少子高齢化などの影響により人材確保が難しくなっている近年、「優秀な学生をいかに確保するか」は、多くの企業にとって最重要課題と言っても過言ではないでしょう。
そんな中、注目を集めているのが「リクルーター制度」です。
「リクルーター制度」は新しい採用手法のため、聞き馴染みのない方も多いかと思います。
実はこの制度をうまく活用することで、今まで出会えなかった優秀な人材の確保に役立つかもしれません。
今回は、早期に就活生とコンタクトを取ることで、採用に結びつけるリクルーター制度について解説していきます。
さらに、リクルーター制度を導入する目的や企業・就活生別のメリット・デメリット、導入の手順についてもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
リクルーター制度とは?
リクルーター制度とは、採用担当かどうかにか関わらず自社の社員がリクルーターとなり、学生へ直接コンタクトを取って採用活動を行う制度のことです。
就職活動が本格的になる前に優秀な学生とコンタクトを取ることで、他社への流入を防ぐ目的で行われています。
リクルーターとは
リクルーターとは、採用担当者や人材募集をする人という意味です。
リクルーター制度においては、就活生とコンタクトを取る役割を担う社員を指します。
リクルーター制度は主に新卒採用で活用されているため、一般的に学生と年齢の近い、1~5年の若手社員が任命される傾向にあります。
企業によっても異なりますが、リクルーターには「自社のPRや優秀な学生を見極めて囲い込む」といった採用活動をサポートする役割と「学生が就職する上での不安を払拭する」という就活生の活動をサポートする役割が与えられています。
具体的には、出身校のゼミやサークルを利用したり、教授や大学から紹介してもらったりして学生とコンタクトを取り、下記のような対応をします。
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就活の悩みを聞いてアドバイスする
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自社への理解を促進させて意向を上げる
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自社の選考を突破できるようサポートする
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内定後のフォロー
リクルーター制度が注目されるようになった背景
近年、リクルーター制度を取り入れる企業が増えている背景として、経団連による「新卒採用スケジュールの変更」の影響が考えられます。
2017年卒の新卒採用以降、説明会・エントリーの広報活動解禁は12月⇒3月となり、面接の選考活動解禁は4月⇒6月へ後ろ倒しされ、経団連に加盟している大手企業は選考に掛けられる期間が短くなってしまいました。
そのため、広報活動期間でも実施可能な「面談」によって学生と対面する機会を設け、早期から採用活動を行うようになったのです。
リクルーター制度を導入する目的
リクルーター制度がどのようなものかある程度分かったところで、次は導入の目的を見ていきましょう。
質の高い採用候補者を集める
リクルーター制度導入の目的は、質の高い採用候補者を集めることです。
採用活動において母集団形成は重要な工程ですが、単に人を多く集めれば良いというわけではありません。
たとえ多くの応募者を集めても、質が低いと選考の手間が増えてしまい、ミスマッチ採用の可能性も高くなってしまいます。
その点リクルーター制度は、採用要件をしっかりと把握したリクルーターが学生とコンタクトを取るため、質の高い採用候補者を見極めることができます。
自社の魅力をより伝えやすくする
リクルーター制度には、学生に自社の魅力を伝える目的もあります。
企業説明会などの大人数を相手にするイベントとは違い、リクルーター制度は1対1で対話することができます。
相手の興味や理解度に合わせて話を進められるため、より効果的に自社の魅力を伝えやすくなるのです。
内定辞退を防ぐ
複数の選考を受けている就活生は、常に他社と比較検討しています。
リクルーターが就活の相談にのったり、サポートしたりしながら候補者との関係性を構築することで、帰属意識も高まり内定辞退を防げる可能性が高まりますよ。
リクルーター制度の導入メリット・デメリット【企業】
リクルーター制度についての理解が深まりましたね。
では、これから導入するにあたって知っておきたい企業側のメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
優秀な人材に早い時期から接触できる
優秀な人材にいち早く接触できる点がリクルーター制度最大のメリットです。
先述の通り、「面談」という形で行われるため、面接解禁前から学生とコンタクトを取ることができます。
人材の質を見極めながら候補者集めができるため、優秀な人材を確保しやすいのです。
個別にアプローチできる
リクルーターのメリットとして、個別にアプローチできる点も挙げられます。
一人ひとりと直接対話することで、学生の価値観などに沿って「社風」や「働く環境」といった自社の魅力を存分にアピールできます。
多数ではなく、「目の前のあなた」に向けたアプローチをできるため、より強い印象を残すことができるでしょう。
就活生への理解が深まる
年の近いリクルーターが就活生と面談することで、面接では見えづらい素顔や本音を引き出しやすくなります。
興味のある仕事や不安に感じている点、価値観など、就活生自身についての理解が深まるため、ミスマッチ採用の防止に繋がります。
また、就活生の生の声が聞けるため、これからの採用活動で就活生の求めているものが理解しやすくなり、企業の採用力強化にもつながりますよ。
デメリット
リクルーターの質によって結果が左右される
リクルーター制度の一番のデメリットは、リクルーターの質によって結果が左右される点です。
リクルーターが候補者の見極めや自社のアピールを直接行うため、リクルーターの能力が低い場合は思うような成果を得られないばかりか、企業のイメージダウンに繋がる可能性も考えられます。
リクルーターの質を一定に保つため、下記の認識を統一することが重要です。
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近年の学生の傾向
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自社採用要件の把握
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魅力を伝えるポイント
アプローチできる対象が限られる
一般的に、リクルーター制度はリクルーターが在籍していた大学の学生や、インターン参加者が対象となります。
また、リクルーターが1対1で面談するため、大人数へのアプローチは難しいでしょう。
リクルーター制度の導入メリット・デメリット【就活生】
企業としては就活生の気持ちに寄り添った対応が必要になります。ですので、就活生側のメリット・デメリットについても知っておきましょう。
メリット
企業理解を深めやすい
企業説明会や合同説明会のようなイベントは、多数の学生に向けた説明のため、一方的な情報提供の場になりがちです。
質疑応答の時間も十分に取れないため、自社への理解が深まらないまま終わってしまう場合も多いです。
しかし、リクルーターが一人ひとりと直接話をすることで、就活生の知りたい情報に対して的確に答えられるため、不安や疑問を解消でき、企業理解を深めやすくなります。
説明会では話さないような内情も聞ける
興味のある企業で実際に働いている社員と対話できる機会は、滅多にありません。
就活生とリクルーターは比較的年齢が近いため、説明会や選考では聞けないような一歩踏み込んだ内情を聞くことができる可能性が高いです。
企業側は効果的に裏話を伝えることができれば、就活生へ好印象を与えられるかもしれませんね。
デメリット
そもそもリクルーターの対象外になることが多い
リクルーター制度は、経団連に加盟している大手企業が導入している傾向にあります。
大手企業の社員は、比較的学歴が高い傾向にあるため、対象となる学生にもある程度の学歴が必要となります。
したがって、全ての学生に機会があるわけではない点がデメリットと言えるでしょう。
選考プロセスが不透明
選考プロセスが不透明な点も、就活生にとっては大きなデメリットです。
通常の面接と異なり、一般的にリクルーター面談で不採用通知を行うことはありません。
リクルーターとの面談が選考であるか否かも不明なため、就活生は「連絡を待てば良いのか」「他社の面接を受けて良いのか」迷ってしまいます。
就活の予定が立てづらくなるため、企業側は「選考に進んでほしい時は1週間以内に連絡する」など、分かりやすく伝えるようにしましょう。
リクルーター制度の導入手順とポイント
リクルーター制度のメリット・デメリットが分かったところで、具体的に導入したい場合の手順を見ていきましょう。
リクルーター制度の構築
まずはリクルーター制度の構築をする必要があります。リクルーター制度の構築には、「社内全体への共有」「ルール策定」「人物像の明確化」の3点が重要になります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
社内全体への共有
まずは、リクルーター制度の導入について社内全体へ共有しましょう。
人事部以外の若手社員を採用活動へ参加させると、他の社員の業務量が増えるといった懸念から反対意見が出ることもあります。
リクルーター制度の詳細や必要性を全社員に理解してもらい、経営者自らが積極的な姿勢を示すことが重要です。
人事や経営トップの協力があれば社員も納得しやすくなるため、部署の壁を越えた人選ができるようになります。
ルールの策定
面接とは違い、リクルーター面談は食事をしながら行われることも多々あります。
また、本来の勤務とは異なる曜日や時間帯に設定されることも多いため、
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面談時の飲食費の取り扱い
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休日出勤手当や業務時間外手当、代休などの待遇面
について、あらかじめ決めておきましょう。
リクルーターは、通常業務に加えて採用業務も担当することになるため、他の社員の理解と協力が必要不可欠です。
「学生としゃべるだけの楽な仕事」「特別扱いだ」などと誤解されないよう、しっかりと説明し、社内全体にルールを通知してトラブル防止に努めましょう。
人物像の明確化
採用活動において、人物像の明確化は最も重要な工程の一つです。
「どのような人材を求めているのか」の認識を統一していないと、採用要件にフィットしない人材へアプローチしてしまい、ミスマッチ採用につながってしまいます。
経営戦略や業務内容などから、部署ごとに求める人物像の明確を行いましょう。
リクルーターの選定
就活生が対象の場合、リクルーターは年の離れたベテラン社員よりも年齢の近い若手社員の方が親近感を持ちやすく交流しやすいため、1~5年目の若手社員が適しています。
リクルーターは学生のロールモデルにも成り得るため、「自分もそうなりたい」と思わせるような、勢いのある社員や実力のあるエース級の社員を選定すると良いでしょう。
また、企業によっては面談が進んだ段階で、業務内容を深く理解している中堅社員が意向上げの役割を担うケースもあります。
リクルーターに求める役割によって、適した人材を選定しましょう。
目的と方法を伝える
リクルーターを選定したら、
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どの部署に何人、どういう人を採用したいのか
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なぜ採用したいのか
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自社の魅力として伝えたいポイント
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学生に企業理解を深めてもらう重要性
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どこまで担当してもらうか(自社PR、一次面接、選考中・内定後のフォローなど)
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学生との接し方
といった、採用計画やリクルーター制度を導入した目的、活動方法を説明しましょう。
リクルーターは通常業務に加えて採用活動も行うため、組織にとっていかに重要な仕事であるかを伝えないと、「なんで自分だけこんなに働かなきゃいけないんだ」といった不満を感じやすくなってしまいます。
リクルーターの育成
学生と信頼関係を構築するには、コミュニケーションの取り方や、学生についての理解を深める必要があります。
近年の学生にどういった傾向があるのか、どういったことに興味があるのか、就職活動で不安を感じやすい点をリクルーターに知ってもらいましょう。
その上で、就活の相談に乗るなど就活生をサポートしていくことで、信頼関係が構築されていきます。
リクルーター制度の開始
リクルーターの育成後は、いよいよ活動開始です。
企業によっても活動内容は異なりますが、基本的に
面談…採用担当者との面接前に面談を行い、候補者を見極める。
説明会…説明会で自社についてアピールする。
スカウト…リクルーターの出身校から優秀な学生を探して声をかける
を行います。
活動開始後は、定期的にリクルーターを集めてミーティングを開催しましょう。
各リクルーターがこまめに情報交換することで、不測の事態が起きても対応しやすくなります。
また、候補者とのコミュニケーションをリクルーター任せにするのではなく、コミュニケーション不足に陥っていないかといった進捗状況を把握することも大切です。
学生からクレームを受けた場合や、対処に困るような事案が発生した場合は、人事部門の社員が責任者としてしっかりフォローしてください。
フォロー体制を明確にすることで、安心してリクルーターが活動できるようになります。
リクルーター制度の導入事例
では、実際にリクルーター制度を導入している企業はどのように運用しているのでしょうか。各企業の導入事例を見ていきましょう。
株式会社ビズリーチ
株式会社ビズリーチでは、内定者に対して「内定を決めた理由」や「入社後に期待する活躍」を詳しく伝えています。
通常、伝えられることのない内定理由を包み隠さず話すことで、内定者との信頼関係を構築しやすくなるのです。
また、今後のビジョンや、企業が何を求めているのかを明確に示すことで、内定者の意欲向上に繋がるため、内定辞退防止の効果が期待できます。
企業制度導入の企業例
その他にもリクルーター制度は、多くの企業で取り入れられています。
各業界の大手企業が導入していることがわかりますね。
銀行業界
・東京三菱UFJ銀行
・みずほフィナンシャルグループ
・三井住友銀行
保険業界
・東京海上日動
・第一生命
・住友生命
証券業界
・野村證券
・大和証券
通信業界
・NTTコミュニケーションズ
・NTT東日本
・NTT西日本
鉄道業界
・JR東日本
・JR西日本
メーカー
・キャノン
・トヨタ自動車
・旭化成
リクルーター制度で成果を出すには準備が重要
業界に限らず多くの企業で取り入れられているリクルーター制度は、企業が求める人材を確保するのに有効な手段の一つです。
しかし、人物像が不明確だったり、ルールの策定が曖昧だったりするとうまくいかない可能性もあるため、しっかりと内容を理解した上で入念な準備を行う必要があります。
この記事を参考に、リクルーター制度の導入を検討されてみてはいかがでしょうか。