せっかく人材を採用したのに、十分な力を発揮する前に仕事を辞めてしまった。

 

新入社員の定着率が低くて困っているという人事担当の方は少なくないのではないでしょうか。

 

今や新卒の3割~6割が、入社後3年で離職しているという時代。

 

さらに中途入社の社員に至っても、売り手市場の機運にのって転職していくケースは多く、企業にとって社員の定着率アップは大きな課題となっています。

 

退職していく理由は色々ありますが、入社後の受け入れから社員が現場に馴染むまで、しっかりと対策を打つことが出来れば、定着率が上がることは間違いありません。

 

ここでは、入社後すぐに即戦力化させていくプロセス「オンボーディング」について紹介します。

 

オンボーディングとは

英語の「on board=乗船する」という言葉から派生して生まれた造語で、新入社員を新しく迎えたときに「内定から入社後までの一連の流れ、定着プロセス」全体を示す言葉です。

 

新入社に最大のパフォーマンスを発揮してもらうためには、単純な業務知識だけではなく、社内の独特のルールであったり部署間の関わり方、所属メンバーやチーム、会社としての価値観など、様々なことを伝えていく必要があります。

 

これらを構造的に伝えていく仕組みを作り、新しく迎えた社員が存分に力を発揮できる環境を構築していくことで、社員の早期離職や早期活躍を促進することができます。

 

恐らく、日本のほとんどの企業でなんらかのオンボーディングに該当する教育が行われてますが、業務に集中した内容であったり、現場任せにしてしまっていたり、十分な効果が得られていないケースも多々あります。

 

新入社員が組織に馴染めるよう、組織全体で小さなつまずきを取り除いてくよう、継続的にフォローを行っていくことで、社員の離職を防ぐだけでなく早期活躍に繋がります。

 

オンボーディングのメリット

効果的なオンボーディングがもたらすメリットは、社員の成長や定着率アップだけでなく、会社全体の士気向上・業績アップに直結します。

 

ここでは、そんなオンボーディングがもたらすメリットをいくつか紹介します。

 

新入社員の早期活躍の実現

業務に必要なスキルのみならず、社内の独自ルールや部署間の事業内容など、オンボーディングを通じて「自身が働く姿」や「仕事の目的」を共有していくことで、社員の早期戦力化を実現することが可能です。

 

帰属意識の向上

職場内での人間関係は、退職理由の上位にあげられるほど深刻な問題です。

 

メンター制度や上司、経営陣との1on1面談などを取り入れ、メンバーや会社への理解を深め、「この会社に貢献したい」「活躍したい」という想いを育むことができます。

 

採用コストの削減

採用した人材が早期離職を繰り返していては、常に採用を実施しなければならず、通年として採用コストが増大します。

採用した社員をしっかりと育てていくことで、結果的にコスト削減に繋がります。

 

組織の士気向上

オンボーディングは一時的だったり、誰かに任せきりな教育ではありません。

成果を上げるためには会社全体として取り組むことが必須なため、自然と組織力が向上します。

 

オンボーディングの進め方

では、実際にオンボーディングを進めていくためには何を行えばよいのでしょうか。

 

ここでは簡単に、オンボーディング・プログラムを構築するための流れについてご説明します。

 

STEP1:課題の明確化

まず、現状の社員教育に対する課題を明確化していきます。

 

例えば入社後の離職率が高いのであれば、どこでミスマッチが起きているのかを区分し、入社後のアプローチで解決できるポイントを明確に絞り込んでいきます。

 

STEP2:オンボーディング・プログラムの作成

明確化した課題に対して、具体的な進め方を企画します。

 

ここでポイントとなるのは、実施内容を企画にするだけでなく、スケジュールやゴールまでしっかりとプランに組み込んでいくことです。

 

そうすることで、そのプランの効果を検証することができるため、後々の改善に役立てることができます。

 

STEP3:実行

プランが完成したら、現場と協力しながらオンボーディングを進めていきます。

 

新しい取り組みになりますので、実務に携わる社員が完璧にこなせるものではありません。

 

人事担当も積極的にオンボーディングに参加し、現場のフィードバックを受けながら、しっかりとフォローしていきましょう。

 

STEP4:検証

オンボーディングは、常に見直しと改善を繰り返していくことで、より効果的な内容へ変えていくことが重要です。

 

入社した本人からアンケートを取ったり、現場の意見を参考にしながら、再度課題を明確化しプランを修正していきましょう。

 

導入事例

オンボーディングで効果があった事例をいくつかご紹介します。

 

現場の上司に加え、役割ごとにメンターをつける

日本オラクル株式会社では、勤怠管理や経費精算といった、上司に聞く必要ない質問の対応を「ナビゲーター」という立場の先輩が担っています。

 

また、サクセスマネージャーという立場の社員が週1回でミーティングを実施し、日々の業務のアドバイスなどを行っています。

 

このように、複数人のメンターで役割を切り分けることで、新入社員の質問しやすい雰囲気を作り出すだけでなく、メンター側の負担の軽減にも成功しました。

 

悩みごとを気軽に相談できる場所を創る

社内制度の利用の仕方や、備品の管理場所など、現場にきいても解決しないような問題をなんでも気軽に聞ける受付窓口を作り、効果を発揮しているのがLINE株式会社です。

 

「PCの調子が悪い」といった質問から「こんなことがやりたい」といった要望まで、オンラインや専門の窓口を通じてすぐに相談できるため、多くの社員がこの制度を活用しています。

 

横の繋がりを強化し、組織の「求める人材」への理解を深める

仕事を進めていくうえで、企業のミッションや理念の理解が重要であるという考えのもと、株式会社メルペイでは横のつながりを重視するために、チャットツールや会社補助の食事会などを実施しています。

 

他部署にまたがって実施することで、それぞれの考え方・価値観への理解を深めることができ、早期活躍を実現しています。

 

目標を明確化させ、モチベーションをアップする

GMOペパポ株式会社では、新入社員が入社3か月後のゴールとアクションプランをシートに書いて、意思表明させる仕組みを作っています。

 

このゴールやプランは、会社が与えるのではなく社員自身が決めており、目標を自ら設定し実施することで社員の成長を促しています。

 

社員の定着率向上にオンボーディングを役立てよう!

売り手市場と言われる現在の採用シーンにおいて、社員の定着に焦点を当てたオンボーディング・プログラムは、今後さらうに主流となっていくことが予想されます。

適切なプログラムを早期に実現することが出来れば、優秀な人材の確保に繋がるだけでなく、会社としてより大きな成長を実現できる可能性も秘めています。

 

これを機に、今一度自社の採用フローや教育の進め方を見直してみてはいかがでしょうか。

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