2018年は、日本における『労働』が大きな転換点を迎える年となります。
いわゆる『2018年問題』です。
法的な改正も伴っているため、企業としても労働者としても「知らなかった」では済まされないこともあります。
知っておくべきポイントを説明する前に、まずは『2018年問題とは何か』から見ていきましょう。
2018年問題とは
2018年4月以降、「パート・アルバイトや派遣社員といった有期雇用(※1)者に対する、大量の雇い止めが起きる可能性がある」との声が上がっています。
これが2018年問題と言われるものです。
2018年問題には過去に行われた2つの法改正が関係しています。
具体的な改正内容は後ほど記載しますが、2012年には『労働契約法の改正』、2015年には『労働派遣法の改正』が行われました。
その影響を受けて「企業が負担する人的なコストが増大するのでは」との懸念がされているのです。
※1:有期雇用契約とは、雇用される期間(1年や半年など)が決まっている労働契約のこと
労働契約法の改正内容(無期雇用ルール)
労働契約法とは
労働契約に関する基本的なルールを、わかりやすい形で明らかにしたものです。
労働契約の締結や、継続・修了、有期労働契約に関することが明記されています。
改正のポイント
2012年に実施された改正により、有期雇用の契約が5年を超え、使用する事業主が同一であり、契約の更新回数が1回以上の場合に限って、【無期雇用への転換が可能】となりました。
2013年4月1日以降に有期労働契約を締結・更新した場合、5年後の2018年4月1日以降、労働者は有期雇用契約から無期雇用契約へ転換を申し入れることができるようになります。
つまり定年制を導入していない会社を除いて、定年まで契約を更新することなく雇用が継続されるようになりました。
ただし適用には【労働者による申し込みが必要】となり、申し込みがない限り有期雇用は続きます。
労働者派遣法の改正内容(期間制限の見直し)
労働者派遣法とは?
「労働者派遣法」とは、派遣労働者の就業条件(賃金・福利厚生など)の整備や、労働現場での権利を確保するために定められた法律です。
その法律が2015年に改正されました。改正のポイントは大きく2つあります。
改正のポイント
派遣先事業所単位の期間制限
派遣先である【同一の事業所に派遣できる期間が、原則3年まで】となりました。
3年を超えて派遣契約する場合は、派遣先の事業所にある過半数労働組合等の意見聴取手続きを行う必要があります。
派遣労働者個人単位の期間制限
同一の派遣労働者を、同一の組織単位(“課”など)で派遣できる期間は、3年が限度となります。
つまり意見聴取手続きを踏んだとして、【3年を超えて、同じ課で、同じ派遣労働者を受け入れてはならない】ということです。
ただし課が異なれば同じ派遣労働者をそのまま、その事業所内で受け入れることができます。
期間制限の例外
◎派遣会社に無期雇用されている派遣社員を派遣する場合
◎60歳以上の派遣社員を派遣する場合
◎期限がはっきりしている有期プロジェクトに派遣する場合
◎日数限定の業務(1カ月の勤務日数が通常の労働者の半分以下で10 日以下)に派遣する場合
◎産前産後休業、育児休業、介護休業等で休業している労働者の業務に派遣する場合
企業で準備・注意すべきこと
現状分析
◎人数:通年5年以上となる有期雇用の労働者がどれくらいいるのか・どのくらいまで増える見込みなのか
◎コスト:有期雇用の労働者を無期雇用にした場合、どのくらいのコストがかかるのか など
制度の見直し・新たな制度の確立
希望者がいた場合は正社員への登用も検討すべき事案です。
または、賃金や賞与を正社員と同一にして、新しい社員区分を作成するといったことも、検討すべきでしょう。
有期雇用の労働者が「無期雇用を希望」した場合、会社側としてどういった対応が必要なのかを、対象者に説明できるレベルまで理解している必要があります。
助成金制度の活用
政府が設けているキャリアアップ助成金という制度を活用することで、ある程度コストを減らすこともできます。
この制度は有期契約労働者をはじめとした、非正規雇用労働者のキャリアアップを目的に『正社員化コース』・『人材育成コース』など、8つのコースが用意されています。
例えば『正社員化コース』を活用すれば、有期契約労働者を正規雇用労働者に転換・直接雇用した場合に、助成金が支給されます。
まとめ
平成元年の時点では、正規雇用者を含めた全体に占める非正規雇用の割合は19.1%でした。
その割合が平成6年以後、緩やかに増加しています。
平成28年の時点では、37.5%にまで拡大している状況です。
会社を運営する上で、もはや非正規雇用者は欠かせない存在となっています。
今一度『2つの法がどう変わったのか』、『どういった対応が求められるのか』を振り返っておきましょう。
そして、具体的な対応策を今の段階からしっかり準備すべきなのは、言うまでもありません。