時期は決まっていません。
新卒一括採用は経団連によって採用選考に関する指針が下記のように示されています。
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広報活動:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
選考活動 : 卒業・修了年度の6月1日以降
正式な内定日は、卒業・修了年度の10月1日以降とする。
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2010年に厚生労働省が青少年雇用機会確保指針を改正し、既卒でも3年以内なら新卒として応募できるようになりました。
新卒採用のメリット
新卒と中途を比べた時、中途の方が経験豊富な人を採用しやすく、即戦力採用が可能というメリットがありますよね。
しかし、正社員の経験がない新卒だからこそのメリットもあります。
では、新卒採用にはどんなメリットがあるのか見ていきましょう。
年齢構成のバランスが良くなる
即戦力になる経験豊富な人材は年齢が高い傾向にあるため、中途採用ばかり行っていると会社の平均年齢が上がってしまいます。
経験豊富な社員が多いと経営は安定しますが、彼らが定年を迎えるとスキルの引継ぎが難しく、経営状態に影響を及ぼすこともあります。
新卒採用で若手の労働力を確保すれば、平均年齢が引き下げられるので、会社全体の年齢構成がバランス良くなり、企業が安定して成長できるようになりますよ。
企業文化の継承がしやすい
他社で就労経験のある中途社員は、以前働いていた企業の文化や風土が染みついているケースが多く、新しい企業文化に馴染みにくい傾向にあります。
新卒社員は社会人経験があまりないため、企業理念や文化を受け入れやすく、自社の企業文化を継承する担い手として育成できます。
リーダー候補となる人材の確保ができる
まっさらな状態で入社してくる新卒社員は、企業の方針を教育することで自社への愛社精神や忠誠心を育成しやすいです。
また、若い内から幹部候補としての教育ができるため、将来企業を背負って立つリーダー候補の人材確保に繋がります。
新卒採用のデメリット
新卒採用はフレッシュな若者を採用できるという面で様々なメリットがございますが、特殊な採用方法が故のデメリットもあります。
ここでは、新卒採用のデメリットを見ていきましょう。
採用までのプロセスが長い
新卒採用は同時期に一括で採用できますが、会社説明会や就活セミナーなどの大掛かりなイベントがあるため、準備に時間が掛かってしまいます。
また、新卒一括採用の活動は応募者に知ってもらうための広報から面接などの選考、内定を出してからも入社まで内定者のフォローをする必要があるため、非常に長い期間の採用活動が必要になるのです。
教育コストが掛かる
就業経験のない新卒社員は、ビジネスマナーや企業・業界についての知識がほとんどありません。
中途社員と違って基礎的な研修が必要となるため、教育コストが掛かります。
人材確保が難しい年がある
採用市場は景気によって左右されやすいため、その年ごとに採用の難易度が変わります。
その結果、予定していた採用数を確保できない年が出てくるというデメリットがあります。
新卒採用の平均コストはどのくらい?
新卒採用市場が厳しくなっている近年、新卒採用の平均コストも高騰傾向にあります。
まずは、新卒採用市場の現状について見ていきましょう。
新卒採用市場の現状
リクルートワークス研究所の「第35回ワークス大卒求人倍率調査」によると、2019年3月卒業予定の大学生・大学院生を対象とした大卒求人倍率は1.88倍と、7年連続で上昇していると発表されています。
また、300人未満の中小企業では、9.91倍という過去最高の求人倍率になっています。
求職者数よりも求人募集数の方が多い「売り手市場」であることから、一人の学生を複数の企業が取り合う図式になっているのです。
そのため、採用活動が長引いている企業が多く、採用成功のために様々な施策を講じています。
特に、知名度の低い中小企業の採用は厳しい状況にあるため、就活イベントへの参加やユニークな宣伝などを行っている企業も多く、その分採用コストも年々上がってきています。
新卒の平均コスト
「2019年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」によると、2019年新卒採用で企業が支払った平均費用の総額は全体で557.9万円(上場企業:1,783.9万円、非上場企業:375.1万円)となっています。
続いて一人当たりの平均採用コストを見ると、全体では48.0万円となっていますが、上場企業は45.6万円、非上場企業は48.4万円と中小企業の方が高くなっていることがわかります。
この結果からも、採用活動が困難な企業ほど採用コストも高くなることがわかりますね。
採用コストの内訳
1人を採用するのに約50万円もかかるなんて高すぎると思った方もいるのではないでしょうか。
では、その採用コストの内訳を見ていきましょう。
求人広告の掲載費用
求人広告費は採用に掛かる費用の大部分を占めています。
利用する求人メディアや掲載プランによっても異なりますが、掲載費は40万円~300万円程度です。
会社案内のカタログの製作費用
会社案内に欠かせないカタログの作成費用は、数万円~90万円程度です。
ページの枚数や発行部数、クオリティによって費用が変わります。
採用ホームページの製作費用
採用ホームページの製作の費用は10万円程度~数百万円程度です。
ホームページの製作を依頼するか否か、デザイン、機能などによっても異なり、1,000万円単位で投資する企業もあります。
合同企業説明会やセミナーの参画費用
新卒採用に欠かせない合同説明会やセミナーの参画費用は10万円~数十万円程度です。
開催するイベントや規模、エリア、開催元によっても費用が変わります。
新卒採用のコストを削減する方法5つ
採用担当者にとって採用コストは頭の痛い問題ですよね。
あなたの会社の採用コストは平均と比べていかがでしたか?
ここでは、新卒採用のコストを削減する方法についてご紹介します。
採用後のミスマッチを減らす
時間とお金をかけて採用しても、すぐに離職してしまっては意味がありません。
早期離職の原因として多いのが「思っていたのと違った」というミスマッチです。
ミスマッチは採用したい人物像が曖昧だったり、入社前にポジティブな面をしか伝えていないと発生しやすいです。
・採用したい人物像の明確化
・事前にポジティブな面に加えてネガティブな面も伝える
この2点に留意して採用活動を行い、ミスマッチを減らすことができるでしょう。
求める人物像の策定方法は「採用活動の土台作り!求める人物像の策定方法」でご紹介しています。
求人広告メディアの見直す
採用コストの大部分を占めている求人広告費は、採用コスト削減のキーポイントです。
自社に適したメディアに変えるだけでもコスト削減に繋がりますよ。
採用したいターゲットと利用している求人メディアの求職者層がマッチしていないと、思ったように応募者が集まりません。
求人を出したら下記の点を検証・分析して改善していくことで効果が上がり、結果的に採用コストを下げることができます。
・利用求人メディア
・出稿した時期
・応募者の特徴
・応募者数
・採用人数
上記を改善しても応募者が少ない、応募者の質が低いなどの課題がある場合は、求人広告代理店のような求人のプロに相談してアドバイスをもらうのも一つの方法ですよ。
リファラル採用を実施する
リファラル採用は、社員から人材を紹介してもらって採用する方法です。
「紹介された人が入社してから○ヶ月間後に○万円支給」など、紹介者へのインセンティブを設定する企業が多いです。
インセンティブはせいぜい数万円程度なので、新卒採用1人当たりのコストが約50万円だとすると大幅にコスト削減ができますね。
また、企業の文化や風土を分かっている社員が紹介するため、ミスマッチ防止にも繋がります。
リファラル採用に関しては「リファラル採用とは?」をご覧ください。
会社説明会を動画で実施する
会社説明会やセミナーの開催、参画には費用が掛かります。
会場費や各機器代、準備や実施のための人件費などを合わせると結構費用が膨らんでしまいます。
その点、動画での会社説明会は場所代が掛かりません。
動画製作の費用は掛かりますが一度作ってしまえば繰り返し使える上に、Web上で公開することで地方に住む学生や多忙な学生にも閲覧してもらえます。
内定者フォローで内定辞退者を減らす
内定辞退が出ると、それまでに掛けたコストが無駄になってしまいます。
1人当たりの採用コストが約50万円なので、内定辞退者が出るのは企業にとって大きな痛手ですよね。
内定辞退者を減らし、投資した金額に対するリターンを確実にすることで、コスト削減に繋がります。
初めて社会に出て働く学生は、仕事内容や職場の人間関係に不安を感じていることが多いです。
面談やランチ、職場見学、内定者懇談会で学生とのコミュニケーションの機会を作り、入社までの不安を解消してあげましょう。
内定者フォローについての詳細は「適切な内定者フォローとは?内定辞退を減らすためにできること」をご覧ください。
新卒採用に使える求人メディア4つ
新卒採用の求人サイトには、母集団の多い大手や業界特化型などそれぞれに特徴があります。
ここでは、新卒採用におすすめ求人メディアをご紹介します。
マイナビ
リクナビと並ぶ新卒採用サイトの定番で、「最も利用された就職情報サイト」NO.1です(調査委託先:楽天インサイト株式会社(2019年4月))。
全国の学校でのキャリアガイダンス実施で学生の就職活動をサポートしていることもあり、圧倒的なユーザー数を誇っています。
また、マイナビは国内最大規模の合同会社説明会を開催し、学生と企業の出会いの場も提供しています。
学生・企業双方からの信頼度が高い最大手の求人メディアです。
掲載企業数
25,994社(2019年11月現在)
掲載料金
30万円~(1週間)
リクナビ
国内最大級の新卒採用サイトで、掲載企業数は3年連続NO.1です(2018年3月1日時点 全求人を公開掲載している主要就職サイト比較)。
就職活動の際は、とりあえずリクナビに登録するという学生も多く、学生から強く支持されている就職情報サイトです。
企業と学生を結びつける多彩なサポート機能で多くの学生との出会いの場を提供しています。
掲載企業数
20,318社(2019年11月現在)
掲載料金
40万円~(通年)
あさがくナビ(朝日学情ナビ)
株式会社学情が運営する新卒採用サイトです。
登録学生の8割以上が中小企業志望のため、中堅・中小・ベンチャー企業の採用に強みがあります。
また、日本最大級の就職博とデータ連動を行っており、来場した学生の行動をデータ化しているため、積極的に就活している学生へのダイレクトスカウトが可能です。
掲載企業数
2,564社(2019年2月1日時点)
掲載料金
35万円~(12週間)
エンジニア就活
ITエンジニア特化型の新卒採用サイトです。
完全成果報酬型の求人メディアのため、採用するまで費用が発生しません。
また、アプリケーション作成経験のある学生も多数登録しているのが特徴です。
掲載企業数
不明(2018年10月時点では1000社の企業と取引実績あり)
掲載料金
完全成功報酬型
採用活動を見直して新卒採用コストを削減!
新卒採用コストの平均金額は1人当たり約50万円もかかります。
中小企業や人手不足の業界では、この平均金額よりもさらに高額になるでしょう。
採用コストを削減するには、ミスマッチ採用の防止や求人メディアの見直し、内定者フォローなどの方法があります。
今一度、自社の採用活動を見直し、削減できるコストを探してみてはいかがでしょうか。