2025年問題、2030年問題についてご存じですか。
2019年現在、日本の後期高齢者はおよそ1,500万人といわれていますが、2025年には約2,200万人に上るといわれています。
2030年には少子高齢化がさらに進み、人口の約3分の1が高齢者になると言われています。
高齢化が確実に進む中、労働人口の減少に伴って人材不足に悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。
労働人口の減少は、今後はさらに深刻化していくと考えられるため、今のうちにしっかりと対策をしておくことが必要です。
今回は、2025年問題、2030年問題の内容からその対策までをご紹介していきます。
2025年問題・2030年問題とは?超高齢社会が引き起こす人材不足
2025年問題とは、西暦2025年以降、※団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となることで起こる労働力問題や医療問題の総称です。
※団塊の世代・・第一次ベビーブームが起きた昭和22~24年生まれの人たち
団塊の世代の人数は、およそ800万人にのぼるとされており、現在の後期高齢者と合わせると、2025年には約2,200万人になることが予想されています。
これにより、まず懸念されるのが労働人口の減少です。
日本では、基本的に若い世代の労働力が高齢者の生活を支える形となっているため、労働力が減少してしまうと、若い世代が高齢者を支え切れません。
代表的な問題としては、医療があります。
高齢者が増えることで介護や医療に対するニーズは増えますが、供給する側の病院や医師の数が足りなくなり、高齢者に医療が提供できない状況となるのです。
2030年問題とは、人口の減少が進み、超高齢社会で引き起こされる社会保障問題や日本経済の鈍化などを表した総称です。
日本人口の3分の1が65歳以上の高齢者という状況は、稼ぎ手となる労働者が足りなくなるということであり、必要な社会保障費は膨大なのに、それを捻出できなくなるということです。
また、労働人口不足は日本経済の鈍化(GDP 国内総生産の低下)へつながるといわれています。
GDPとは「一定期間内に国内における生産活動によって生み出された付加価値の合計金額」のことで、一言でいえば日本が儲けたお金のことです。
生産活動を行う15~64歳の労働人口(生産年齢人口)が不足するわけですから、GDPは低下してしまうのではないかと懸念されています。
そして、生産年齢人口に該当する層(15~64歳)は、貴重な労働力であると同時に消費の中心的な担い手でもあります。
つまり、労働人口が減少することがそのまま消費の先細りにつながる可能性があり、日本経済の鈍化に拍車がかかることが想定されるのです。
ちなみに、IT業界における2025年問題というものもありますが、これは昭和元年(1925年)からちょうど100年目で訪れる、コンピュータートラブルのことです。
観光庁や金融機関が古くから使用しているシステムは、年数を昭和2桁で処理しているものが多く、昭和100年が「00」年と認識され、誤作動を起こしてしまうと懸念されています。
人材不足で特に被害の大きい業界とは?
2025年問題、2030年問題で懸念される人材不足は国の最重要課題の一つです。
2030年には、およそ644万人の人材が不足すると予想されており、以下の業界は早期の対策が急務となっています。
医療・介護業界
少子高齢化で労働人口が減る中、医療や介護を必要とする高齢者は増える一方となるため、医療・介護業界では人材や施設が足りなくなると考えられています。
人材不足の問題を解決できないまま高齢者が増え続けてしまうと、希望する治療や介護が受けられないという人も出てくることでしょう。
医療・介護業界の人材不足に対して政府は、以下の3点を課題の主軸として打ち出し、対策・実践に向けて動き出しています。
-
少子化対策
-
医療、介護制度の見直し
-
人手不足の解決
政府の活動と並行して医療・介護業界では病院側が患者のニーズを深く理解し、診療の効率化を図る必要があります。
予め高齢者に多い疾患を調査して治療についての想定と対策をしておき、スムーズに診療を進めることでより多くの患者に対応することができるのではないでしょうか。
サービス・流通業界
インターネットの普及により、人々のライフスタイルがデジタル化したことで、大きな影響を受けているのがサービス・流通業界です。
例えば、商品を顧客に届ける運輸・郵便業などが挙げられます。
今ではインターネットを利用した通販サイトやネットオークション、フリマアプリなどで簡単にモノを買うことができ、運輸・郵便業の商品取り扱い個数は2007~2016年にかけて25%もの伸びをみせています。
しかし、運輸・郵便業の就業者数は変わることなく、ほぼ横ばいの状態です。
現在も人材不足が続いている状態で、今後は従来のサービスレベルを維持しきれないのではないかといわれています。
人材不足の対策としては、外国人労働者や高齢者、女性といった多種多様な人材の受け入れなどが挙げられています。
建設業界
建設業界も深刻な人手不足に陥っており、工事現場で稼働する作業員とマネジメントする立場の技術者がどちらも足りていない状態です。
その原因としては、リーマンショックにより建設需要が激減した影響で、建設業界から多くの人材が離れてしまったことが挙げられます。
また、若年層が3K(きつい、汚い、危険)のイメージを持っていることや福利厚生が徹底されていない現状により、新たな人材の確保が難しくなっていることも原因の一つです。
きたる東京オリンピックなどの特需により、一時的に活気を取り戻してはいるものの、ビルやマンションの建設といった一般的な建設需要にはまったく人が足りていません。
現在建設業界では、入職者を増やすため、「技能体験研修」や「見学会」といったイベントを積極的に開催し、雇用促進を図っています。
また、日本建設連合会では、「優良技能者手当」を設定し、優良な技能者の年収を600万円にする目標に取り組むなど、長時間労働や低い給与水準といった待遇面の改善も進められています。
人材不足を解決する手段4選
多様な働き方を受け入れる
現代の日本では、人々のライフスタイルが非常に多様化しています。それに比例するように、働き方も多くの選択肢を持つようになりました。
これからは、従業員の定着率を高めるため、そして新たな人材を獲得するためにも、テレワークやフレックスタイム、時短制度など、従業員がライフスタイルに合わせて働き方を選べる環境が必要とされます。
また、労働人口の減少に伴って、高齢者や外国人の雇用も積極的に受け入れるなど、企業の柔軟な対応も求められるでしょう。
生産性を上げて労働需要を減らす
いかに政府や企業が尽力しようとも、残念ながら人材不足は進んでいくでしょう。
となれば、少ない人員でも対応ができるよう、生産性を上げて労働需要を減らすということも考えなくてはなりません。
例えば、業務の効率化を目的としたITの活用などは、その代表例です。
財務や会計などのバックオフィス業務は、会計ソフトやクラウド会計サービスを導入することで効率化がはかれます。
徐々にAIやRPA(ロボットによる業務自動化)を活用した業務自動化への移行も検討が必要となるでしょう。
女性の採用を増やす
人材不足を解消する手段のひとつに、”採用ターゲットの拡大”が挙げられます。
その際、真っ先に候補として挙がるのが女性の採用です。
特に、”子育て”や”育児”、”出産”などの事情で働けないと考えている25~49歳の女性をいかに採用できるかがポイントになります。
そのためには、”女性が働きやすい職場環境”を用意することが大切です。
例えば、子育てや育児で忙しい女性は、”柔軟な働き方”ができる職場を求めています。
先述した多様な働き方を受け入れることに繋がりますが、自分で働く時間帯を決められるフレックスタイムや、勤務時間を短く設定する時短制度を設けることにより、家庭との両立を求めている主婦層を採用しやすくなります。
また、産休・育休制度の設定やビジネススキル研修、職場実習などの充実により、職場復帰しやすい環境を作ることで、女性の採用率向上や離職率減少にもつながるでしょう。
シニア世代の採用を増やす
女性の採用と同じくらい注目を集めているのが、シニア世代の採用です。
シニア世代を貴重な労働力とする流れは徐々に浸透しつつあり、一部の企業ではすでに定年退職年齢を引き上げる動きもあります。
さらに、シニア世代の人々も65歳以降の就業を希望するケースが増えているのです。
経済的な事情だけでなく、暮らしに対する充実感などを求めて定年以降も働きたいと考える人が多いようです。
これから急ぎで人材不足を解消したいと考える企業には、就業意欲の高いシニア層へのアプローチが効果的かもしれません。
【おまけ】社会保障と年金制度にも大きな課題が
2025年問題、2030年問題で最も大きな課題は、”労働者不足”の深刻化です。
後期高齢者の割合が増えることで、特に医療・介護に関わる人材不足が深刻化するだろうということはすでに述べました。
しかし、この他にも高齢化に基づく問題がいくつかあります。
ひとつは、社会保障問題です。後期高齢者の割合が増えることで病院の利用が多くなります。
ここで発生する医療費は、社会保障があることによって個人の負担額を軽減していますが、この社会保障費を負担しているのは若い労働者です。
労働者が不足している状況で医療費が増加すると、一人ひとりの社会保障費の負担が増加してしまうのです。
もうひとつは、年金制度です。年金制度も同じで、若い労働者が高齢者の年金を負担しているため、労働者不足によって年金支給額が減ったり、支給開始年齢が引き上げられたりと、年金制度自体の見直しも考えなくてはいけなくなるかもしれません。
医療・介護関係の人材確保が急務であることは間違いありませんが、そもそもの労働者不足により、国として高齢者の医療費や年金を負担できないかもしれないという問題を抱えているのです。
2025年問題・2030年問題への対策は必須です!
2025年、2030年に近づくにつれ、人材不足は深刻化していくと予測されています。
まずは、それぞれの企業が人材不足についてしっかりと認識し、課題解決に向けて動き出すことが重要です。
本記事で紹介した、”多様な働き方の受け入れ”、”業務の効率化を目的としたITの活用”、”雇用拡大”などの人材不足対策は、すでに多くの企業で取り組まれています。
人口減に伴う人材不足の流れを止めることは難しいですが、それでも次の世代へ明るい社会を残すため、企業単位で対策できることから始めていきましょう。