同じ条件で離職率の高い企業と低い企業があったとき、どちらが選ばれるでしょう。
おそらく、ほとんどの人は“離職率の低い企業”を選ぶのではないでしょうか。
離職率が高いと、慢性的な人手不足や生産性の低下など、良いことがありませんよね。
今回は、離職率の平均と離職原因、離職率を下げるための4つの方法をご紹介します。
離職率の平均は?
自社の離職率を知っていますか?
自分の会社の離職率って意外と知りませんよね。
厚生労働省によると、新規大卒就職者の3年以内の離職は、31.8%が平均(平成27年3月卒業者)と発表されています。
これから離職率について解説しますので、自社の離職率が分からないという場合は、下記の方法を参考にしてみてください。
そもそも離職率は、ある時点で在籍していた従業員の数のうち、一定期間後に退職した人の割合を言います。
離職率の計算方法は、法律などで定義されたものではないので、公的機関や企業によっても定義は異なりますが、一般的には下記の方法が使われています。
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1年間の離職率=起算日から1年間の離職者数÷起算日の在籍者数×100
例)在籍人数200名の企業で、起算日までに20名が退職し、在籍者数が180名になった場合(新規採用者除く)
15÷185=11%
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一方、3年後の離職率の計算方法は、下記の通りです。
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3年後の離職=起算日に入社した社員の内、3年間の離職者数÷起算日に入社した社員数×100
例)新卒入社の社員が20名、3年間の離職者数8名だった場合
8÷20=40%
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先述した通り、厚生労働省が発表している新規大卒就職者の3年以内の離職率は、毎年大体3割程度で推移しています。
業界によっても離職率の平均値は異なるため、絶対的な数値ではありませんが、離職率の平均は3割が目安と考えていいでしょう。
離職率の高い業界、低い業界
業界による離職率の違いを見ていきましょう。
下記は、大卒者の就職後3年以内の離職率を産業別ランキングです。
離職率の高い業界TOP5
1位 |
宿泊業・飲食サービス業 |
50.2% |
2位 |
生活関連サービス業・娯楽業 |
46.3% |
3位 |
教育・学習支援 |
45.4% |
4位 |
小売業 |
38.6% |
5位 |
医療・福祉 |
37.6% |
参考:厚生労働省「新規大卒就職者の産業分類別(大分類※1)就職後3年以内※2の離職率の推移」
離職率の高い業界を見てみると、どの業界も一般の消費者を相手にする仕事であることが分かりますね。
接客が多くなるため変則的な勤務体制となり、長時間労働で休みが少なく、比較的給料が低い傾向にあります。
特に、女性の占める割合が高い看護師は、過酷な労働環境であるケースが多く、出産・育児などのライフイベントによって、止むを得ず退職する人も少なくありません。
離職率の低い業界 TOP5
1位 |
電気・ガス・熱供給・水道業 |
9.7% |
2位 |
鉱業・採石業・砂利採取業 |
11.9% |
3位 |
製造業 |
20.0% |
4位 |
金融・保険業 |
21.8% |
5位 |
複合サービス事業(郵便局や共済事業など) |
24.5% |
一方こちらは、基本的に規則的な休みがあり、お盆や正月などの長期休暇も取りやすい業界です。
また、どの業界も比較的給料が高めで、教育制度も充実している傾向にあることから、仕事はきつくても働きやすい環境が整っていることが分かります。
日本の平均年収は約420万円程度ですが、「金融・保険業」の平均年収は約620万円程度と高水準です。
離職率が上がってしまう原因とは
離職率の上がる原因を知るには、まず、社員が退職しようと考えるきっかけを把握する必要があります。
ミスマッチ
早期離職理由で最も多いのが、「思っていたのと違った」という入社後のミスマッチです。
求人広告などへの掲載内容や採用面接時の説明と、実情とのギャップが大きいほど、ミスマッチによる離職が多くなります。
給与が低い
離職率の高い業界にも共通する特徴ですが、給与が低い場合、離職の原因になりやすいです。
生活の基盤を支える給与は重要ですから、「収入をアップしたい」と転職活動をする人が多いのも納得ですよね。
ハードな労働環境
深刻な人手不足で転職のハードルが低くなっている近年、労働環境の劣悪な企業は離職率が高めです。
長時間労働や残業、休みを取りづらいなど、ハードな労働環境が常態化していると、退職を考えるきっかけとなります。
また、こういった労働環境は、離職する人が多いため、残っている社員への負担が大きく、さらに離職者が出るという負のループに陥りやすいのも特徴です。
社内コミュニケーションの不足
退職理由の原因として「職場の人間関係が良くないこと」を挙げる人が多いです。
コミュニケーションが不足していると、「自分の居場所がない」と感じ、人間関係にストレスを感じやすくなります。
帰属意識も生まれないため、社内コミュニケーションの不足している企業は、離職しやすい環境と言えるでしょう。
離職率を下げるためにできる4つの方法
退職を考えるきっかけが分かったら、対策を講じて離職率を下げましょう。
入社前に相互理解を深める
入社後ミスマッチによる退職の原因は、相互理解の不足です。
企業側は、社風や仕事内容を脚色せず、良い面や仕事の大変な面も事前に必ず伝えて、候補者に理解してもらえるよう努めましょう。
また、求める人物像を明確にしておくことも、ミスマッチ採用を防止するには有効です。
求める人物像の策定方法は「採用活動の土台作り!求める人物像の策定方法」をご覧ください。
給与面の工夫
給与は簡単に改善できるものではありませんが、「労働に見合った給与を得られていない」ことに不満を感じているケースが多いです。
給与をアップできない場合、ピアボーナス制度を利用するなど、工夫してみてはいかがでしょうか。
『第三の給与』とも言われているピアボーナス制度は、仕事を手伝ってもらったときに、同僚へ感謝の気持ちと報酬を送るというものです。
自身の仕事ぶりに対する評価が給与面に反映されるため、モチベーションアップにつながります。
ピアボーナスの詳細な内容は「第三の給与と呼ばれる「ピアボーナス」とは?」にてご紹介しています。
労働環境を整える
働き方改革の推進により、今後ますますテレワークなどのライフ・ワーク・バランスが取りやすい働き方、多様な労働者のニーズに対応できる環境が普及していくと考えられます。
サイボウズでは、「100人いたら100通りの人事制度があって良い」という方針のもと、従業員自身が人事制度を考えて作り、働きやすい労働環境が整ったことで、28%だった離職率が4%へ激減しています。
サイボウズ株式会社:https://cybozu.co.jp/
労働環境が整っていない企業は、離職のみならず、求職者から敬遠されることになるでしょう。
今後を見据えて、労働環境の整備が必要と言えますね。
コミュニケーションを活発化させる
コミュニケーション不足の解消として、新人社員に年の近い先輩社員が相談役としてサポートするメンター制度を導入する企業が増えています。
業務だけでなく、何でも相談できる先輩社員がいることは、精神的な安心感を得られ、離職抑止につながります。
メンター制度については、「若手社員の早期退職を防ぐ?今話題のメンター制度」をご覧ください。
まとめ
離職率を下げる4つの方法についてご紹介してきました。
「企業は人なり」と言われるほど、企業にとって人材は大切です。
人材が定着しないと、生産性の低下や、モチベーションの低下、人員補充目的の採用コストがかかるなど、企業にとってのメリットはありません。
また、離職率の高い企業は、求職者から警戒されてしまうため、採用活動が難航する可能性も考えられます。
離職率を下げる方法を参考に、できることから改善してみてはいかがでしょうか。