従業員は、空調や照明、職場の人間関係など、あらゆる環境に影響を受けながら仕事をしています。
1日の3分の1以上を過ごすこともある職場に不快な要因があれば、パフォーマンス低下や離職につながることも想像に難くありません。
そこで、今回は職場環境について詳しく解説していきます。
職場環境を整える必要性やメリットはどのようなものがあるのか、環境整備の方法や事例をご紹介しますので、ぜひご覧ください。
職場環境を整える必要性とは
職場環境は、照明の明るさや温度といった設備環境から、労働時間や評価制度、人間関係まで、あらゆるものが含まれます。
「快適な職場づくりは事業者の努力義務(健康労働安全衛生法第71条の2)」とされており、ガイドラインが公表されていることからも、職場環境の整備は重要です。
【快適職場指針】
・作業環境
適切な温度・湿度の管理や空気を清浄に保つなど、不快を感じさせない作業環境を整える
・作業方法
労働者の心身の負担を軽減するため、大きな負荷のかかる仕事は作業方法を改善する
・疲労回復支援施設
労働者が疲労・ストレスを癒せるよう、相談室や休憩室を設置・整備する
・職場生活支援施設
快適に過ごせるよう、洗面所やトイレ、給湯設備を作り、清潔にしておくこと
また、快適な職場環境づくりにあたって、「継続的かつ計画的な取り組み」「労働者の意見の反映」「個人差への配慮」「潤いへの配慮」も考慮すべき項目とされています。
参考:厚生労働省「快適職場」
従業員は長い時間を職場で過ごすため、「働きづらい」と感じる環境だと、
- ストレスによる心身の健康を害する
- モチベーションの低下
- 集中力が散漫になり、パフォーマンスが落ちる
のように、従業員のみならず企業にも悪影響を及ぼすのです。
事実、厚生労働省の調査によると、「働きやすい環境では、従業員の仕事に対する意欲や定着率が高まり、業績も高い傾向にある」ことが判明しています。
このことから、従業員の意欲や定着率が向上することで、最終的に企業の利益につながるため、職場環境を整える必要があると言えるでしょう。
参考:厚生労働省「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」
職場環境を整えることで得られる効果
では、職場環境を整えるとどのような効果を得られるのでしょう。
ストレス軽減
「暑い・寒い・うるさい」「ギスギスした雰囲気」「長時間労働が続いている」不快な環境では、誰しも多少ストレスを感じますよね。
ストレスが溜まると、不眠や頭痛、胃潰瘍、うつ病など、心身の健康を損ねるリスクが高くなります。
ストレス要因を取り除いて職場環境が整えば、従業員のストレスを大幅に軽減させられるのです。
モチベーションアップ
職場環境を整えると、従業員のモチベーションが向上します。
成果に対する正当な評価を得られなかったり、利用者が限られる内容の福利厚生であったりすると、不平や不満を募らせて従業員満足度やモチベーションが低下します。
モチベーションが低下すると、目の前にある業務を流れ作業のようにこなすようになるため、パフォーマンス低下や離職率が高まる可能性があるのです。
評価制度の見直しや従業員ニーズに適した福利厚生制度など、働きやすい環境を整えれば、従業員のモチベーションアップにつながります。
生産性の向上
けたたましい機械音や湿度が高い環境では、集中して業務に取り組みづらいため、作業効率が悪くなりがちです。
また、1900年代前半に行われたホーソン実験によると、「職場の人間関係は生産性に大きく影響する」ことが明らかになっています。
このことから、快適なオフィス環境や良好な人間関係といった、安心して仕事ができる環境は、集中力が高まるため生産性向上に期待できるのです。
働きやすい職場の特徴
職場環境を整えると、様々な効果を得られることが分かりました。
では、「働きやすい職場」には、どういった特徴があるのでしょう。
風通しがよく、自由に意見が言える
働きやすい職場の特徴として、「気兼ねなく意見を言える」を挙げる人は多いです。
言いたいことがあっても、上司や先輩に気を使って発言できなかったり、発言しても否定されたりするような環境では、ストレスを溜めてしまいます。
また、問題や悩みが発生したとき、誰にも相談できないと精神状態が悪化しますし、離職にもつながりかねません。
入社して間もない従業員でも、自由に意見が言えるような環境が整っていることは大切です。
孤立する社員がいない
職場に馴染めず孤立してしまうと、仕事で連携を図らなければならない際、上手く意思疎通できず、仕事の進行に支障が出ることもあります。
- 馴染めていない社員がいれば、率先してランチに誘う
- お互いに仕事のフォローをする
など、「自分が必要とされている」「認められている」環境が整っていることも、働きやすい職場の大原則です。
明確で公平な評価制度
人事評価は、従業員の給与に関係してくるため、モチベーションや定着率に大きな影響を与えます。
仕事の成果が給与や役職といった待遇に反映されないと、モチベーションが低下するため、仕事のパフォーマンス低下や離職の原因にもなります。
明確な評価基準は従業員の努力する方向性を指し示すことができるため、明確で公平な評価制度が整っているのも、働きやすい職場の特徴です。
多様で柔軟な働き方ができる
介護・育児との両立やダブルワーク、在宅勤務など、労働者のニーズは多様化しています。
働き方改革でも「多様で柔軟な働き方」が推進されているため、時間や場所を制限しない柔軟な働き方のできる環境は、働きやすい職場の特徴と言えるでしょう。
福利厚生が充実している
従来の画一的な福利厚生は、利用する従業員が限定的であったため、不満を感じる人も少なくありませんでした。
従業員支援の一環である福利厚生が充実していると、「従業員を大切にする企業」と感じられるため、従業員満足度が向上してモチベーションも高まります。
職場環境を整える方法
働きやすい職場の特徴をもとに、職場環境を整える方法についてみていきましょう。
風土づくり
風通しがよく、意見を言いやすい風土は、働きやすい職場環境に欠かせません。
こういった風土を作るには、
- 定期的に1on1ミーティングを設けて、意見を吸い上げる
- 昼食補助によって、従業員同士がランチする機会を創出する
- メンター制度の導入で、若手社員をフォローする
- 相談窓口や意見箱を設置する
といった、コミュニケーションを活性化させる方法が有効です。
人事評価の見直し
先述のとおり、人事評価は給与に関係してくるため、従業員にとって重要な事項です。
「どのような行動・成果が評価されるのか」努力の方向性を指し示すためにも、評価の基準を明確にしましょう。
また、上司だけでなく、同僚や部下から評価される「360度評価」を取り入れると、公平性を保つことができます。
人材育成への取り組み
従業員のキャリアを構築するには、知識やスキルを習得させるための取り組みは欠かせません。
具体的には、
- ジョブローテーション制度で、幅広い知識を身につけさせる
- マイクロラーニングなど、負担の少ない学習方法を取り入れる
- 職務や段階に合わせた座学・実務研修を行う
- 資格取得のための費用を負担する
が挙げられます。
適正な勤怠管理
労働時間や有給休暇の取得状況といった従業員の勤怠管理は、労働基準法によって使用者に義務づけられています。
適正な勤怠管理ができていないと、長時間労働や残業代未払いのリスクが高まるばかりか、罰則処分を受ける可能性もあるのです。
また、テレワークやフレックスタイム制のような、柔軟な働き方を取り入れる場合、勤怠状況を正確に把握する必要があります。
このことから、従業員ごとの勤怠状況をリアルタイムで把握できる「勤怠管理システム」の導入がおすすめです。
充実した福利厚生
福利厚生は従業員への思いやりが伝わるため、福利厚生を充実させれば定着率向上も期待できるでしょう。
「カフェテリアプラン」のように、それぞれが自分に必要なメニューを選べるような福利厚生制度の導入がおすすめです。
職場環境を整える際の注意点
働きやすい職場環境は、一朝一夕で作り出せるものではありません。
せっかく取り組んでも、中途半端な状態になってしまうと、不誠実な印象や不信感を与える恐れがあります。
継続的に取り組んでいくためには、担当者決めとマニュアルを整備することから始めてください。
「施策を講じたら効果・分析し、それをもとにまた実施する」というPDCAを回すことで、徐々に改善していきます。
また、現場で働いている従業員でないと分からないこともあるため、「社内アンケート」や「意見箱」で生の声を拾いましょう。
従業員の意見を募る際は、誰の意見か分からないよう匿名性にすると、本音が出てきやすいです。
職場環境を整えた実際の事例
実際に、様々な取り組みで職場環境の改善に成功した例をいくつか紹介します。
フロアの仕切りを外し、フリーアドレスを導入
部門ごとにフロアが分かれていたため、円滑なコミュニケーションが図れず、業務効率の低下に課題を感じていました。
社員のコミュニケーション促進と連携強化のため、これまで部門ごとに分散していたフロアを一か所にまとめ、フリーアドレスにしたところ、社員同士の連携を深めることに成功しました。
社外からの煩雑な郵便物を効率的に整理
大量の郵便物を手動で振り分け、各課に届けていましたが、取り違いが頻発しました。
自体を改善するべく、事務所入り口に部署ごとの郵便棚を設置したところ、取り違いや郵便物の見落としも減少し、業務効率がアップしました。
惣菜の福利厚生サービスを活用し、食の悩みを解決
事務所が郊外にあるため、周囲にお店が少なくランチの選択肢が限られています。
さらに、夜間になると周囲のお店も閉まってしまい、毎回車を出さないと食事できないという課題がありました。
オフィスへ惣菜を届ける福利厚生サービスを導入し、食事の選択肢を広げることで、社員のニーズに応えることができました。
テレワークの導入で女性社員が活躍
育児や介護で退職せざるを得ない女性社員がいたため、在宅勤務を取り入れたところ、離職者を減らすことに成功しました。
また、就業規則にテレワークを盛り込むことで、全社員がテレワークを実践するようになったため、オフィス縮小化による固定費や採用コストの削減が実現しました。
従業員が活躍できる職場環境を整えよう
職場環境の整備は、従業員のストレス軽減やモチベーションアップにつながるだけでなく、生産性向上も期待できます。
企業と従業員双方にとって多くのメリットがあるため、ご紹介した方法を参考に働きやすい職場づくりに着手してみてはいかがでしょうか。